第13話 ちくしょう! この巨乳幽霊が! 悪霊退散! 悪霊退散!
私に与えられた住居付き貸店舗は、噂通り同居人アリ物件でした!
なので、今から全部壊して、もう一度作り直したいと思います!
「せい、やああああああぁ!」
『きゃあああああああぁ!』
――きゃあああああああぁ!――
なんか声が二重で聞こえるけど、気にしない気にしない!
店舗中の壁や床をぜーんぶ引っぺがして、更地にしてやったわ!
事故物件に住まう地縛霊だかなんだか知らないけど、これで終わりでしょ!
「ふん! 魔法使いメオちゃんを舐めないでよね!」
完全決着! 店舗は木材を残して綺麗さっぱり無くなりました!
勝者メオちゃん! あはは! やったぁ!
『ねぇちょっと! すんごい痛かったんだけど!』
「あれ? まだ生きてる。お日様の光を浴びてるんだから、とっとと昇天しなさい!」
『出来る訳ないでしょ! 私生きてるの! 普通の商工会職員なの!』
「普通の商工会職員? 嘘つき! そんな人がふわふわと浮ける訳ないでしょ!」
青髪セミロングのディアさん、急に呆けた顔になって、自分の足元を確認した。
『浮いてる』
「そりゃそうでしょ、貴方幽霊なんだから」
『違うの! 私商工会職員なの! 貴方が入居するから、すぐに逃げないか確認しろってセメクロポ領主補佐官に言われたの! それで一人で先に潜入して、貴方を驚かして、それで……』
あれ、ディアさん、泣いてる。
「え? まさか本当に、普通の職員さんだったの?」
『そうよ! たった今、貴方に殺されたの!』
なんでそんなバカなことを……っていうか、私、殺しちゃった?
え、うそうそ、だって……え?
「あ、あの魔法で死ぬはずないよ! だってあれ、壁とか床を溶かしただけだもん!」
『じゃあこの状況は何なのよ! 私の身体は!?』
――説明してあげるね――
え、なに今の声。
ディアさんのおっぱい辺りから聞こえてきたような。
――私、この家に住んでいた幽霊なの――
『幽霊……本物?』
ディアさん、自分のおっぱいと会話してる。
――うん、本物。でも、お家無くなっちゃって、地縛する所が無くなっちゃった――
『確かに、もう店舗は無くなっちゃったけど』
――だから、貴方の身体に地縛することにしたの――
『は、はあああぁ!? そんな、だから私の身体が浮いているの!?』
――あ、ちなみに私地縛霊だから、貴方もここから出られないからね?――
『出られないって……あああ、本当だ! 敷地内から出られない! 見えない壁がある!』
ディアさん、見えない壁をバンバン叩いてる。
ふふふっ、何かの芸みたいで、ちょっと面白い。
『笑うな!』
「はい!」
『で、出られない! どうすんのよこれ! 上司に報告しないといけないし、家に帰ったら掃除やペットのお世話だってしないといけないのに! ねぇ幽霊さん! 私の身体返してよ!』
――無理、だって、貴方の身体ごと霊体化しちゃったから――
ほへぇ……そういうものなのね。初めて知った。
あ、ディアさん、涙目になって私を睨んでる。
『貴方のせいなんだからね!? 早くなんとかしなさいよ!』
「なんとかしなさいって言われても。そうだ、お化けさん、貴方ってあの家に取り憑いてたんだよね? だったら家を元に戻せば、貴方も元の状態に戻る、とかじゃないのかな?」
――ううん、私、この人を霊体化したことで、力を使い果たしたみたいなの――
「力を使い果たした?」
――だからもう、私は消えると思う――
「あ、そうなんだ。じゃあ万事解決じゃない。良かった良かった」
――一回でいいから、お店、繁盛させたかったな……新しい地縛霊さん、たまに殺戮衝動に襲われると思うけど、頑張ってね――
言うと、ディアさんのおっぱいから白い液体がにゅるんって出てきて、そのまま天に昇っていった。
へぇー、事故物件の霊でも天に上がって、輪廻に組み込まれるんだ。
あれ? なんか地面から沢山の手がにょきにょき出てきて、天に昇る液体を掴んだね。
あ、そのまま地面の中に吸い込まれていっちゃった。
やっぱり悪いことしたら輪廻には戻れないんだね。
珍しい物が見れた、良かった良かった。
『……で? 私はどうすればいいの?』
「どうすればいいと言われても。とりあえず、家を元に戻してみますか?」
魔法で形を変えた物は、戻すのは結構簡単だったりする。
岩や石を砂にした後、元に戻すのと要領は同じ。
「現状回帰」――――「〝
もにょもにょもにょーん、って感じで溶けた石が動き始め、元の店舗に戻った。
『本当に元に戻った。魔法って便利ねぇ』
「どうです? 元に戻れそうです?」
『うーん、特に、変化は無いかな』
変化無しか、どうすれば元に戻れるのかな?
さっきの幽霊さん、肉体を霊体化したって言ってたよね?
霊体化がそもそも何なのか、私にはさっぱりなんだけど。
「っていうか、ディアさん」
『ん?』
「どうして、私の首を絞めているのですか?」
ぎゅーっと締められて、結構苦しい。
『あれ? なんでだろ。あわわ、勝手に手がメオちゃんの首を絞めちゃう!』
「え? もしかして、身体支配されてる的な?」
『どどど、どうしよう! これあれだよね!? 一人殺したら本物の悪霊になっちゃう奴だよね!?』
そんなの知らないけど、首がヤバイ。
これ、ダメなやつだ。もうガッチリ掴まれちゃってる。
『ねぇ! なんとかしてよ! このままじゃ私悪霊になっちゃう!』
「なんとかして欲しいのは、こっちなのですが……!」
霊体だから触れないのに、ディアさんは私の首を絞められるのか。
一方的な攻撃方法で、ちょっとズルイ……なんて、言ってる場合じゃない!
これ、何とかしないと、私も地縛霊になっちゃう!
外に出て……は、ダメだ!
ディアさんの手が見えない壁にぶつかって、私も出られない!
「そうだ……さっき、悪霊が消える前に、お店がどうとか、言ってました、よね」
『え!? あ、うん! 言ってた! 一回で良いから繁盛させたいって!』
「つまり、お店に関係することをすれば、殺戮衝動が消える、とか?」
なんの根拠もないけど、このまま殺されるよりは試した方がいい。
とはいえ何の商品も並んでいない、何が出来るのかな。
家を元に戻した時に、店舗も元の状態に戻っている。
棚には当然何もない、あるのは入口付近のカウンターのみ。
首を絞められながらでも、歩くことは出来る。
何もない店で出来ること、お店の真似事、おままごと、お店屋さんごっこ!
「すいません!」
『はい!』
「これ、ください!」
カウンターに行き、手にしていたものを叩きつける。
『え、えっと?』
手にしていたのは、この店の鍵だ。
唯一、私のポケットに入っていたもの。
「タダでいいですよね!」
『え? あ、はい! 無料で差し上げます!』
「ありがとうございます!」
『こちらこそ、ありがとうございました!』
ディアさん、ご丁寧に両手を揃えて、深々とお辞儀をしてくれた。
やっと首から手が離れた、あー死ぬかと思った……。
『……あれ? 私の身体、自由に動く』
「ケホケホ、良かったです。多分、欲望が満たされたから、解放されたんだと思います」
魔力と同じ考え方でいいのかも。
欲望が満たされると、魔力は消えてしまう。
霊体の場合も同じ。欲望が満たされると、霊力が失われるんだ。
『でも、身体は元に戻ってないのね』
「多分、足りないんだと思います。あの悪霊の願いが、このお店の繁盛でしたから」
『……なるほど。ということは、このお店を流行らせることが、私の解放条件という訳ね』
「恐らく。なので、このまま一緒に頑張りましょうか」
私も、二十万枚の金貨を稼がないといけないのだから。
それはつまり、ディアさんの解放条件と同じこと。
『……わかった。でも、一度上司に報告しないといけないのよね』
「上司って、ラギハッドさんですか?」
『うん。私ここから動けないから、ちょっと呼んできて貰ってもいい?』
「別に構いませんけど……大丈夫ですか?」
『大丈夫も何も、報告するしかないでしょ』
「本当に大丈夫ですか?」
『何よ、その顔』
「だってディアさん、裸ですよ?」
『え?』
思っていた以上に巨乳。
ちくしょう、なんあのよアレ。
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