第3話
昭和8年5月 海軍省 会議室
ここでは海軍省庁舎を陸軍省庁舎がある市ヶ谷に移動させ、庁舎跡地には陸軍の統合参謀本部と海軍の軍令部と連合艦隊司令部を一つにまとめた大日本帝国総合参謀本部が建設される予定なのだが、予算の問題などから難航しているのが実態であった。
「…やはり市ヶ谷に移動させた方がいいのか。」
「ええ、国防上重要な省庁は一か所にまとめるべきです。これは国防だけでなく、陸海軍の連携の問題も解決します。跡地には総合参謀本部と軍令部、連合艦隊司令部を置くべきでしょう。通信設備に関する問題もありません。もし軍令部と統合参謀本部を移動できないのであれば、連合艦隊司令部だけでも移動させるべきです。現在の連合艦隊司令部は《長門》にありますが、いずれ通信設備の問題で陸上への移転が必要になるでしょう。何より、貴重な戦力をわざわざ潰すのは得策ではありません。」
「だが、予算と時間の問題がある。そこを解決しない限りどうにもならん。」
「では大臣、こうしませんか?私は近々欧州へ向かいます。そこで、過去に輸入され現在国内で活躍している建設機械のライセンス生産権を国内メーカーに取得させましょう。しばらくは国内建設機械の育成に努め、育成の成果が出たところで設計要求を出せばよい。その後、その機械を使って海軍省を市ヶ谷に建設し、跡地には総合参謀本部と連合艦隊司令部を建設します。」
「それには大体どれぐらいかかる?」
「最短で3年程度、最長で5年はかかります。」
「なるほど、これで時間の問題はひとまず解決できるとしよう。
だが、一番の問題は予算だ。その点についてはどうする?」
「予算については問題ないかと。特別補正予算がつくはずです」
「なぜそう言い切れる?」
「政府からすれば、莫大な費用がかかり経済効果が限定的な軍艦建造よりも、経済効果がより高い建造物建築の方が歓迎されるに決まっています」
「なるほど、分かった。とりあえず君は欧州出張、頑張りたまえ。この出張が我が国に良い風を吹かせるきっかけとなることを祈っているよ」
この会話の一か月後、私は欧州へ向かった。
* * *
昭和8年12月 ドイツ
ドイツに到着した我々欧州視察団は、まずクルップ社に向かい、かの有名な8.8cm高射砲(Flak 18)を見学した。同時に6門を試験的に導入するべく交渉を行い、クルップ社の好意で最終的に6門の購入金額で6門の輸入とライセンス生産契約を結ぶことになった。(私的には、これは「サービスしてやるから英仏の説得はよろしくね」というクルップ社を含めたドイツ勢からのメッセージだと思っている)。
次にMAN社に向かい、燃料直噴ディーゼルエンジンのライセンス生産契約と、そのエンジン製造機器の輸入契約、さらにトラックのライセンス生産契約を結んだ。
マイバッハ社、ダイムラーベンツ社では、ガソリンエンジンの輸入契約と自動車の輸入契約、および日本でのノックダウン生産、ライセンス生産、日本法人による製造契約を結んだ。
ラインメタル社では、タイプライターをはじめとした各種民生品の大量購入契約を結ぶことに成功した。
最後に建造中の装甲艦「アドミラル・グラーフ・シュペー」を見学し、使用されている電気溶接の技術や電気溶接に対応した鋼材の生産方法とライセンス生産契約、「アドミラル・グラーフ・シュペー」の図面を含めた様々な技術導入契約を結ぶことに成功した。
なお、これらの技術輸出の対価として、開発が完了したばかりの九三式魚雷の技術を設計図を含めて丸ごと渡すことになった。
残念ながら主目的でもあったテレフンケン社には訪問できず、第2回欧州視察団の目的の一つに組み込まれることになった。
これらのライセンス契約を結んだものや購入したものは、一部はすでに国産化に成功していたものの、品質がオリジナルに劣っていたため、ライセンス契約をはじめとした各種契約を再度結び、採算性や生産性を度外視してオリジナルと全く同じ性能を持つものを製造することとした。
このため各社は昭和10年まで赤字が続くことになるが、政府が失業者に対して支援を行ったため、自殺者などは最低限に抑えられている。
(工業基盤の育成として、基礎工業力の向上も大事だよな……。史実だとベアリングの中のボールの真球度がどうのって聞いたことあるし。
よし!本土に電文を打って、基礎工業力を少しでも上げてもらおう)。
* * *
昭和8年12月某日 大日本帝国 海軍省
「失礼します。欧州に派遣中の視察団から連絡が来ました」
「内容は?」
「えー、『ドイツ企業の各社とライセンス契約や輸入契約、技術契約を結ぶことに成功。同時に国内産業育成のため、現在の各種製品の製品基準を従来の10倍に上げ、国内基礎産業の育成を求める。またドイツで購入した各種製品を輸送するための貨物船が必要であるため派遣を求める』とのことです」
「分かった。貨物船を派遣しよう。だが、一番の問題は製品の合格基準の厳格化だ。現在比10倍とは……。これは我々軍だけで解決するような問題ではないな。政府が国を挙げて行う必要がある。官邸に車を回してくれ、総理には私が責任をもって説明する。あと陸軍さんにも連絡をしてくれ」
「了解いたしました」
その後、政府が新たな製品基準を打ち立て、これにより各種製品の合格ラインの改訂が行われた。これに対してメーカー各社が連名で抗議を行ったものの、政府と軍部は「基礎工業力の育成は国力の増大につながることだ。文句を言うな。これは陛下も賛同なさっていることである」と一蹴した。このことは多くの企業から反感を買うことになる。しかし、これにより日本の基礎工業力は史実より向上することとなる。
(陛下が賛成しているというのは事実である。海軍大臣である大角岑生は内閣総理大臣である岡田啓介を説得後、陸軍大臣である川島義之とともに宮城に向かい、陛下に対して「現在欧州視察中の視察団の目的と、その使節団からの連絡で国内基礎工業力の大規模なテコ入れを行うので、反対企業を説得するために陛下のお力添えを願えないか?」と説得を開始。陛下は話を聞いているうちに、これは国のためになると判断され、賛同の意を示された。
なお、この時に発案者である岩井の名前は陛下に伝わっているため、のちに岩井は陛下に呼び出されることになる)。
* * *
昭和9年6月 アメリカ
岩井達使節団一行は、アメリカの五大湖周辺に存在する工業地帯にいた。工業地帯で石油精製や製鉄所を見学し、日本製鉄がUSスチールと、日本鋼管がベスレヘムスチールと新型製鉄炉の輸入契約を締結した。
石油関連の分野では、出光興産がスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーと、日本石油がスタンダード・オイル・オブ・カリフォルニアと石油精製の技術輸入契約を締結した。
その後、視察団はフォード社やゼネラル・モーターズの工場に向かい、工場を見学しライン生産方式の威力を思い知らされた。のちにこのライン生産方式は日本にも輸入され、自動車工業(株)(現:いすゞ自動車(株))の鶴見工場に試験的に採用されたのを皮切りに、日本各地の工場に広まり、各種製品の生産に活用されていく。
その後、我々は昭和9年12月に日本に帰国した。
* * *
昭和10年1月 大日本帝国 海軍省
「岩井君、ご苦労だったね」
「いえ、貴重な経験となりました。これでよりこの国が豊かに、そして強くなると確信しております。ところで一つ質問なのですがよろしいですか?」
「ん?なんだい?言ってくれて構わんよ」
「②計画での建造艦艇が工作艦4隻のみと聞きましたが本当ですか?」
「ああ、そうだ。艦政本部からも欧州に行ったものがいるのは知っているだろう?」
「ええ、ともに建造中の独海軍装甲艦を見学しに行きましたから」
「どうやらその人物が②計画に関して異議を唱えたらしくてな、こう言ったそうだ。『せっかくドイツやアメリカという大国から優れた製品や技術を輸入する契約を取ったのだから、艦艇の建造はせずにその技術の解析と国内での成熟、そして応用に予算を振るべきだ』と」
「ですが、①計画だけでなく②計画もこれでは、反対する勢力も多いのでは?」
「それがどうやら宮様がその意見に賛成したようでな、周りの人間を説き伏せたらしい。しかし、艦艇の建造をしないとまずいということで、建造予定の工作艦の建造数を増やし、同時に艦の一部構造に電気溶接を導入するそうだ」
「なるほど。ん?待ってください?確か電気溶接を全面的に導入して建造された艦があったはずです。それなのになぜ、全面的に採用しないんですか?」
「全面的に採用しない原因は、実は君たちにあるんだよ。まあ、この言い方だと語弊があるかもしれないがね」
「どういうことですか?」
「君たちは欧州で何を見て、そして日本に持ち込むように手配した?」
「エンジンだったり、工作機械だったり、あとは新型の鋼材と溶接方法の技術輸入と国内での研究ができるように手配しましたが、それ以外だと……特に。……まさか、宮様が『その優れた技術の国内での成熟を待ってから一度に建造すればよい。それまでは国内の造船所や工廠を増やしつつ、研究と試作を繰り返すのみである』とおっしゃったわけではないですよね?」
「おお、君はすごいね。まさか宮様が実際におっしゃったことを大まかに当てるとは。君の能力はやはり折り紙付きなんだね」
「いえ、そんなすごい人物ではないですよ。というか、その……なんというか宮様の斬新な発想が……」
「それは私も思うことだ。だが宮様がここまで変わったのは君の責任だぞ」
「なぜです?確かに私は宮様と同時期に海軍兵学校を卒業しましたが、私の序列は56番です。宮様とは雲泥の存在ですよ?」
「理由としてだがね、君がここに来るきっかけにもなっている書類を宮様が閲覧なさったんだ。そのことと、あとは艦政本部から派遣された士官からの報告書も閲覧なさって考え方が変わったらしい。『この国はまだ発展途上で、発展させるためには海外の技術が必要だ』とおっしゃっていたよ」
航空本部長 塩沢中将が話している話はすべて事実だった。②計画では、艦の排水量をごまかすこと前提で計画が進み、空母2隻(17,000t)を筆頭に、①計画で建造されていたものの計画変更により建造がゆっくりになっていた艦を含めて建造する予定であったため、史実より金額が増える予定であった。しかしこれに待ったをかけたのが、皇族軍人の伏見宮博恭王である。
彼は岩井の航空機に関する論文や航空本部が行った実験などに興味を持ち、それらを閲覧していた。結果、大砲屋寄りの考えから航空派寄りの考えに変わっていた。そんなさなか、欧州視察から戻った士官の報告書を興味本位で閲覧していた時に欧米の技術力の高さに驚き、今後日本が国際社会で侮られないようにするには国力をより増大させることだと考えを改めていた。
こうして②計画は変更され、「改②計画」として再度計画された。内容は工作艦4隻(17,000t)と航空関連予算のみとなり、その他金額はすべて技術開発費に回されていた。
この研究開発費の中には、電波探信儀や逆探知機、水中探信儀などの電子機器の研究開発予算、各種エンジン用過給機の開発、海外より輸入した各種設備の研究などが含まれていた。
* * *
昭和9年6月 陸軍省
「大臣。私は完全新規開発の戦車を開発すべきだと思います。本車は対機甲戦闘に特化した戦車として開発すべきです。幸いにもエンジンに関しては、海軍さんが改②計画を修正し、大部分を研究開発費に回したこと、我々陸軍も予算の大半を研究に回し、さらにドイツよりディーゼルエンジンを輸入したため、1937年までには戦車用の高出力ディーゼルエンジンが完成すると見て間違いありません」
こう訴えるのは、陸軍の転生者である西沢陸軍中尉である。
「分かった。研究開発室を設置することを認めよう。しかし室長は君にやってもらう」
「え?私は航空畑の人間なので戦車のことは分かりませんよ?」
「私が言いたいのは、戦車開発にも航空機の技術が役立つだろう?ということだ。例えば君が主導で開発させている新型装甲とかだ」
「なるほど、分かりました。あと質問なのですがよろしいですか?」
「なんだね?」
「研究室に海軍の方も入れてよろしいでしょうか?岩井翔という人物です」
「彼か……彼ならいいだろう。頑張りたまえ」
「はい!失礼します」
こうして新型戦車開発のための研究が始まった。
昭和9年7月には陸軍省に新型戦車研究室が設置され、稼働を開始した。
♢ ♢ ♢
昭和10年5月 大日本帝国 海軍省跡地
様々な理由から解体が決定し、解体された海軍省庁舎跡地では海外から輸入した建設機械を使用して総合参謀本部庁舎の建設が始まっていた。建設現場では現場監督の指示のもと陸海完全協力宣言に伴って縮小された師団や航空隊、さらには失業者などの人員を充てて設立された「大日本帝国工兵軍」所属の兵士が建設機械を操り、庁舎となる各種部材を試作クローラクレーンである「八試履帯式起重機」が吊り上げ、鉄筋コンクリート製の土台に乗せていく。
本車は昭和9年8月より開発が始まったクレーンで、八九式中戦車の車体をベースに安定性を向上させるべく全幅を拡大。また、履帯を新開発の幅広型に変更した車体に、技研が開発したクレーンを搭載した。試作1号機は昭和10年4月に完成し、動作確認などののち即座にこの現場に投入された。
クレーンブーム本体は横須賀ふ頭に設置されているクレーンをベースにタダノ(株)が改良を施したものを搭載している。
* * *
昭和10年6月 大日本帝国 海軍省 会議室
「つまり、陸軍さんの新型砲開発計画とわが軍の新型対空砲開発計画を統一し、砲弾などを共通化させたいと?」
「ええ、そういうことです。」
「なるほど、一理ありますね。では来月ぐらいにでも共同会議を行い、要求を決定しましょう。」
「では、これで失礼します。」
この談話の1か月後の昭和10年7月には陸軍の次期戦車砲開発計画と海軍の新型高角砲開発計画が統一され、昭和10年8月より「共通新型砲計画」として計画が再度スタートした。
計画内容としては
・口径10.5cm
・自動装填装置を搭載
・目標初速 1,500m/s(52口径戦車砲型)
1,050m/s(65口径型艦載高角砲型)
・目標射程 2,000m(52口径戦車砲型)
19,000m(65口径艦載高角砲型)
となっている。
昭和11年8月に製造は困難を極めたものの要求性能を満たした各種2本、計4本の試作砲身が完成、各種兵器の試験を行う富士試験場(現:東富士演習場)にて試験が行われた。
試験結果は、射撃を続けていくうちに砲の砲身過熱が原因で精度が落ちること、自動装填装置の設定が甘く、装弾不良を起こすことが伝えられた。
昭和11年11月には自動装填装置の改修と砲身過熱防止用布(サーマルジャケット)を装備した第3試作戦車砲身と自動装填装置の改修を行ったことで全開発射速度が25発/分に増加した第3試作高角砲砲身が完成し、再度試験が行われた。
結果は良好で長時間射撃による精度の低下などは起こらず、また自動装填装置が原因の装弾不良も起こることなく試験は終了した。
本砲はその後昭和11年12月に65口径の高角砲型が九六式10.5cm高角砲として、52口径の戦車砲型が九六式105mm戦車砲として制式化された。
高角砲型は連装砲塔と組み合わせたA型砲塔が秋月型駆逐艦と島風型駆逐艦に搭載され、連装用防盾と組み合わせたA型砲架が慶鶴型空母と大鳳型装甲空母に搭載された。また、爆風除けと防盾を兼ねたB型連装砲塔が大和型戦艦の後期建造艦と、損傷し都洛海軍工廠で修理を行った長門型戦艦に搭載された。
戦車砲型は『九七式中戦車 チハ』の後継として昭和13年から開発が始まった新型戦車である『零式中戦車 チヘ』の主砲として採用された。この本車は主に硫黄島守備部隊や都洛島守備部隊、樺太守備部隊などの帝国の絶対防衛圏範囲に位置する島の守備部隊や、第1戦車師団、第2戦車師団などの戦車師団に配備された。
* * *
昭和10年8月 大日本帝国 統括航空本部
統括航空本部は陸海軍の航空本部を統括または代替する部署で昭和10年3月に発足した。主な役割として、陸海軍の航空機の部品の調達統括や、航空機関連予算の調整統括があげられるが、最も重要な役割として陸海軍の航空機の仕様や部品の共通化、統合された航空学校の必須科目の変更、訓練方法の統一、新型機の性能審査を含めた全般の審査などである。
これにより、陸海軍の航空機は緊急時に故障した陸軍機または海軍機から部品を取り外し、健在の機体に取り付けるという、いわゆる「ニコイチ」が行われることになる。
そんな統括航空本部では、開発が進んでいる海軍の九五式艦上戦闘機の後継機体と、開発が始まった陸軍の九五式戦闘機の後継機体の開発計画を、「新型共通低翼単葉単座戦闘機開発計画」として統合した。
試作機は昭和11年2月に初飛行し、昭和11年6月より、統括航空本部による審査が行われ、昭和11年11月に九六式艦上戦闘機として制式化された。
陸軍では可動式風防を搭載したタイプを九七式戦闘機として昭和12年3月に制式採用した。
本機の特徴として以下のものがある
・主翼折り畳み機構の装備
・沈頭鋲の採用
・350L落下式増槽の採用
・全金属製補助翼の採用
・防弾版の装備
・機体計器と部品の統一
・機体のブロック構造化による生産性向上とエンジンの取り付け方法の変更
・整備性向上のために設計段階から機体点検口の設置
などである。
機体への沈頭鋲の採用は空気抵抗削減が目的で採用され、機体計器と部品の統一は九五式で一部達成されたものの完全には達成できず、この九六式(九七式)が初となった。
また、全金属製補助翼は防弾板の装備と密接に関係しており、当初は布張りで開発を行う予定であったが、陸軍の「戦闘機は制空後に機銃掃射で陸上部隊を支援する」という考えが原因で防弾装備の搭載と、それに伴って従来の布張りでは、補助翼に多数被弾した際に機体が制御不能に陥る可能性があるとされたため採用された。
機体の構造ごとの分割は、アメリカやドイツに比べて生産能力や工業力が劣る我が国の救世主的なシステムで、機体を大まかに胴体前部、胴体後部、主翼、水平尾翼、垂直尾翼の5つに分けることで、機体の生産性と整備性の向上を図っている。
エンジンの取り付け方法の変更は、我が国は工業力が低く、本機の開発が始まった昭和10年度から基礎工業力を含めた工業力全般の強化中であるものの、いまだに工業力は低いままであるため、技術研究所より提案されたもので、信頼性が低く、壊れやすい我が国のエンジンでは、現在の取り付け方法では組付け、交換に時間がかかるため採用された。
* * *
昭和11年1月 陸軍省 会議室
「では、第4回新型戦車開発室定例会議を開催いたします。よろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします」」」
「ではまず、本車の武装の開発状況はどうなっていますか?」
「はい、武装部門からは2つ報告がございます。1つ目はご存じの通り71口径8.8cm戦車砲の開発が順調に進んでおり、おおよそ3か月後には大量生産体制に移ることが可能と見込んでおります。また、副武装となる機関銃ですが、従来までは7.7mmを搭載する予定でした。しかし今年に入って海軍さんが九三式13.2mmの実包を利用しつつ、アメリカのM2の構造を取り入れた航空機用機関砲(史実の三式13.2mm機銃)を開発しているとの情報を得て、海軍の担当部署と交渉した結果、こちらから応援を派遣することで交渉が成立し、陸上型の開発が昨年12月から始まっております。武装部門からは以上です」
「ありがとうございます。では次に防御部門からの報告をお願いいたします」
「防御部門からは1つだけ報告がございます。開発中の新型装甲、ここでは複合装甲と呼称していますが、現在メーカーと協議中であり、装甲に適したセラミックの成分を探索している途中であります。装甲に封入する金属についてですが、現在開発中です。防御部門からは以上です」
「ありがとうございます。最後に車体・エンジン部門からの報告をお願いいたします」
「車体・エンジン部門からは3つほど報告がございます。まず、砲塔に関しては、実際に戦車の乗員を開発室に招集、聞き取りなどを行い、モックアップ砲塔内部の各種備品の配置を調整する作業を実施しており、早ければ来月、遅くとも2か月後には試作砲塔の製造に移る予定です。」
「車体に関してはエンジンの搭載位置の決定、砲塔搭載位置の設計が済んでいるため、現在はモックアップの審査中です。モックアップの審査が完了次第、試作車体の生産に移ります。エンジンに関しては試作機の試験が完了し、現在大量生産のための生産ラインの構築中であり、昭和12年5月ごろには生産ラインの本格稼働が可能となる見込みです。
車体・エンジン部門からは以上です。」
その後会議はつつがなく進行し、試作車両の生産開始日時と試験内容の仮決定、実施日時の仮決定が行われ、終了した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
記述ミスがあったため、修正しました(2025/5/26)
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