これは、斬られ続けた男の、人間賛歌である

 タイトルに込められた逆説的な哀しさと可笑しみ、それが本作の魅力を象徴しているように感じました。

 『スローライフを送りたいだけの俺が大剣豪に100万回斬られたら、いつの間にか自分が大剣豪になっていた話』は、静かに生きたいという小さな夢が、壮大な運命に巻き込まれていく青年・ケインの数奇な人生を、温かく、そしてユーモラスに描いています。

 100万回という気の遠くなる死闘の果てに磨かれた剣技と魔法、しかしその“強さ”がもたらすのは平穏ではなく、また新たな波乱。それでも彼の隣には、フェシスやミステアといった存在がそっと灯りをともしてくれます。斬られ続けた果てに生まれるのは、ただの英雄譚ではなく、孤独と優しさが織りなす静かな人間賛歌。

 草原の風に揺れるような読後感が、いつまでも心に残る一作です。

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