“一夜の過ち”のつもりだったのに

縞間かおる

第1話 だからシたよ

 ので……

 待ち合わせのカフェで開口一番

「あまり汚い所はイヤよ!」と言葉を投げた。

 そしたらカレ、「“汚い所”って店のトイレ?」

 って返して来た。


 例え“並み以上”の男だって、こう言う口の利き方をされたらその場で席を立つところだが……

 私の目の前の男は美しく可愛らし過ぎた。

 その自らの容姿に裏打ちされたオンナに対する自信がふてぶてしくて……憎たらしくも可愛い!!


 目の前のカフェラテのカップすらもどかしく、私はカレの手の甲に、さっきネイルアートを施したばかり指先を遊ばせた。


「私の事、そんなに安く見積もってるの?」


「佳奈ちゃんを試したのさ」

 明らかに年上の女の事を“ちゃん”付けで呼ぶこの男の名前は……ウソかホントか分からないが拓海と言う。


「ナマイキなんだね!拓海って!!」


 自分でも信じられないのだけど……私は会ったばかりのこの歳下の男にすっかり甘えている。


「別にナマイキになんてなりたくないけどさー こないだ、いきなり女子トイレに引っ張り込まれて、あの狭い中でスカートをたくし上げられたんだぜ! ドアにガンガン肘、ぶつけながらさぁ~ もしこんな現場押さえられたら100パーオレが悪人じゃん!」


「エーッ??!! じゃあトイレから逃げたの?」


「バカだなあ~逃げたら騒がれるに決まってんじゃん!」


「だったら どうしたの?」


たよ」


たんだ」


「うん」


 私、手の指をカフェラテのカップにくぐらせて中身をコクリ!と飲んだ。


「じゃあ私とは?」


「佳奈ちゃんは騒いだりしないだろうからなあ」


「……しないの?」


「とんでもない!!オレのとっておきにする!」

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