第11話 雅子の部屋5
20世紀のいつか、雅子大学3、明彦大学2
明彦、彼の胸に顔うずめたうちの頭なでてる。女ってわからへん。嬉しくても泣くもんなんや。ちょっとすすり泣きした。
「なぁ、明彦、『ぼくのお嫁におなりや』でジーンとして泣いてしもたん。おかしいよなぁ。嬉しいのに泣いてまうなんて」
「何かに感動して涙がでることはあるものさ。江戸時代以降、男は体面を気にして泣かなくなったけど、戦国時代とそれ以前は日本の男もよく泣いたんだ。男が軽々しく泣くもんじゃない、なんて言われ始めたのは特に明治時代以降だ。ぼくは雅子のことを泣けると思うよ。雅子を思って泣けるよ、きっと」
「キミ、うちがジーンとする言葉言うたらあかんよ」
「狙っていっているんじゃないから」
「なんか、うれしい」うち、高ぶってしもて、思わず明彦の胸噛んでもた。
「雅子、子猫みたいな真似するんだね」
「ごめん、無意識に噛んでもた、痛かった?」
「いいや、そうでもない」
「ごめんな」ってうち、今度は彼の胸舐めた。
ちょうど彼の乳首が目の前にあって、乳首吸てみた。男の子でも乳首吸われるん好きなんやろか?
「なぁ、嫌やない?乳首、吸われるん、くすぐったい?」
「悪くないよ。ゾクゾクするよ。ねえ、雅子、ぼくら独占欲、所有欲、支配欲とか、依存心や執着心なんて言ってたくせにさ、挙句の果てには、『私をお嫁にもらってくれる?』、『ぼくのお嫁におなりよ』なんて、一夫一婦制度に簡単に行き着いちゃうんだね」
「それは妊娠ってことが頭にあったさかいや。恋愛感情とは別に、赤ちゃんできたら、経済的にも時間的にも一人じゃ難しいさかい。恋や、愛や、なんて言うてられへんさかい。うちの兄夫婦見ててそう思た」
「まあ、確かにそうだね。今度からはコンドーム付けようね。薬局に自販機があるだろうから、今から買ってくるか?」
「今からじゃ遅いよ。もうキミ何リットルもうちの中にぶちまけたんやさかい。今晩は生でしよや」
「雅子、それ、おねだり?」
「うん、もっとして」
「いいよ、何度でも」
「キミ、何回できるん?」
「八回くらい?」
「うち、壊れてまうよ」
「壊さない程度に優しくするけど」
「あのスロー、スロー、クイックやられたら気ぃ狂てまうわよ」
「スロー、スロー、クイック?」
「浅く何回か突いて、急に深く突っ込むんやもん。予測つかへんさかい、何度も逝てまうんよ」
「あれダメなの?」
「ううん、あれが好きなの」
「じゃあ、スロー、スロー、クイックで虐めてあげるよ。今度はかき回してあげるね」
「うちら、すごいこと喋ってへん?」
「付き合って、体の関係ができて、彼氏彼女になればこんなものだろう?普通という平均値なんかないんだよ。あるのはぼくと雅子の標準があるだけだ。それに、付き合うと、束縛もでてくる。勝手にはできない。そういう相手に縛られる、相手を縛る不自由さが出てきて、それが快感になるのが恋愛だろうね。そして、一人の時の価値観が、相手ができたことで変わってくるということなんじゃないのかな」
「明彦の言うことようわかる。うちの頭のまだ埋まってへんパズルのピースくれたって感じかしら。おおきにな」
「どういたしまして。さあ、シャワーを浴びよう。体中がベトベトだよ。シーツも濡れてる。雅子の濡れ方もすごいよね?」
「『雅子の濡れ方も』?『も』?『も』?誰かの濡れ方すごくて、うちもなん?」
「……『雅子の濡れ方は』と言うべきでした」
「ヒメやなぁ?ヒメの濡れ方もすごかったんやなぁ?」
「……まあ、そうだね」
「うち、バカやなぁ。『は』でも『も』でもどうでもええのに、気になる、ヒメが気になる。それでさ、バカなうちはバカな質問思いつくんよ」
「どんな質問?」
「バカやなぁ、実にバカ!あのなぁ、『うちとヒメとどっちが良かった?』いう質問…バカやろなぁ…」
「その質問、真面目な比較解剖学で答えても雅子はイヤだろうし、キミのほうが良かったよという答えは一時的な雅子の満足を満たすだけ。どう答えよう?」
「うち、バカやなぁ、忘れて、忘れて。これやったら、万里子バカにできへんよ」
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