第7話 西暦2050年の世界

 『タイムマシンの実現。それは人類の途方もない夢であり、我々にとってそれは時間を超越すると言った、一種の非現実的な目標でもあった。


 現在2050年、私たちは爆発的な人口増加により人口は100億人を超えていた。


 そんな中、ある科学者が火星を地球の第2の我々の故郷として、火星の大気、地質環境、生態系。

 

 その全てを変えてしまうという計画が進行していた。


 その計画は2030年から始められる。ついに20年の時を経て完成に至った。


 つまり、話を有り体に言うのであれば、火星に住んでいる人間は、富裕層であり、地球に住んでいる人間は、一般庶民であると定義できる』


「懐かしいわね」


『超・現代史 S.A.』


 誰だろうか。頭文字じゃわからない。


 俺は、その話を読み、目を疑ったが、船の窓から見える景色。


 そこからは火星を拝むことができた。


 俺の知っている火星とは、明らかに外観が異なっていた。


 その火星は赤くなく、土色でもない。


 まるで地球を見ているかのようであった。


「本当にあれは火星なのか」


 と、船員に何度も問いただすが、間違いないようで、あの青と、白と、緑、の惑星は、地球ではなく、火星だった。


 青は海なのだろう。


 白は雲か?


 緑は大地か?


 たったの20年で、火星という惑星は、生存可能環境に変化してしまい、俺は人間の技術力、科学力に恐れおののいてしまった。


「ねえ、シン。あなたおかしいわよ」


「おかしいのは現実だ。俺は、くさ……」


『言うな』


 わかった。


 頭の悪さに、定評のある俺が、おかしいとは言われれば、まず真っ先に頭がおかしいのではないかと考えてしまう。


 そして、ライオネルの声。


 言ってはいけないのか。


 そこで、ここでは50歳の、ナギサに聞いてみることにした。


「聞きたいことがある」


「なに?」


「なぜ、俺は機械化している」


「本当に覚えてないの?悲惨な事故に巻き込まれて、死の淵を拝んだからよ」


「どんな事故だ?」


「あなたは、トラウマっていう言葉を知らないの?」


「……そうか」


「隊長は、ギャラクシークレイジーだからな。ひぇひぇひぇ」


「記憶喪失していて、よかったわね」


 今回ばかりは、運が良かったのかもしれない。と、俺は思った。


 俺はふと、2020年から来たと言いかけたが、またしても彼の声が聞こえた。


『いいか。物事には均衡ってもんがある。保つのも崩すもの自分次第だ。気をつけろよ』


 気をつけるさ。 


「よし、わかった。俺は忘れている。そこで、みんなの名前を教えてくれ」


「私は、スサです」


「俺は、セツだ。隊長」


「わかった」




 



 

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