彼女、苦手を告白

 燐華さんの体調が回復してきた頃に、俺たちは移動を開始し、俺の家に場を移した。

 燐華さんはベッドに横向きに寝転がり、休憩を始めた。


「ごめんね......。志永くんに迷惑かけちゃって......」


「何言ってるんですか。いつも吐いて介抱してるので慣れっこですよ」


「はは......それもそうだね......」


 いつもと比べ、やけにテンションが低い。

 もしかして、夏鈴という名のあの子と何かあったのだろうか。


「......燐華さん。もしかして夏鈴さんのこと......」


「うっ......な、何......」


 燐華さんが口に手を当てて返事をする。


「......ギャルっぽくて苦手だったりします?」


「......え? あ、あぁまあね......! う、うん! どうしても私と合わなくて......。えへへ......」


「そ、そうですか......」


 笑いながら回答しているが、顔が少しこわばっているようなした。


「うん......。苦手なんだよね、どうしても......」


 苦手なだけで本当にここまで疲弊してしまうのか。

 そう思ったが、こんな状態の燐華さんに質問しても、心身共に燐華さんを追い詰めてしまうだけだ。

 俺はこれ以上聞くことをやめることにし、燐華さんの介抱を最優先にすることにした。


「それじゃ、お水持ってきますね。飲めそうだったら少しずつ飲んでください」


「う、うん......」


 吐いてばかりでは脱水状態になってしまうので、水を用意するために台所へと向かった。

 食器棚からコップを取り出し、水を入れる。


「おっ......えほっ! えっ......!」


 突然嗚咽の声が聞こえてきて、咄嗟に燐華さんの元へと戻る。


「り、燐華さん!」


 ベッドの上で右手で口を押え、うずくまっている燐華さんの背中をさする。

 しばらくさすると、燐華さんは落ち着き、再び横になった。


「ごめんね......ごめんね......」


 泣きそうになりながら、ひたすら謝罪する燐華さん。


「......大丈夫ですよ。......気にしないでください」


 俺は燐華さんの近くに座り、安心させるために声をかけ続けた。


「......志永くん。膝枕して......」


「.....それで気が晴れるならいいですよ」


 俺は受け入れ、膝に燐華さんの頭を乗せる。


「......やっぱ、安心感あるね」


 俺の腹に顔をうずくめながら燐華さんが言う。


「......落ち着いてきましたか?」


「うん......。ありがとね......」


 燐華さんは落ち着いたのか、それからしばらく寝てしまった。

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