第6話 可愛い可愛い、すみれちゃん

 名前の通りといえばその通り。

 ヒーローが集結して会議をする。

 だから、ヒーロー会議。


 私は何度もここを訪れている。

 何せ、四人も担当したヒーローがいた。その四人は皆、人殺しに疑問を持たない子たちばかりだった。というか、自分が人を殺していることを理解できていたのだろうか。


 まあ、その四人に人殺しをさせたことはないけどね。


「はあ」

「大ちゃん。もしかして、ヒーロー会議は初めて?」


 五年間もヒーロー活動をしていたら、一回ぐらいは来ていいものだけど、大ちゃんの場合はそれが当てはまらない気がした。


 やたらと子供の多い会場の中、人混みを掻き分けて適当な席に二人して座る。


「それにしても、クソガキが多すぎるだろ。ていうか何千人規模だよ。関東地方の奴だけだよな?」

「クソガキは大ちゃんも同じでしょ。確か、五千人規模の会場だったかな?」


 今日のヒーロー会議は満席だ。

 つまり、今日これなかったヒーローもいるということになる。

 関東地方だけでも、おそらく一万人、いやもっともっと多いかもしれない。


 この中で、何人の子供が生き残るのかな。


「うわあ、サポーターなしのクソガキもいる。ありえねえ」

「大ちゃんもクソガキ。いやいや、サポーター不足だし、仕方ないでしょ。ましてや要求するヒーローの数が少なすぎることもあるけどね。必要な存在だから不足とか言われているけど、実際はそんなに必要ない実態はよくわかんないよね」


 サポーターは人手不足。

 そう言われて久しいが、実際にサポーターを要求するヒーローは少ない。


 いたら便利かもしれないが、別に絶対必要な存在でもない。

 それでも求める人はいる。しかし、サポーターになる方が稀であるため、結局は需要と供給が見合っていない。現状はそんな感じ。


 これがサポーターである。


「必要だと思うけどねえ」

「とか言いつつ、大ちゃんは性格悪すぎて四人のサポーターに捨てられてるじゃない」

「四人のヒーローに捨てられているあんたにだけは言われたくないね」

「あんた、じゃなくて」

「はいはい、あやだろ。悪かったって……かるーいデコピン、気づいてるからな」


 このクソガキ、どんな教育を受けてきたんだろう。

 失礼ではあるけど、なんか礼儀がある部分もある。

 前から思ってたけど、ごめんなさいが言えるのは良いことだ。


「あれ、大門じゃん」

「うげぇ、純恋じゃん」

「すみれ、ちゃん?」

「あ、新しいサポーターさんですか?」


 天真爛漫、という言葉が似合う少女がやってきた。

 おそらく、大ちゃんと同級生ぐらいだろう。

 しかし、髪の色がしっかり赤色だ。


「えと、気になりますよね。この髪色」

「あ、ごめんなさい! 名乗りもせずにジロジロと」

「いいんです! 私も名乗っていないですし! 私は上条純恋です。この髪の色は……えと……内緒です!」


 ああ、そういうことか。

 おそらく上条さんの能力に由来するものだろう。


 まあ、可愛いからいっか!


「私は大月彩夏です。大ちゃん……じゃなかった、神宮司大門のサポーターを務めています。これからよろしくね、上条さん」

「おお、大門があだ名で呼ばせている!」

「ちげえから! あやが勝手に呼んでるだけだから!」

「ええ! 大門があだ名で呼んでいる!?」

「呼ばせられているだけだから!」

「あの! 私のことも、すみれちゃんって呼んでくれませんか?」


 本当に可愛いなこの子は、腰まで伸びている赤毛をわしゃわしゃしてやりたい。


「いいよ、すみれちゃん。それじゃあ、私のことも、あやちゃんって呼んでほしいな」

「いいんですか!? あやちゃん!」

「さっそく呼んでやがる」

「いいよー。あのさ、すみれちゃん、なでなでしてあげよっか」

「え!? いいんですか!? やったー! わーい!」


 え、なにこの子、めっちゃくちゃに可愛いんですけど。


「えへへ、えへへ」

「本当に可愛い」

「そいつの髪、繊細なんだから触りすぎんなよ」

「はーい」


 なんだろう。

 大ちゃんがすごい睨んでくる。


 もしかして、嫉妬か?

 このクソガキにも、可愛いところがあるんだなぁ。

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