箱庭の庭師~念願の庭を手に入れたので、思う存分に楽しみます!~

こふる/すずきこふる

第1話 勧誘


「おい、そこのお前。異世界転生して神の使徒にならないか?」


 コンビニ強盗に巻き込まれて死んだ直後のこと。

 呆然と自分の死体を見下ろしていた春花は、芸能人が消し飛ぶほど恐ろしく美形で神々しい青年に声をかけられたのである。


 暗がりの中でも輝く金髪、若葉色の瞳は鋭利で冷たい印象が残る。着ている服はアニメやゲームキャラクターの衣装のような派手さがあり、死んでいてなお、バラエティー番組のドッキリを疑ってしまう。


「異世界? 神の使徒?」

「そう。オレは、お前の世界でいうところの異世界の神だ。我が世界は発展途上でな。開拓者を募集しているのだが、なかなか人が集まらないんだ……」


 深いため息をついた後、ちらりと春花に目を向ける。


「少し記憶を覗かせてもらったが、お前、ガーデニングとやらに興味があるのだろう? オレの使徒になれば好きなだけガーデニングができる環境……強いて言うなら家と土地を無償で用意しよう!」

「家と土地⁉」


 魅力的な提案に胸がときめいてしまう。


 春花は俗にいうスローライフ系のゲームが好きだった。

 街を整備したり、家のガーデニングをしたりして、完成した街並みをゲーム内で歩くのが春花の楽しみである。


 特にガーデニングは現実でもやってみたいと思う願望が生まれたが、アパート暮らしで、それも社畜の春花にはベランダで植物を育てる暇もない。手入れが少ない観葉植物すら、小さな羽虫を湧かせてしまう始末。


 いつかは庭付きの一軒家に住み、思う存分に楽しんでみたいと思っていた春花にとって、願ってもない申し出。


 しかし、春花はハッと我に返って首を横に振った。


「いや、開拓とガーデニングは全然違いますけど⁉」

「大丈夫だ。必要な能力はくれてやる。それに納期やノルマがあるわけでもないし、納める税金もない。家賃もない。さらに開拓した分だけお前の土地として認めてやろう」

「何その墾田永年私財法みたいな権利⁉ やります!」


 こうして春花は異世界に転生することを決めたのである。


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