第8話 雅子の部屋2
20世紀のいつか、雅子大学3、明彦大学2
「ええっと」あれ?男の子とソファーに座って、さて、どうすんやったっけ?「ねえ、男の子とソファーに隣り合って座わるでしょ?普通、女の子はどうするの?吉田万里子的に抱きついちゃえばいいのかしら?」
「雅子、吉田万里子への敵愾心がすごい!」
「ああはなりたくないって気持ちと、女として万里子のテクは使わないと損という気持ちが相克するのよ」
「雅子、まず、お酒を飲みながらゆっくりお話から始めようよ。ニヶ月半の間知り合ったとはいえ、今日からお付き合いしましょうとなったばかりなんだから」
「お話だけなん?」
「なんか不満そうじゃない?わかりました。こっちにもっとお寄りよ」って明彦がうちの肩に手回して抱き寄せた。うち、明彦の左側に座ってたんやけど、左手だけで抱き寄せられた。ああ、ドキドキする。「これでええ?」
恥ずかしい。明彦の顔見られへんわ。下向いてしもた。「うん…あの、その、もっと強く」「こんな感じ?」って右手でうちの左肩も抱き寄せた。うわぁ、顔近いわ。うち、目つぶって顎上げた。くるかな?
明彦、うちの鼻先に彼の鼻すりつけてきた。うちのホッペタにキスした。頬なん?口やないの?
「お口じゃないの?」
「雅子、欲張りじゃない?まだ夜も早い。焦っちゃダメだよ。お話しようよ」
「お話だけなの?」
「欲張りだなあ。じゃあ、ほら、こんな風に触るのはどう?」
明彦がうちの背中に右手回して、背骨にそって指動かしてた。脇腹触る。お尻に手回す。「アン、そういうのおかしくなっちゃう」あかん!万里子的な声出る!久しぶりに男の子に触られたんやもん。こういう感じやったなぁ、と思い出した。
「さっき、高校二年の夏、敦賀に海水浴に行って、処女捨てたって言ったじゃない?その相手とはどうなったの?」
「あら、明彦、うちの昔の相手が気になる?」
「雅子のことは大好きだから、できれば知っておきたいな。言いたくなければ別にいいよ」
「別に隠すことでもないのよ。高校は女子校だった。高校一年になったら周りの子がどんどん経験をし始めた。経験ってセックスのこと。それで、処女を捨てる子が多くなって、私も捨てようかなあ、って思っていたの。それで、高校二年の夏に友達が近くの男子校の男の子たちと敦賀に泊りがけで海水浴に行こうって話があって」
「そうか、ひと夏の経験だね」
「バカだったな、と今は思う。ひと夏から数ヶ月は続いたんだけど。四人と四人で行ったのよ。声をかけてくれた私の友達はその高校の男の子と付き合っていて、他の二人も相手を決めちゃって、私は残りの一人とカップルになったの。まあまあ、タイプの男の子だった。それで、夜になって、他の三組は始めちゃうし、私とその彼も始めちゃわないといけないような雰囲気にね、なっちゃって。まあ、いいか、なんて思って、初めてを彼と経験したの。ちょっと痛かった。彼も初めてで、二人共慣れてなかった。それから、冬休みくらいまで、彼と付き合って、毎週土日は私か彼の家でセックスするようになった。だけどね、だんだん、彼が、私のこと、抱いちゃったんだし、あれは俺の女、みたいな態度を周りにするようになって。それで彼が私にいろいろ求めだしたの。彼の好みで服のスタイルを変えろとか。長髪のワンレンボディコンでデートに来いとかね。彼は陸上をやっていて、美術なんて興味なかった。そういう私の意に沿わないことをいろいろ言われて、美術も尊重してくれない。私だって陸上なんて興味なかった。もうセックスだけが接点になってしまって、それで、すれ違いで別れちゃった。それ以来、三年間、男の子は当分いいかな、なんて思って」
「なるほど」
「でも、去年から、明彦のことは気になった。なんでかな?わからない。ああ、そうそう、内藤くんがさ」
「うん?」
「彼から告白されたんだけど、その気にならなかったからお断りしたのよ。彼は万里子的だからね。いいお友達のままでいて下さいって。他にも何人か、お酒の席で誘惑されたりしたんだけどね、その気にならなかったんだなあ」
「『いいお友達のままでいて下さい』なんて言われたらぼくなら死んじゃうなあ。でも、じゃあ、雅子は、なんでぼくにはその気になったの?」
「一つは女の直感よ。付き合った男の子は一人だけだったけれど、それ以来男の子を観察して、独占欲、所有欲、支配欲が強い男性かどうか、直感でわかるようになった。女性に対する態度が高圧的だったり、自分が正しいと思っていてやり取りが一方的だったり。支配欲が強かったり、相手の女性への依存心が強かったり、ね?明彦はそのどれにも当てはまらなかった」
「ぼくたち、そんなに話さなかったのに、ぼくのそういう傾向がわかったの?」
「うん、明彦はあまり喋らなくて、周りの雰囲気を慎重に見極めて、その時々の流れを乱さなかった。それから、乱すような人はそっと気付かれないように調整していたもん」
「気づかなかったなあ」
「女の子って、大なり小なりそんなものよ。それから、明彦は黙っているけど、私に興味があるのがわかったもの。キミの好意は感じられたのよ。あ!言っておくけど、キミ、万里子ちゃんにも多少好意を持ってるね?その点は浮気者なんだよね?違う?」
「まいったなあ。気付かれないようにしていたのに、雅子にはお見通しだったのか。確かに雅子が感じたように、ぼくは女の子を束縛はしない。これはぼくの女の子だ、なんて女の子を所有したりしないし、それを周りに言うことなんかしない。女の子はトロフィーじゃないんだから。万里子ちゃんは・・・ああいう子には男性全般は弱いでしょ?ハードルが低いというのか。万里子へのぼくの好意は、ぼくをかまってくれてありがとう、という感じかな?雅子への好意とは全然と違うよ。ところで、居酒屋を出てから、方言があまり出なくなったよね?もう、付き合っちゃたから方言いらなくなったってこと?」
「いや、あの、その、明彦の気を引くために方言出してたけどさ。ええやん?標準語で」あ!まずい、気付かれてた。「でもなぁ、やっぱり、明彦はうちの見込んだ男の子やわ。でもよ、女の子への支配欲が弱いとか、依存心が弱いって、逆に言えば、浮気者やない?うちに執着してくれへんさかい」
「だから、それもお話しようってことだよ。ゼロの執着心や依存心なんてありえない。雅子に心地よい、ぼくにとっても心地よい、お互いの執着心や依存心を見つけよう、ということ。それから、必要なら最低限の嫉妬心もスパイスにね」
「そんなことできるかしら?」
「そんなことをするために、雅子が期待していることをこれからして、その後どうなるかのケーススタディーをするんでしょ?」
「え?あ!明彦、まず、エッチから入るん?」
「いいえ、雅子、違います。お互い、二ヶ月半、悶々として、どう相手にアプローチするか悩んだんでしょう?だったら、お互い好きです、付き合いましょう、という確認は取れている。その上で、じゃあ、エッチしたらぼくらの関係がどうなるのか、様子を見て、執着心や依存心、嫉妬心がどうぼくらに発生するのか、観察しましょ、ということです。だって、雅子はそれを期待してないの?ほら?」
ちょっと、ちょっと、明彦、急に、サマーニットのプルオーバーの中に手入れてきて、直にうちの素肌に触りだした。あちゃあ、こいつブラのホックはずしたやん?慣れてるなぁ?あ、あかん、ゾクゾクしてまう。
「今度は顎をあげて目をつぶっていていいんですよ」って明彦言う。「雅子、口を半開きにして、舌を中に泳がせて」言われた通りにしたら、口密着された。舌絡ませてくる。ピチャピチャと舌吸われる。あちゃあ、ボーっとしてまうよ。
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