強大な吸血鬼との死闘に巻き込まれた少年の成長譚

完結全38話読了してのレビューです。

本作『罪喰らいのノーヴェ』は、作者様が以前に書かれていた『イノセンス・V』の改訂版となります。全400話近くあり、完結していなかったので、本作を読むのはちょっと不安があったのですが、登場人物や基本設定はそのままに大幅改変されており、別物として楽しく拝読できました。

基本的な部分はしっかり押さえつつ、今回の38話はいわば序章ともいえるものです。改定前の作品を読んでいる、いないにかかわらず、本作のみで十分楽しめるので安心です。

綿密に練られた物語は、近未来の日本を舞台に、強大な吸血鬼と戦う人間の熱い攻防戦を主体としつつ、各キャラの内面を掘り下げた心理描写も巧みで、彼らの息遣いまで聞こえてきそうです。

退廃した世界でどうして吸血鬼と人は争い続けるのか。
他のレビュワーさんが書かれているとおり、現実の世界で起こっている出来事とリンクしている部分も散見できます。

かなり硬派な現代ファンタジーで、しかもかなりダークなのですが、主題が明確になっているため、感情移入もしやすく、また文章も読みやすいため、すっと引き込まれていくでしょう。
魅力的な女性キャラも多く、どちらかというと、こっちがメインでは?と個人的には想えるほどです。
敵味方入り乱れてのやり取りも楽しみの要素です。
また設定資料が別途用意されている親切設計、続編(?)は8月予定とのことで、それまでに全38話、ぜひともご一読ください。

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