第14話 エピローグ
俺は健臣の言葉に目を丸くした。
彼が真面目でまともなことを普通の言葉とトーンで口にすることは本当に珍しい。
「確かに、恭介、すげぇな。タケすら、こんな風に人に伝わる表現で発言できるように変えるんだから…恭介の偉大さを見た気がする。」
その時、ふと頭に浮かぶ。自分の家の蔵の話だ。
小学校四年になる前まではよく出入りしていた。しかし、あるとき父に落書きのことで叱られたのだ。
だが俺は、蔵の中に鉛筆すら持って入ったことはなかった。それを伝えると、俺が落書きをしたとされる昔の紙の束を持ってきた。
「たまたま何も書かれていない半紙だったから不幸中の幸いだけど、蔵の中のものにこんなふうにいたずらしないでくれ。」
そう言いながら、父が俺の前にその紙の束を置いた。
そこには、小筆で書いたような線が何本も引かれていて、よく見ると文字に見えなくもない。ウネウネ、ヨロヨロした線が交錯した記号のようなものがたくさん書かれていた。習字の練習を始めた小学校三年生がやりそうな練習にも見える。
ちょうど俺も三年生だったことから、覚えはないが、俺だと言われても反論できないと感じた。だから、何も言わずに嵐が去るのを待ちつつとりあえず謝罪して、その場は納めた。
それ以降、蔵には近づかないようにした。しかし今思えばあれは…
「なぁ、タケ、俺の家の蔵にさ…」
俺の話に健臣が目を輝かせる。正遵や結の残した日記などが、俺の蔵に残されているかもしれないと、健臣も思っていたところだったらしい。
俺たちは身支度を手早く済ませると、健臣の家の蔵を後にした。俺らの歴史探究は、この先まだしばらく続きそうだ。
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