彼女、同級生と会う

「よーし今回は早く着いたぞー!」


 本日は、志永と燐華がデートをする日だった。

 昨日に適当な場所で酒を飲み、警察に介抱されてたどり着いたホテルが偶然集合場所の近くだったため、早く着いたのだった。


「あれ? 燐華ちゃんじゃん! 久しぶりー!」


「んー?」


 背後から自分の名前を呼ばれ、振り向いた。



(あー燐華さん時間通りに来るかなー......)


 俺は集合場所に向かっていた。

 このペースなら十分ほど前には到着しそうだ。

 集合場所の近くまで来たところで、燐華さんが先にたどり着いていることに気が付いた。


(あれ、珍しいな......)


 いつも時間に遅れるどころか集合場所にたどり着けない状況であることが多かったので、驚いてしまった。


(......ん? 誰かと一緒にいるな......?)


 燐華さんは、茶髪のちょっとギャルっぽい服装の女性と話していた。

 道でも聞かれたのか、それとも友達と偶然出会ったのか。

 そんなことを考えながら燐華さんの元へ近づいていく。


 次の瞬間、燐華さんは膝から崩れ落ち、地面に手をつく。

 手で口を押え、地面にうずくまってしまう。


「り、燐華さん!」


 俺は全力で燐華さんの元へ駆け寄った。



「......燐華さん!」


 俺は燐華さんを軽くゆすり、様子を確認する。


「き、君は!?」


 女性が俺に声をかけてきた。


「こ、この人の彼氏です! 一体どうしたんですか!」


「わ、私にもわかんない......! 急に体調が悪くなったのかうずくまって......!」


 女性も突然のことで驚き戸惑っていた。


「燐華さん! 大丈夫ですか!?」


「......うん。いつもと同じでお酒......。うぷっ......!」


 口から嘔吐物が出てしまい、地面を汚す。


「うっ......! うぅ......」


 燐華さんはいつもこんなに苦しそうに吐いたりしない。

 明らかに様子がおかしかった。


「と、とりあえず私水とかティッシュとか買ってくる!」


「はい! お願いします!」


 女性は走って水などを買いに行った。

 その間俺は燐華さんを落ち着けるためにそばにいた。



 数分後、燐華さんの調子が歩ける程度まで回復したので、近くのベンチに座らせた。


「助かりました。ありがとうございます」


 俺は女性にお礼する。


「い、いえ......。友達として当然のことをしただけだし......」


「え、友達?」


「私、燐華の同級生の菜月夏鈴なづきかりんって言うんだ。で、お兄さんは燐華ちゃんの彼氏さんだよね? 名前は?」


「あ、俺は志永翔って名前です」


「そーなんだ。今後よろしくね。それじゃ、私用事があるので、燐華ちゃんをお願いね」


「は、はい......」


「燐華ちゃんお大事に。......今度ゆっくりお話ししようね」


 夏鈴さんは手を振ると走ってどこかへ行ってしまった。

 姿が見えなくなり、俺は燐華さんの隣に座った。


「......いい友達ですね」


「......うん」


 返事は肯定的なものだった。

 しかし、燐華さんの様子が明らかにおかしい。

 何かにおびえるように震え、恐怖している。


「......燐華さん。もう少し休んだら一旦俺の家に移動してしっかり休みましょう。もし歩くのが大変でしたら、おぶっていきますよ」


「......わかった」


 俺はしばらくの間、燐華さんの体調が戻るのを待った。

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