第18話:セリアの秘密、知られざる想い

 夜明けの気配を帯びた森の中で、銀髪の少女は一人立っていた。セリア=フィーンの周りには、小鳥たちが歌い、花々が朝露を輝かせている。新たな冒険の舞台となった森の奥地で、彼女は何かを祈るように手を合わせていた。


 彼女の指先から微かに漏れる虹色の光が、森の朝霧を彩る。その光は彼女自身のものでありながら、どこか「借り物」のようにも感じられた。


「ユーノス様、導きをお願いします」


 セリアの祈りの言葉が、朝の静寂に溶けていく。彼女の緑がかった瞳には、決意と共に深い憂いが宿っていた。


 遠くから足音が聞こえ、セリアは慌てて手を下ろした。虹色の光は消え、彼女はいつもの穏やかな表情に戻る。


「セリア、こんな朝早くから何をしているんだ?」


 神代遼の声に、セリアは微かに微笑んだ。


「おはよう、神代さん。少し朝の祈りを」


 その説明に、遼は不思議そうな表情を浮かべたが、深く追及はしなかった。彼の左腕には相変わらず《フラグブレイク・ギフト》の腕輪があり、青い「12.5」という数字が薄暗い森の中でも鮮やかに輝いていた。


 二人は並んで歩き始め、昨日設営されたキャンプに向かった。島から不思議な森の世界へと転移して以来、一晩が過ぎたところだった。


「昨日はよく眠れたか?」


 遼の何気ない問いかけに、セリアは小さく頷いた。


「ええ。予想外の場所に来てしまいましたが、この森は不思議と安らぎを感じるんです」


 彼女の言葉には、真実と嘘が混じり合っていた。この森に安らぎを感じることは確かだが、彼女が良く眠れたわけではなかった。夜通し、彼女の心を悩ませるものがあったのだ。


『面白い反応ね』


 アフロネアの声が、遼の頭の中で響く。


「どういうこと?」


『彼女、何か隠しているわ。ユーノスの使いとしての素顔かしら?』


 女神の言葉に、遼はセリアの横顔を改めて観察した。確かに彼女の表情には、いつもの穏やかさの下に、何か複雑なものが隠されているように見える。


 しばらく沈黙が続いた後、セリアが静かに口を開いた。


「神代さん、あなたは本当に恋愛を否定しているんですか?」


 唐突な質問に、遼は一瞬足を止めた。


「否定ではない。ただ、選ぶ自由を守りたいんだ」


 遼の答えに、セリアは深く考え込むような表情を浮かべた。


「選ぶ自由……。それは確かに大切なことですね」


 彼女の言葉には、どこか遠い思いが込められているようだった。


「あなたは? 恋愛の成就を信じているんだよね?」


 遼の問いかけに、セリアは少し躊躇った後、静かに答えた。


「ええ。でも……時には成就できない恋もあると知っています」


 その言葉に、悲しみの色が滲んでいた。遼は彼女の表情の変化を見逃さなかった。


「セリア、何か言いたいことがあるなら、聞くよ」


 優しい声掛けに、セリアは一瞬、驚いたような表情を見せた。彼女は何かを言いかけたが、その時、森の向こうからレオンの声が聞こえてきた。


「おーい、神代、セリア! 朝食の準備ができたぞ!」


 声のする方を見ると、昨日設営したキャンプから煙が立ち上っていた。二人は顔を見合わせ、言葉少なにキャンプへと向かった。セリアの心に秘められた何かは、まだ語られずにいた。


 ***


 キャンプでは既に全員が起き出しており、朝食の準備が整っていた。レオンを中心に、エリオットやラティア、フローラたちが手分けして食事を作っている。


「おはよう、二人とも」


 フローラの明るい声に、遼とセリアは応じた。朝食は簡素だったが、昨日森で採集した果実と、小川で捕まえた魚のおかげで、充分な栄養がとれそうだった。


 全員が円になって座り、食事を始める中、レオンが今後の方針について話し始めた。


「昨日の偵察で、この森の北側に大きな丘があることが分かった。今日はそこを目指して、周囲の地形を把握したい」


 彼の提案に、全員が頷いた。この不思議な森の世界で、彼らがどこに来たのか、そしてどう生き延びるかを考えなければならない。


「ラティア、神代、エリオットの三人で偵察隊を組もう。残りの者は、キャンプの強化と食料調達を担当してくれ」


 レオンの指示に、皆が役割を確認する。遼は偵察隊に選ばれたことに少し驚いたが、これも新たな冒険の一部と受け入れた。


 朝食中、彼はセリアの様子を窺っていた。彼女は穏やかに会話に参加しているように見えたが、時折、遠い目をすることがある。そして、誰にも気づかれないうちに、彼女の指先が微かに光ることがあった——祈りを捧げているかのように。


『気になるなら、直接訊いてみれば?』


 アフロネアの提案に、遼は心の中で返答した。


「いきなり詮索するのは失礼だろう。それに……」


『それに?』


「彼女自身が話したくなるまで待ちたい」


 アフロネアは小さく笑った。


『随分と優しくなったのね、神代』


 その言葉に、遼は返す言葉を見つけられなかった。


 朝食後、偵察隊の準備が始まった。遼、ラティア、エリオットの三人は水筒や簡易的な武器を用意し、最低限の食料を携帯した。


 出発の直前、セリアが遼に近づいてきた。彼女の表情には、何かを決意したような強さがあった。


「神代さん、戻ってきたら……お話があります」


 その言葉に、遼は静かに頷いた。


「分かった。必ず戻ってくるよ」


 セリアは小さく微笑み、彼の腕に何かを巻きつけた。それは彼女が編んだらしい、細い紐のブレスレットだった。


「お守りです。無事を祈って」


 ブレスレットには、微かな魔力のようなものが込められていた。遼は感謝の言葉を述べ、偵察隊に合流した。


 森の奥へと進む三人を見送るセリアの表情には、複雑な思いが交錯していた。彼女自身も気づいていない、心の奥底に眠る何かが、少しずつ形を成し始めていたのだ。


 ***


 偵察隊は静かに森を進んでいた。レオンが先頭、遼が中央、ラティアが後方を務める形で、彼らは北へと向かっていた。


「結構な距離がありそうだな」


 レオンの言葉に、遼は頷いた。森は予想以上に広く、丘までの道のりは簡単ではなさそうだった。


 しばらく進んだ後、ラティアが声をかけてきた。


「神代、セリアと二人きりだったのね。何を話していたの?」


 彼女の問いかけには、単なる好奇心を超えた鋭さがあった。ラティアは依然として遼のことを疑っているようだった。


「彼女は朝の祈りをしていたんだ。偶然出会っただけだよ」


 その説明に、ラティアは疑わしげな表情を浮かべたが、それ以上は追及しなかった。


 三人は森の中をさらに進む。木々の間から時折差し込む光が、彼らの行く手を照らしていた。しかし、その穏やかな風景とは裏腹に、遼の心は複雑な思いで揺れていた。


 セリアの秘密。彼女が語ろうとしていたこと。そして、彼女が朝早くから捧げていた祈り。それらの意味を考えながら、遼は歩を進めた。


『変化を感じるわね』


 アフロネアの声が、遼の心に降り注ぐ。


「何の変化だ?」


『あなたの心よ。前なら、セリアのフラグに気づいたら即座に折っていたでしょう?』


 その言葉に、遼は一瞬息を呑んだ。


「セリアのフラグ? 彼女に?」


『ええ。あなたに対するフラグが、少しずつ形を成しつつあるわ。まだ初期段階だけど、確かに存在している』


 女神の言葉に、遼は複雑な思いを抱いた。セリアは恋愛成就を信じる立場の人間だ。彼女に自分へのフラグが立つということは、何とも皮肉な状況だった。


「どうすればいい?」


『それはあなた次第よ。これまでのあなたなら迷わず折っていただろうけど……今のあなたはどうするの?』


 アフロネアの問いかけには、珍しく導くような優しさが含まれていた。


 遼が考え込んでいると、突然レオンが立ち止まり、手で停止の合図をした。


「何かいる」


 彼の小声の警告に、三人は即座に身構えた。森の奥から、何かが近づいてくる気配がした。木々が揺れ、枝がしなる音が響く。


「敵?」


 エリオットが緊張した声で尋ねる。


「分からない。でも、用心しろ」


 レオンの言葉通り、三人は背中合わせで円陣を組んだ。しかし、現れたのは予想外のものだった。


 森の向こうから姿を現したのは、一匹の白い狼だった。体長はかなり大きく、その毛並みは月光のように銀色に輝いていた。そして、その瞳は不思議な緑色をしていた。


「動くな……」


 レオンの警告に、三人は息を殺して狼を見つめた。狼は人間を警戒するというより、何かを伝えようとしているように見えた。特に遼のことを見つめる視線には、知性が宿っていた。


 やがて狼は一度低く唸ると、くるりと身を翻して森の奥へと消えていった。


「何だったんだ……?」


 エリオットの呟きに、誰も答えることができなかった。しかし遼は、あの狼の瞳に見覚えがあるような不思議な感覚を抱いていた。


「とにかく進もう。あまり時間がない」


 レオンの言葉に、三人は再び歩き出した。しかし、遼の心には先ほどの狼の姿が焼き付いていた。


 ***


 一方、キャンプではセリアとフローラが薬草を集めていた。二人は小川の近くで、様々な草花を丁寧に摘んでいる。


「これは解熱に効く草ですね」


 フローラの知識に、セリアは感心の表情を浮かべた。


「詳しいのね。私も草花の知識はありますが、あなたほどではないわ」


 二人の会話が続く中、フローラが唐突に質問を投げかけた。


「セリアさん、神代さんのこと、どう思っていますか?」


 その質問に、セリアは一瞬手を止めた。彼女の頬が微かに赤く染まる。


「どういう意味かしら?」


「二人はいつも対立しているように見えて、でも、どこか通じ合っているような気がして……」


 フローラの観察は鋭かった。セリアは小さくため息をついた。


「私たちは確かに対立する立場。でも、神代さんは……特別な人です」


 その言葉に、フローラは静かに微笑んだ。彼女自身も、遼に対する複雑な感情を抱えていることを、セリアは知っていた。


「昨日まで私も、神代さんに特別な想いを持っていました。でも、今は違います」


 フローラの言葉には、成長と受容が込められていた。


「今の私の気持ちは、恋愛ではなく、尊敬と友情なんです」


 セリアは彼女の言葉に深く頷いた。フローラの心は既に変化を遂げ、より成熟したものになっていた。それは「恋結びの祈り」でも達成できない、自然な魂の成長だった。


「素晴らしいわ、フローラさん」


 真心からの言葉に、フローラは照れたように笑った。


 二人が薬草集めを続ける中、セリアの心には決意が固まりつつあった。今日、偵察隊が戻ってきたら、彼女は遼に全てを話そう。彼女自身の秘密、そして彼女がこの世界に来た本当の理由を。


「何か悩みがあるのですか?」


 フローラの優しい問いかけに、セリアは小さく首を振った。


「ただ、今日話そうと思っていることがあって……少し緊張しているの」


「神代さんに?」


「ええ」


 フローラは彼女の手を優しく握った。


「大丈夫です。神代さんは、きっと理解してくれます」


 その励ましに、セリアは感謝の笑顔を見せた。この森で出会った仲間たちは、彼女にとって予想外の温かさをもたらしていた。


 ***


 偵察隊は予定通り、大きな丘に到達していた。丘の頂上からは、森全体が見渡せる絶景が広がっていた。


「すごい景色だな」


 エリオットの感嘆の声に、レオンと遼も同意した。森は予想以上に広大で、遠くには山脈らしき影も見えた。そして驚くべきことに、森の西側には湖のような大きな水域も確認できた。


「これで地形はだいぶ把握できたな」


 レオンは満足そうに頷いた。


「帰りましょう。皆に報告しないと」


 ラティアの提案に、三人は頷いて下山を始めた。


 道中、遼は再び白い狼のことを考えていた。あの不思議な緑の瞳、そして知性的な眼差し。まるで人間のような理解を持った生き物だった。


『あの狼、気になるの?』


 アフロネアの声が再び響く。


「ああ。何か特別な存在に感じた」


『この世界には、様々な不思議があるわよ。私も全てを知っているわけじゃないの』


 女神の言葉には、珍しく謙虚さが含まれていた。


 森を戻る途中、再び木々の間から白い影が見えた。今度は遠くから彼らを見つめているだけで、近づいてくることはなかった。


「また、あの狼だ」


 遼の言葉に、レオンとエリオットも警戒の姿勢を取った。しかし、狼はすぐに姿を消し、彼らを脅かすことはなかった。


「まるで、見守っているようだな」


 レオンのつぶやきは、遼の感覚とも一致していた。あの狼は確かに彼らを観察しているようだった。しかし、敵意は感じられない。むしろ、守護者のような存在感があった。


 ***


 夕暮れ時、偵察隊はキャンプに戻ってきた。彼らの帰還を皆が待ち望んでおり、特にセリアの表情には安堵の色が浮かんでいた。


「無事で良かった」


 彼女の言葉に、遼は微かに微笑んだ。


 レオンは全員を集め、偵察の結果を報告した。森の広さ、周囲の地形、そして白い狼との遭遇について。情報を共有した後、今後の方針について話し合いが始まった。


「当面はこの場所をベースキャンプとして、周囲の探索を続けよう。水や食料は十分にあるが、恒久的な住処も考える必要がある」


 レオンの提案に、皆が賛同した。この不思議な森の世界で、彼らはどれだけの時間を過ごすことになるのか分からない。生活基盤を整えることは最優先事項だった。


 夕食後、キャンプファイアを囲んで全員が寛いでいた。星空が森を覆い、穏やかな夜の静けさが広がる中、セリアが静かに立ち上がり、遼に近づいてきた。


「少し、話せますか?」


 彼女の声には、決意と緊張が混じっていた。遼は頷き、二人は他の人から少し離れた場所へと移動した。


 大きな樫の木の下、月明かりに照らされた二人の姿は、静かな絵画のようだった。セリアは深呼吸をして、話し始めた。


「神代さん、私のことを疑問に思っていますよね?」


 その直接的な問いかけに、遼は正直に答えた。


「ああ。君が隠していることがあるのは感じていた」


 セリアは微かに苦笑した。


「やはり、気づいていましたか……。実は、私には話さなければならないことがあります」


 彼女は月を見上げ、言葉を紡ぐ。


「私の魂は……二つの存在を宿しているんです」


 その告白に、遼は目を見開いた。


「二つの存在?」


「ええ。私自身と、前世の記憶を持つ少女の魂——アイリスの」


 セリアの声には、これまで聞いたことのない重みがあった。彼女は静かに自分の物語を語り始めた。


 ***


 アイリスは、とある小さな村で生まれた。生まれつき体が弱く、外の世界を知る機会は限られていた。彼女の世界は、家の窓から見える景色だけだった。


 十六歳の春、彼女は青年と出会う。村に訪れた楽師の息子。彼の奏でる笛の音色が、アイリスの閉ざされた世界に光をもたらした。


 彼らは言葉を交わさずとも、音楽を通じて心を通わせた。アイリスは彼に手紙を書いたが、一度も渡すことなく、箱の中に仕舞い込んでいた。想いは日に日に強くなったが、伝える勇気はなかった。


 雨の日、彼が旅立つと告げた時、アイリスは決心した。想いを伝えようと。


 しかし、運命は残酷だった。彼の訪問の直前、アイリスは発作に倒れる。意識を取り戻した時、彼はもういなかった。


 手紙は渡されることなく、想いは届くことなく、アイリスの命はその冬に尽きた。伝えられなかった想い、成就しなかった恋。それが彼女の魂に残した痛みは、死をも超えて続いた。


 ***


「アイリスの魂は、あまりにも強い後悔を抱えていたため、次の生でも癒されませんでした」


 セリアの語りに、遼は静かに耳を傾けた。月明かりに照らされた彼女の表情には、自分自身の物語ではなく、もう一人の魂の痛みを語る複雑さがあった。


「転生を繰り返す中で、私とアイリスの魂が響き合い、一つになりました。だから私には、彼女の記憶もあるのです」


 セリアの瞳には、悲しみと受容が混じり合っていた。


「ユーノス様は私を選んだのです。伝えられなかった想い、折られた恋心の痛みを知る者として」


 その告白に、遼の胸に重みが広がった。セリアが恋愛の成就を信じる理由、彼が「フラグを折る」行為に強く反対する理由が、今明らかになった。


「だから君は……」


「はい。だから私は、誰も私と同じ思いをしてほしくないのです。想いを伝える機会を奪われる悲しみ、後悔の念を抱えたまま終わる恋の辛さを」


 セリアの言葉には、自分自身の痛みと、アイリスの魂の痛みが重なっていた。彼女の恋愛成就への願いは、単なる理想論ではなく、魂の奥底から湧き上がる切実な祈りだったのだ。


「神代さん、あなたが折るフラグの向こうには、常に誰かの心があります。その痛みを、あなたは理解していますか?」


 セリアの問いかけは、遼の心の奥深くまで突き刺さった。彼はこれまで「使命」という言葉で自分を納得させてきた。だが、その行為がもたらす真の痛みを、彼は本当に理解していただろうか。


「僕は……」


 言葉に詰まる遼を見て、セリアは小さく微笑んだ。


「無理に答えなくていいんです。ただ、考えてみてほしくて……」


 彼女の優しさに、遼は胸が締め付けられる思いだった。セリアのフラグは確かに彼に向けられつつあったが、それは単なる恋心ではなく、魂の理解と救済を求める複雑な感情だった。


「ありがとう、セリア。君の話を聞けて良かった」


 遼の言葉に、セリアは静かに頷いた。彼女の表情には、重荷を下ろしたような安堵の色があった。


「私も話せて良かったです。これからも対立することになるでしょうが……どうか私の言葉を心に留めておいてください」


 二人は再びキャンプに戻る準備を始めた。しかし、森の奥から何かの気配を感じ、二人は足を止めた。


 木々の間から、白い狼が姿を現した。その緑の瞳は月明かりを受けて神秘的に輝いていた。


「あの狼だ……」


 遼のつぶやきに、セリアは静かに頷いた。しかし、彼女の表情には驚きよりも、どこか懐かしさのようなものが浮かんでいた。


「知っているの?」


 遼の問いに、セリアは小さく微笑んだ。


「ある意味では……」


 狼は二人をじっと見つめ、そして静かに頭を下げるような仕草をした。まるで挨拶のように。次の瞬間、白い影は森の闇に溶け込み、消えていった。


「あれも君の秘密の一部なのか?」


 その問いに、セリアは何も答えず、ただ微かに笑みを浮かべるだけだった。彼女の瞳には、語られていない多くの物語が宿っていた。


 二人は並んでキャンプへと歩き始めた。星空の下、彼らの関係は微妙に、しかし確実に変化していた。敵対者としてではなく、互いの心の痛みを理解する者として。


 そして森の奥からは、緑の瞳を持つ白い狼が、二人の後ろ姿を静かに見守っていた。

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