未成年の僕が美女たちのパパになってお金を稼ぐ方法
柊咲
第1話 この世界で男が生きるのは難しい
「……なあ、頼む。ポイントくれよ」
暗い路地裏。
初めて会ったときはあんなに楽しそうに話していた優雅さんが、僕の足にしがみついて放そうとしない。
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにさせた彼に、僕はなんて言葉をかければいいのかわからず唇を震わせることしかできなかった。
「あ、あの、その」
「もしさ、お前もポイント無いなら、女……女、紹介してくれよ。なあ、頼むって」
「紹介って、僕もまだ」
吐き出すように出した言葉。
だけど僕がちゃんと返事できないでいると、優雅さんは声を荒げる。
「なあ、いただろ! 貢がせてる女! そいつを俺に紹介しろって言ってんだよ!」
「そんなの」
「噓付いてんじゃねえよ! いたじゃねえか、高級レストランで貢がせてる女! その女を俺に貸せって──」
そこで足音が響いた。
コツコツと、踵の高いヒールの音。
「ひぃ……っ!?」
その瞬間、優雅さんは全身をビクッと反応させた。
「こんなとこに隠れていたのか、不良品。最後の最後まで手間をかけさせてくれたな?」
凛とした女性の声。
振り返るとそこには軍服姿に警棒を持った女性が立っていた。
優雅さんが僕の足から離れて後退る。
逃げようとしても背は壁にぴったり付いたまま。
逃げられないとわかると、彼は青ざめた顔を地面に擦り付ける。
「すみません、すみません……明日! 明日には結果を出します、だから今日だけは勘弁してください!」
「今日だけは、か……。明日まで待ったとして、絶対に挽回できるという根拠を言ってみろ」
「こ、こいつ! こいつに女を紹介させて、貢がせます……だ、だからどうか──ぶぎゃあッ!?」
勢いよくハイヒールで踏まれた優雅さん。
鋭利な何かで刺されたような音に、僕は震えたまま動けなかった。
「女に貢がせるだと? いつからお前ら”男”が私たち”女”より上の存在になったんだ、ああん!?」
「すみ、しゅみま、へんっ!」
「どうせ、この”ニュー・ススキノ”に来る前はこう思っていたんだろ。『この世界は男の方が少ないから何もしなくても男は求められる。女を落として金を貢がせるのなんて簡単だ』と。……舐めるなよ、ウジ虫が」
ゴリ、ゴリ……。
今度は何かが潰される音がはっきり聞こえた。
「お前はそこら辺に飛んでいる餓に抱かれたいと思うのか? お前はそこら辺をカサカサ歩いているゴキブリに甘えたいと思うのか? ないだろ、普通。そんな男であるお前はその有り得ない生物と一緒なんだよ。お前に金を払う価値なんてない、貴重な時間を使うに値しない」
「は、ひぃ……」
「わかったらさっさと消えろ。そして二度と──」
この世界で生まれるな。
その言葉を最後に、優雅さんは何処かへ連行された。
「──で、貴様は?」
「えっと、僕は」
警棒を持った女性がスマホを確認する。
「登録名は青葉凛。パパ活回数1、レビュー数1、ただし低評価。ポイントは……ふっ、たった16500か。もって数日といったとこだな?」
そう断言されて、僕は大きく唾を飲む。
そして女性は僕の目の前でしゃがみ、恐ろしいほど優しく頭を撫でた。
「……すぐ、また会えそうだな。その時はさっきの男よりも優しく踏み抜いてやろう。楽しみにしているんだな、坊や」
女性は名前すら名乗らず、暗い路地裏の奥へと消えて行った。
一人ぼっちの路地裏。
まだ、呼吸が乱れて苦しい。
胸をギュッと抑え、大きく息を吐く。
「考えろ、考えるんだ。指名を取れる方法、お金を稼ぐ方法。じゃないと僕も──この世界に捨てられる」
どうしてこうなったのか。
それはほんの数日前、僕がこのニュー・ススキノに来た日まで遡る……。
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新作です。
今日はこの後19時11分、21時11分の3話更新です。
明日からは19時11分に毎日更新する予定です。
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