第3話 そこはテンプレートでお願いします。


「アキラ君。君には、地球とは違う世界。いわゆる異世界に行ってもらうよ。

 ちゃんと、魔法もあるし、魔物もいる世界だから安心してね。」


「ちゃんとってなんだよ!。安心なんかできるかぁ。」

 そう。俺は神様に反論できる男。


「エルフにドワーフ。ドラゴンだっている世界さ!厨二心をくすぐるだろぅ?」

「くっ!確かに。しかし、俺は38歳の中年ですし、体力的にも厳しいと思います。」


 負けるな、俺よ。ここで認めると、絶対に厄介なことになる。


「ふっ、舐めないでくれたまえ。僕は、神だよ。今の君は、ジャスト厨二。13歳だ!」

 そういえば、さっきから、体が軽く、声も少し高い気がする。


「・・・・。アキラ君。君は僕と波長があってるんだ。そうじゃないと神界に呼ぶことなんてできないんだよ。君は、70億人に1人の逸材なんだよ。そんな君に、今、僕が管理している世界に行って、少しだけ世界を良くして欲しいのさ。」


 急にシリアスな雰囲気を出して、ミコト様が見つめてくる。シリアスにしていると超絶美少女なのだ。これはいかん。魔王討伐やドラゴン退治などであれば、ごめん被るが、少しだけ世界を良くするくらいなら受けてもいいかもしれない。そんな気になってしまいそうだ。


「お願いさ」

「少しだけ世界を良くするのであれば、まぁ 俺のできる範囲でなら」


「ありがとう!君ならそう言ってくれると思ってたよ。」

(正直、今の世界は、色々と停滞していて、見ててつまらないんだよね。ボソ)


「ん?なんか言いました?」


「あははは、なんでもないよ。そうそう。異世界転生といえば、スキルだよね。」


 そこ大事。少しだけ良くするにしても、無能力で転生させられるのは勘弁してほしい。

 なんなら、チートスキルとして、有名な「鑑定」と「無制限のアイテムボックス」はいただきたいところ。

 さらに、欲を言えば、各種魔法に対する適性はMAXだとありがたい。


「そう、君が得たスキルは、死の間際の強い願いによって得た。ユニークスキル「撮影者」と書いて「ウツスモ」モゴモゴ」


 俺の危機察知能力が開花したのか。瞬発的に、ミコト様の口を塞ぐことに成功した。

 その格好で、その発言はまずい。何がまずいかわからないが、危険が危ない気がした。


「へぇ、サツエイシャかぁ。変わった名前のスキルですね。どんな能力なんですか?」

 冷や汗を流しながら無かったことにするために全力を尽くす。上司のフォローをするのは部下の務め。社会人舐めるなよ。


「ちっ。」


 あ、舌打ちした。これ確信犯だな。


「ちょっと、見てみるね。「鑑定」。ふむふむ、君のユニークスキルは、カメラを呼び出して、撮影ができる。撮影したデータは、君の記憶領域に保存されて、いつでも呼び出すことができる。というものだね。とても珍しいというか、さすがユニークスキル。君だけの能力だよ。」


 あ、今、鑑定って。やっぱりあるんですね。鑑定スキル。

 てか、カメラを呼び出して、撮影、そして、保存・脳内で確認することができる。

 まさか、それだけですか?


「あの、ミコト様、他のスキルはあるんですよね?」


 恐る恐る聞いてみる。


「ないよ」

 ミコト様がにっこり微笑んでいる。

 ちくしょぅ。可愛いじゃねーか!


 いや、待て、しっかりしろ、俺。

 撮影して、記憶するだけ?

 ユニークスキルしょぼすぎるでしょうよ。


「さっき、ミコト様が使っていた「鑑定スキル」は使えないのですか?」

「うーん、授けることはできるけど、おすすめしないよ?」


「「鑑定スキル」といえば、チートスキルというほど異世界もののテンプレですよ。」

「君の読んでる異世界ものは、全部僕も読んだからその気持ちはわかるんだけど、、、」


 あ、読んでるんですね。

 わかってましたとも。だって、その姿シュ○様ですもの。


「うちの世界の「鑑定」は、脳への負荷が激しくて、人では、それ以外のスキルを持てなくなる上に、スキルレベルが5を超えたあたりから、相手の裏の声が聞こえる仕様でね。しかも、発動させなくても「鑑定」しちゃうパッシブスキルだから、「鑑定」スキルを持っている人は、よくて人間不信で山奥に一人暮らし。最悪、廃人になっちゃうんだよね。それでも欲しい?」


「鑑定」どんだけ凶悪なスキルだよ。

 そこはテンプレート通りチートスキルでいいじゃないですかorz。


「謹んで、お断りいたします。」

「だよねぇ」


 しかしだ。鑑定が凶悪スキルだからと言って、スキルが「撮影者」だけは勘弁してほしい。


「ア、アイテムボックスはあるのですか?」

「なくはないよ。」

 ミコト様がそれ聞いちゃうんだ?みたいな微妙な表情をされておられます。


「人の場合だと、一つ収納するのに、結構な魔力が必要で、割りに合わないスキルなんだ。まぁ、サイズに関わらず1つで数えるから、使いようによっては有用かな。」


 不遇すぎませんかね?泣いてもいいですか?


「ミコト様。お願いです。何か、一つだけでも、有用なスキルをください。」

「それじゃぁ、気配察知・隠密・逃走・友好のどれがいい?」


「逃げる気MAXの戦う気0%じゃないですか・・・。というか、俺、弱い?」

「ハハハ、ユニークスキルを持っている君が弱いわけナイジャナイデスカ。」


 目をそらすなよ


「一つだけですか?」

「うん。全部でもいいけど?」


 そういう時だけ気前がいいな。

「じゃあ、全部お願いします。」


「それから、旅のお供に、この子をつけてあげるよ」


 ミコト様は、そう言って袖口に手を突っ込んだ。

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