現実編04 火花
午後、校庭の片隅。
バスケットゴールの下で、静かに火花が散った。
偶然のような、必然のような。
涼真と雄大、二人の男が向かい合っていた。
「……偶然だな。ここ、人が少ないと思ったんだけど」
雄大が手の中でボールを回しながら言う。
表情は穏やか、けれど目は一切笑っていない。
「君に合わせたわけじゃないよ」
涼真はポケットに手を突っ込み、まっすぐゴールを見つめていた。
「でも、君もここに来るってことは……」
「君が彼女にとって特別だったのは、過去の話だろ?」
わずかに刺さるその言葉に、涼真の目が細くなる。
「それとも、取り戻すつもりか?」
一瞬の静寂。
そして、雄大は小さく笑った。
「もし君がそう思ってるなら……少しは警戒したほうがいいかもな」
その声の奥にあるのは、現・王としての揺るぎない自信。
彼は軽やかにボールを放ち、リングを正確に通した。
「君が彼女に触れた過去は否定しない。
でも——今、彼女の隣にいるのは俺なんだ」
その言葉に、涼真は唇の端をほんのわずかに吊り上げる。
「……そうか」
そして、風が吹く。
わずかな火種が、確かに熱を帯び始めた。
「なら、遠慮はやめるよ」
静かな声だった。
だが、その一言が二人の均衡を音もなく崩していく——。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます