高難易度ゲームは異世界だった!貴族のロリ娘は王都で俺と結婚したいらしい。イマイチ乗り気じゃないんですけど。先回りしてイベントをクリアしたら主人公が怒って攻撃して来た

うんこ

第1話 妹専用金庫の俺は、その日通り魔に殺される

まずは、俺の知る限りでの、あらすじを話そう。


山田領収、16歳、高校一年生。


事の始まりは約一ヶ月前に遡る。

それはいつも通りの日常だった。

朝起きて学校に行き、授業を受け、帰ってからゲームをする。

そんな何の変哲もない生活を送ってきた。

しかしある日突然、それは起きたのだ。


「おにいちゃーん! あれかってぇ!」


妹の美麗(みれい)がテレビ画面の向こう側のおもちゃを指さしながら俺を呼ぶ。

蒼はコントローラーを置いて振り返る。

そこには、段ボールで自作したプリティマジカルの魔法ステッキを持った美麗の姿があった。

俺は思わず苦笑する。

もうすぐ小学六年生になるっていうのにまだこんなものに興味があるのか……。

俺はため息交じりに口を開く。


 可愛い……


俺は黒髪ツインテールの美少女、美麗の手を取り、こう言った。


「お兄ちゃんの言うこと、何でも聞くか?」


「うんっ」


 即答である。


丁度、お年玉の残りがある。

俺は、美麗のために無意識に使わずにとっておいたお年玉の残りを使うことにした。


「行こう! イオン春日山店へ!」


プリティマジカルの魔法ステッキ。


これは魔法少女アニメの主人公、愛崎えみりが持つ魔法の杖だ。

このアニメを見て育った子供たちなら誰もが憧れる代物だろう。

だが、俺は別にこれを欲しかったわけではない。


可愛い美麗のためだ!


ただ、自分のお金を使って買う以上、妹には喜んでもらいたいと思う!


「お兄ちゃん! ありがとう!」


笑顔の美麗。

俺の身体に電気が走る。

大好きな妹に喜ばれるなら、俺は妹専用の金庫になる。

そう誓った時だった。


「きゃー!」


地元のイオンは人通りが多い。

子供の鳴き声は珍しくない。

だが、今聴こえたのは、悲鳴だ。

若い女の。


「わー!」


「きゃー!」


俺は異常な事態だと悟る。

前方の人だかりが蜘蛛の子を散らした様に、バラバラになる。

血を流している人もいる。

人をかき分け、日本刀を振り回す凶刃の姿が見えた。


「美麗、逃げるぞ!」


俺は美麗の手を取る。

 

「ううっ……」


美麗は恐怖で動けなくなっていた。

目に涙を一杯ため、さっき買ったばかりの魔法ステッキを握り締めている。

美麗の足元には水たまりが出来ていた。

おしっこを漏らしていた。


やべ、かわいい。


こんな時に失禁してる妹に軽く萌えてる自分が嫌になる。


「やばい!」


無敵の人が向かって来る。


「美麗に手を出すな!」


俺は無敵の人の前に立ちはだかる。


「どけー! 俺は死ぬんだー!」


無敵の人が日本刀を袈裟切りに振り下ろす。


ザクッ!


俺は激痛の中、意識を手放した。


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