第14話 お店の名前、大丈夫なのそれ!?
呆けた顔しながら、ふわふわ浮いているディアさん。
大きなおっぱいもふわふわ。はいはい、良かったですね。
『あ、あれ? さっきまで服着てたのに』
「欲望が解消されて、霊力が少なくなったからだと思いますよ」
『え、え、え? ど、どうすればいいの?』
「魔力と一緒なら、寝れば回復すると思いますけど」
『寝れば回復と言われても……はっ、まさか、そっち系の寝る!?』
「違います。頬を染めて私を見ないで下さい」
どうして寝るって単語が毎回そっち系になるのよ。
貞操概念ぶち壊れた世界に転移したお話だったっけ?
あー、なんか、ちょっと頭痛い。
「まったく……あ、そうそう、私の魔力を貸すことが出来るかもです」
『そんなこと出来るの?』
ウエストレストの森では、魔力の貸し借りは普通のことだ。
何をするにも魔法な私達は、優秀な人ほど魔力切れを頻発させていた。
その点、私は石魔法しか使えなかったから、魔力駄々余りの貯蔵庫扱いされてたんだ。
「ディアさん、魔法球に触れて下さい」
『……こう?』
「はい、では、流し込みます」
懐かしいなぁ、こうして魔力を他の人に渡すの。
この時だけは重宝されてたんだよなぁ。
ふふふっ、なんでかな、涙出て来ちゃう。
『あ、服が戻った』
「良かったです。じゃあ、ラギハッドさん呼んできますね」
『うん……これは、気をつけないといけないわね』
ぱたぱたぱたーっと走って、ラギハッドさんの所へ。
相変わらず木の精霊みたいな頭、覚えやすいし遠くからでも分かる。
「ディアさんが悪霊になった?」
「はい。私の魔法で悪霊退治したら、身体を乗っ取られちゃったみたいです」
「そうですか。良く分かりませんが、とりあえず様子を見に行きましょうか」
そうよね、こんなの言われたところで、理解出来るはずがない。
ということでお店へと戻る。ディアさんカウンターで一人佇んでて、なんか可愛い。
『あ、ラギハッド支部長』
「ディア君……本当に、立派な悪霊になってしまったんだね」
『立派な悪霊かどうかは分かりませんが、とりあえず霊体にはなってしまいました』
「ふむ、メオさんの話では、この店を商売繁盛させれば元に戻るとか?」
『確定ではありませんが、恐らく』
居心地が悪いのか、カウンターを拭き始めるディアさん。
もう完全に店員さんだね、ウチの看板娘になってくれそ。
「わかった、君は特務を遂行したに過ぎない。君が抱えていた仕事は僕達で片づけておくから、君は引き続き特務を遂行するように。それと、ここから出られないという事だが、君の家から持ってきて欲しい私物等あればすぐにでも対応するが、どうする?」
『あの、ペットの猫がおりまして、あの子を連れて来て貰えると助かります』
「そうか、分かった。他には?」
『今のところは、何も』
「そうか……ところで、だな」
……ん? ラギハッドさんの顔が赤い。
え!? あれ!? ディアさんの服が無い!
なんで!? 完全に全裸、見えちゃいけない場所が見えてる!
「なぜ、君は裸なのかな?」
『え? えひっ、ぃきゃあああああああああああぁ!』
あ、そうか! 話しながらカウンターを拭いていたから!
商売してる判定喰らって欲望が満たされてるんだ!
判定激アマじゃない! こんなので真っ先に洋服消えないでよ!
『ひっく……もう、お嫁に行けない……えぐっ……』
「魔力、多めに補填していいからね」
『うん、メオちゃんが裸になるぐらい、吸い取るね』
私はどれだけ吸い取られても裸にはならないのですが。
あ、でもあれか。あまり与えすぎると、コイツ本物の悪霊になるんだった。
はい、魔力球没収―。
『あ』
「魔力は腹八分、ね」
『ケチ』
「ケチで結構」
殺されたら洒落にならないの。
それに私殺しちゃったら、ディアさん正真正銘の悪霊になっちゃうし。
輪廻に戻れないなんてなったら、責任負いきれないよ。
「じゃあメオさん、ウチのディア、なるべく早く返して下さいね」
「出来る限り頑張ります」
「それと、書類も早めに提出して下さい。許可が下りるまで、物の販売は出来ませんからね」
「はーい」
商売することでディアさんが自由になるのに、全く持ってお役所仕事だなぁ。
ラギハッドさん、なんていうか、ちょっと淡泊な感じがするよ。
「ディア君」
『はい』
「一日でも早く戻って来てください。我が商工会には、貴方が必要なのですから」
『……はい、ありがとうございます』
「では。ああ、ペットの猫に関しては、他の女性職員に依頼しておきますね」
『ラギハッド支部長……』
あら? なんか、ちょっとイイ感じ?
お店を後にしたラギハッドさんを見送ると、ディアさんは眉を下げ、乙女なため息をついた。
「ラギハッドさんがいなくなって、寂しい感じですか?」
『え? ああ、ううん。あんな観葉植物みたいな頭をした人に、裸見られちゃったなぁって、ショックで』
全然いい感じじゃなかった。
辛辣過ぎて苦笑い。
私も覚えやすい頭だな、とは思ったけど。
『それよりも、お店開店に向けて動かないとよね』
「そうですね、未だに頂いた書類に手を付けていませんし」
『私が側で見てあげるから、とっとと片づけて明日には提出しちゃいましょ』
カウンターに書類を広げてっと……よし、頑張りますか!
えーっと、なになに? 賃貸契約に関する各条項は以下の通りである。
その一、もにゃもみゃみょーですやしゃうのすやぁ……zzz。
『寝ないの』
「あうっ……私、こういうの苦手。もう適当に名前書いちゃおうかな」
『典型的な詐欺被害者のパターンじゃない』
「いいのいいの、どう転んでも、私はここで商売するしか生きる道がないんだから」
『契約書なんて穴が開くほど読むべき書類なのよ? この文章だって私が頑張って書いたのに。あーあ、皆こんな感じなのかな、現状を知れて、ちょっとショックかも』
一番下の署名蘭だけ、しっかりと名前を書いてと。
「というか、この書類作ったのディアさんなんですよね?」
『そうだけど?』
「そして、このお店が商売繁盛しないと困るのも、ディアさんですよね?」
『うん』
「ということは、私にとって不都合な契約な場合、ディアさんが止める訳じゃないですか」
『……まぁ、確かにね。はいはい分かりました。一番下の署名だけ書けば問題ないですよーだ』
べーって舌を出しちゃって。なんだか可愛いの。
さてと、次はお店に関する書類か。
店舗名、取り扱う商品、概要、開店時間に閉店時間。
「店舗名か……」
『何にするか決まっているの?』
「メオ&ディア、とかにしちゃいます?」
『ダメよそんなの。私達が商品ならそれでいいけど、そうじゃない場合何を売っているか分からないでしょ? 出来る限り店舗名だけで、何を商いにしているか分かる名前にしないと』
店舗名だけで何を商いにしているか、確かにその通りかも。
本のタイトルとかも、そんな感じのが多いもんね。
「となると、メオの石材【ラスレーの黒正妃】取扱店、とか?」
『それは石材屋さんならアリでしょうけど、その石材って、最近噂になっている取引停止になった商品と酷似しているのよね。以前なら良かったでしょうけど、今はハッキリ言ってあまり良い印象を与えないわよ?』
酷似というか、そのものなのですが。
『そもそも、石材だけを取り扱うなら、こんな店舗もいらないと思うのよね。セメクロポ領主補佐官も絡んでいる案件だし、他にも何か取り扱う予定だったんじゃないの?』
「他にも……あ、そういえば鎧とか、日用品を取り扱う予定でした」
『日用品か、どんなの?』
「どんなのというと……私の石魔法を使って、絶対に壊れない日用品を作ろうかなと」
具体的には、何も案は浮かんでいない。
作ろうと思えば何でも作れるけど。
『そっか、石材を使うとなると結構重そうね』
「あ、大丈夫です。あり得ないほどの軽量化が可能ですので」
『そうなの? 軽くて壊れない日用品か、生活が楽になるって感じのコンセプトなのね』
ディアさん、しばらく悩んだ後、ペンを手に取り、すらすらと書き始めた。
『東の国にね、漢字っていう言葉があるんだけど、それってとても見栄えがいいの。漢字ひとつひとつに意味があって、可愛いって女の子の間で有名なんだけど』
「ふむふむ」
『それを踏まえて、漢字で生活が楽になる、生活が回るって意味を込めて、こんな名前はどうかな?』
書き上げた用紙を手に取ると、ディアさんは満面の笑みを浮かべた。
「それ、なんて読むんです?」
『ずばり!
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