ダメ人間が異世界転生を夢見る日常譚
睡眠⭐︎ふんわり毛布
高校2年生編
思い立ったが吉日
曲枝賢治(まがりえだ けんじ)、高校二年生。
趣味はアニメ鑑賞とラノベを読むこと。特技は――ない。
人生の目標、それはただひとつ。
「異世界転生して、チート能力でハーレム作ったり無双してえ」
教室の窓際、ぼんやりと空を見上げながら、彼は今日も思う。
「この人生、マジでもういいわ……」
勉強は苦手、運動もだめ、彼女どころか友達すらいない。
家庭はうるさいだけの両親、学校はやる気のない教師、社会は理不尽の塊。
唯一の希望は、ラノベで読むような「異世界」だった。
そこでは、平凡な自分でも“勇者”になれる。
頑張った分だけ報われて、仲間ができて、世界を救う役目すら回ってくる。
誰かに必要とされる人生――それが、賢治の夢だった。
「……でも、死ぬのは怖いんだよなぁ」
そう、問題はそこだった。
トラックに轢かれて異世界転生――なんて王道パターンも、実際に死ぬのは絶対に無理だ。
痛いの嫌だし、死んで何もなかったら最悪だし。
いくらなんでも命懸けすぎる。
「てことはさ……現世をちゃんと生きて、成仏とか浄化とかしたら、
“ご褒美”で異世界転生とか、あるんじゃね?」
その瞬間、電流が走ったような気がした。
まるで、天からのお告げが降りてきたように。
「よし……今日から俺、ちゃんと生きるわ」
そう決意した賢治は、まず“まともな朝ごはんを食べる”という目標を立てた。
目標は低くてもいい。コツコツポイントを貯めていけば、異世界チャンスはやってくる。
神様は見てるかもしれない。
もしかしたら“異世界転生申請受付窓口”とかもあって、日々の努力でスコアが加算されているかもしれない。
「うおおおおおお、まずは朝の挨拶からだぁあああ!」
廊下ですれ違ったクラスメイトに、勇気を振り絞って一言。
「お、おはよ……」
「……あ、うん。おはよう」
会話成立。今日のスコア:+3点(仮)。
そんな風に、賢治の“真面目に生きる異世界転生修行ライフ”が、静かに始まった。
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