彼女、ヤケ酒する

 夏鈴さんと昼食を取った日の夜。


「いやー! やっぱ酒は最高だー!」


「そーですねー......。あははは......」


 俺の部屋で、燐華さんと美湖さんが酒を飲みまくっていた。

 美湖さんはいつの間にか燐華さんの立派な酒飲み仲間となっていた。


「ほどほどにしといてくださいよ。普段から飲んでる割にお酒にそこまで強くないんですから......」


「大丈夫大丈ぶえええええぇぇ!」


 大丈夫と言った矢先、床に嘔吐する。


「ほーら言わんこっちゃない......」


 俺はため息を吐き、いつも通り台所へ雑巾とバケツへ取りに行く。

 今日は苦手な夏鈴さんと一緒にいたせいなのか、いつもより長時間酒を飲んでいる。


「いやーしかし、お酒っていいですねー。強くなってる気がしますー......」


 美湖さんも燐華さんに負けずに酒を飲む。

 燐華さんと違い、美湖さんは全然吐きそうではない。

 そんな美湖さんに俺は安心していた。

 部屋に吐く人間が二人もいたらたまったもんではない。


 俺は二人が酒を楽しんでいる横で、濡らした雑巾で床を拭く。


「燐華さーん。腕相撲しましょうよー。私、今ならめちゃくちゃ強いから力試ししたいですー」


「おー、やろやろー」


 燐華さんと美湖さんはテーブルを挟んで座る。

 美湖さんは左腕をテーブルに置く。


「えー私右利きなんだけどー。ずるーい」


「燐華さん強そうだから、ハンデくださいよー」


 そう言い、美湖さんは無理やり燐華さんの左腕をテーブルに乗せる。


「いきましゅよー! ゴー!」


 美湖さんは腕を思いっきり傾ける。

 すると、燐華さんはあっさりと負けた。

 思いっきりテーブルに手が叩きつけられ、酒が入ったコップが倒れた。


「マイ、ウィーン! イエーイ」


 美湖さんはソファーの上に立って万歳をする。

 もうめちゃくちゃだ。


「はぁ......。酒なら二人で飲んでてくれればいいのに......」


 そう思いながら、テーブルにこぼれた酒もふき取った。



 そして深夜に二人は酔いつぶれ、朝を迎えた。


「すみませんでした!!!」


 アルコールが抜けて正常になった美湖さんは、俺の前で土下座をする。


「いーっていーって。志永くんなら許してくれるって」


 なぜか燐華さんが代わりに許す。


「まぁいいですけど......。今度からはほどほどにしてもらえると......」


「ほんっとうにすみませんでした!!」


 あまりの気迫に驚き、俺は許してしまった。


「というか、燐華さんも酒勧めすぎないでくださいよ......」


「えー? だってみんなで飲んだ方が楽しーじゃーん」


「いえ! 勧められて飲んじゃう私が悪いんです!」


「はぁ......」


 俺はため息をつく。

 今後からは俺が間に入って止められるように準備しておいた方がよさそうだ。

 そう思うのであった。

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