俺に◯女をくれる親友などいない
蠱毒 暦
無題 裏
「書類のチェックが終わったら、職員室まで来てほしい。」
「分かりました…先生。」
今日で最後。これを逃せば…2度と好機は訪れない。学校が終わり放課後になっても尚、彼は来ないのが不安だけど…必ず来る。
戯れはここまで…もう手段は問わない。
……
…
ほっ、ほっ、ほっ、ほっ…とうっっっ!!!!
「俺の名は、
ガッッシャアァァァァン——!!!!!
「今日、食パンに何つけて食おうか迷ってたら、トースト機がぶっ壊れてて、俺の部屋が大爆発したから、遅刻しちまったぜ!!!!!!」
「その聖人が彼女を誰かに寝取られて発狂したみたいな耳障りな声…やはり、
——俺と同じ男子用の制服を着ている男にしては長い黒髪のコイツの名は
「遅刻も何も、既に授業が終わって今は放課後。教員達の苛烈なお叱りを受けたいなら、職員室に行く事を勧めますよ。」
「うえぇえぇぇえーーー!!!!じゃあ、一緒に行こうぜ?この通りだぁぁぁぁ!!!!!」
「顔を床にめり込ませて、懇願なんて…あなたには、恥もへったくれもありませんね。」
「ぼれだち、だいじんゆうじゃぺえか!!!※訳:俺達、大親友じゃねえか!!!」
「仕方ありませんね…では、」
「ブハァ…マジでか!?サンキューだぜ、オッキー!!!」
「職員室前までは同行してあげましょう…おやおや、そのポカンとした表情。私の携帯の待ち受けにしてもいいですか?」
「いいぜ!!!カッコよく、撮ってくれよな!!!!!」
……
【計画を進めて下さい。親父殿には秘密でお願いします。】
「送信っと……顔面がア◯パ◯マンみたいになってますが、無事に生還したみたいで、ホッとしましたよ。」
「窓ガラスと床の弁償代が8億らしいぜ。だから明日からバイトの数、増やすとして…オッキー。気晴らしに、どっか行こうぜ!!!」
「
「流石だぜ!!!!焼肉パーティか?カラオケ大会か?ナンパ大会でも今日は負ける気しねえ!!!!!」
「いえいえ。そんな陳腐なイベントではありませんよ。私はやる事があるので、先に行ってて下さい。
「うっひょぉぉ!!!!じゃあ、荷物置いてから集合場所に行くぜ。オッキーも早く来いよな!!!!!」
ガッシャァァァァン——!!!!!
「やれやれ…私も書類を先生に渡して、着替えないとですね。」
……
「あっ、お兄ちゃんっ!!!早く部屋の片付けしてよ!!!!!」
「ゲェ…ちょっと、勉強しに…」
「はい嘘。また、沖奈さんと遊ぶんでしょ!?」
「ギクゥ!?!?…ば、晩飯までには帰るぜ!!!!!とぅ!!!パラシュートが開かねえ!?!?うわぁぁぁ…」
「〜〜〜っ…今度という今度は許さないんだからぁ!!!!!!!!!待ちなさいーーー!!!!!!!!!!!」
……
「はぁ…はぁ……ここが集合場所かぁ?そこの兄ちゃん。俺の部屋といい勝負するくらいの、工場みたいな場所の中で何するんだ??」
「説明も聞かずに参加したのか…なら、早く帰った方がいい。ここはじきに戦場になる…っ。もう、始まるのか。」
瞬間、照明が点灯し…アナウンスが流れる。
『死すらも超える絶望と破滅とほんのり甘い汁が吸えるかもしれない…【デス&死&Dieの会】へようこそ。では早速、24名の参加者に今回の競技の内容を発表しよう。』
会場の上から銃、ナイフ、釘バット…果てはバナナまで落ちて来やがった。
『どんな手段を使っても構わない。残り12人になるまで……潰し合え。』
「暴力とか、数日は寝込みそうだから断るぜ。なあ…ぼぇ!?」
「「「「「「死ねぇ!!!!!!!」」」」」」
「ぐおっ…がはぁ!?ヘヘッ…痛え…痛ぇ…けど、」
俺は、血で染まったバナナを手に取った。
「俺はしょっ中、オッキーとゲームしてたから知ってんだ。血みてえな色をしたバナナを食えば回復するってなぁ———!!!!」
……
会場に設けられた席に座って、ため息をついた。
「それを言うなら、赤キノコ…って。聞こえてないか。」
「若旦那。次の支度が……」
「その呼び方は不愉快だからやめて。よし、これで、不穏分子の大半を合法的に粛清出来た。次に進めようか。」
血塗れなのに、元気にはしゃぐ彼の様子を微笑ましく観察しながら、マイクの電源を入れた。
……
「ヘヘヘッ…どんなもんだ!!やっぱ、バナナは最強だぜ〜むしゃむしゃ…甘くて美味えし。」
『…フン、上出来だ。次に進むといい。』
扉が開かれて、中を覗くと…筆記用具と紙が置かれた机と椅子が12人分用意されている。
『次は頭脳面を試させてもらおう。これは、某難関大学の入試の過去問だ。制限時間は1時間。カンニングといった不正行為を行ったり、満点を取れなければ失格となる。出来たら扉の前にいる愛らしい試験官に提出したまえ。』
「放送してる奴!!これって、勝てれば…何が貰えるんだよ?」
『……全てさ。』
「全てぇ!?!?…って何だ?」
『…っ。ここで、問答をしている暇があるのかな?制限時間は1時間だが。』
「うわぁぁ!!!!やっべぇ!?忘れてたぜ!!!!」
俺がダッシュで走って椅子に座る頃には、他の奴らは既に席に座って必死に問題を解いていた。
「どれどれぇ…表も裏も何言ってるのかさっぱり分からないぜ!!!!まあマーク式のテストなら、当てずっぽうでやりゃあ、ここから最速いけるぜ!!!!!俺は天才だぜぇ、ヒャッハァァ!!!」
……
「そ、その…ここで失格になるのでは…?」
「…確かに底なしの大馬鹿ですが、当てずっぽうで、最難関で有名な魔名女学園の入学試験を私と同じく満点で通過しています…ほら。」
丁度、彼が問題用紙を渡している時だった。
『正解…正解。嘘!?これも。とっても癪ですが、合格…です。』
『ヘヘッ。俺をみくびってもらっちゃぁ、困るぜ!!!どうよぉ!?俺が1番だぜ!!!!なあ、記念に喫茶店でミントティー飲もうぜ!!!!この牛のツノ…飾り?触ってもいいか!?!?!?』
『うわぁ…事前に主から聞いていた以上に、馬鹿で、気持ちが悪くて、反吐が出そうです。ここまで私を不快にさせたのは、今世紀であなたが初めてです。どうして主は、こんな泥水が染み込んだボロ雑巾みたいな奴を……っ。』
『おいおい、そんな顔するもんじゃあないぜ?俺が、お子様ランチを奢ってやるよ!!!!量が少ねえが、味はとびきり美味えんだぁ!!!!!!』
『…んっ。喫茶店にお子様ランチなんてない事くらいは知ってます…主ならいざ知らず、品性が欠如しているあなたとは絶対に嫌です。殺されたくなければ、早く先に進んで下さい…後。』
赤髪の三つ編みで、牛のツノみたいな飾りをつけた翡翠色の着物姿の少女…
『いい加減、ツノを触るのをやめろ———!!!!!』
『ぐっはぁぁぁぁぁぁ——!?!?!?』
背中に掌底を喰らわせて、彼は扉の方向にぶっ飛んでいく。
「ね……何とかなっただろう?」
「は、はは…」
側近が苦笑いを浮かべるのを他所に、マイクのスイッチを押した。
……
「背中、痛え…さっき、バナナを食べてなかったら即死だったぜ……よっと。」
『よくたどり着いた。これで最後だ…扉に貼られた紙をしっかりと読んだ上で、選択しろ。』
「この紙かぁ?どれどれ…?…??なんて書いてあるんだ?お前が読んでくれよ!!!」
『……【この扉を開けて進めば、今までと同じような生活は送れなくなる。逆に進まなければ、全てを失う。】…だ。』
「何だっけか…確か、朝のニュースでやってたんだよ…あ!!!禅問答って奴かぁ…?なら、俺は裏技を使うぜ!!!!」
俺はポケットから、一円玉を取り出す。
「ヘヘッ、これで決めりゃあいいだけよっ!!!」
……
「若旦那…その。」
私は顔を顰める。
「だから、それはやめてって…」
「侵入者です。既に第1エリア、第2エリアに配置していた者達が、無力化されたと…」
「え。」
私はモニターの映像を眺めて、みるみるうちに血の気が引いていくのが自分でも分かる。
少女の背丈と制服から見て中学生。ドリルのような形のしたツインテール。彼と同じ…色褪せた金髪
——
「私もこれから裏口を使い、援護に向かいます。」
「…っ。何とか第二エリアで、止めてください。」
「はい。この命に変えてでも…」
——3時間後。
「1って書いてあるのが表なら進むでぇ…書かれてないのが裏。つまり、進まねえ!!…よっし、決まったぜ!!!!…ヒャッハァッ!!!!!!」
—————————————————————
【唐突ですが、初めてましての方は初めまして。久しぶりに登場した、本編とは何にも関係ない女神こと…ルーレットの女神です。】
【お仕事なので早速、一円玉が表か裏かの判定を行います。どちらにせよ、これは大馬鹿の人生を大きく変える事になるでしょう。】
【結果は……『裏』。】
【では、物語を続けて下さい…ね?】
—————————————————————
「裏。進まねえって事ぁ…よっし、オッキーが入口で待ってるかもしれねえから俺は帰るぜ!!!じゃあな!!!!」
『え、ちょっ…今は…』
……
「も……申し訳ありま…せん。」
「っ…主…」
急いで彼の元に私が来た頃には、部下達は全員倒されていた。
「あ!!!!お兄ちゃんっ、またこんな怪しい場所で、変な大人達とつるんで…全身の骨を全部へし折ってでも、連れて帰るからね!!!!!!」
「ゲェ!?ここまで、追いかけてきやがっ…ブハァ!?」
「妹おこ頭突きっ…妹おこアッパー!!!!!!!!」
彼は空中で縫い止められ、妹の拳の連撃を無抵抗に喰らい続け、骨がリズミカルにバキバキとへし折れていく音は、さながら交響曲の様だった。
「…妹おこパンチ!!!!妹おこパンチ!!!!!」
「げ、ご、ぎゃ…ガバァデェ…ッ…う、うわぁぁぁぁぁぁぁ————!!!!!!」
「妹…激おこ踵落としぃっ!!!!!!」
ドッゴォォォォォォォォンンン———!!!!!!!!
「………ふぅ。スッキリした。」
四肢があらぬ方向に捻じ曲がり地面に顔が埋まった彼の首を掴んで、片手でズボッと引き抜くと硬直する私を見て一礼した。
「沖奈さん、すいません…お兄ちゃん借ります!!!!! 」
「…う、うん。」
「あれ…沖奈さんって、女の子っぽい服とかも着るんですね。とっても似合ってて…可愛くて素敵です!!!!」
「あ…ありがとう。」
「…では失礼します!」
妹に引きずられていく彼の姿を、私は見ている事しか出来ず…最後の機会を失った事を悟り、悔しくなって、涙を流した。
……
それから、5ヶ月後……放課後。
ほっ、ほっ、ほっ、ほっ…とうっっっっ!!!
「…俺の名は、
ガッシャァァァァァァァァン!!!!!!!!!
「退院祝いで院長と看護師達が用意してくれた舞台が壊れて、そこから温泉が沸くまで、ソーラン節を披露してたら遅刻しちまったぜ!!!!!!」
……
………
……………あれ?
「オッキー、何処行ったんだ?…温泉卵も持って来たぜ!!!!一緒に食べようぜぇ!!!!!」
………
……
1日、また1日と過ぎても…もう、オッキーは学校に来る事はなく、数日後…何となくで先生に聞いたら家の都合で、遠くに転校したのだと知った。
その時に、何を思ったのかは…分からない。気がつけば病院にいて、妹が泣きながら俺を優しく叩いてた事だけは覚えている。
それから学校を中退。紆余曲折あって、妹と結婚する事になり、社会人として真っ当な会社に就職して、普通に働き子供の為にお金を稼ぐ…そんな今でも、たまにこう思う。
あの時の選択が間違ってたのではないか…と。
——Sister End【更生】
こんてにゅー?
・はい
・いいえ
俺に◯女をくれる親友などいない 蠱毒 暦 @yamayama18
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