2ブレス<<< オレはイケメンガール!

青水晶の振動波クリスタルヒットウェイブですよ!」


巨大ロックリザードの足元まで跳んだオフィリア。

足首に掌底を当てると岩の肌を広範囲にどかんと粉砕する。

超音波だか周波だか知らないけど振動で物質を壊す技だ。

恐ろしい。


「きゃあ!?」


片足を破壊されて、悲鳴をあげる樹上の女に喰いつこうとしてた牙がぎりぎり空を咬む!


「ナイスオフィリア!

サクラコ!」


「いくわよ!

一角獣の背面蹴ユニコーンスピンシュート!」


サクラコの蹴りに乗って空高く飛ぶ!

巨大ロックリザードの顔面ど正面までぴったりの位置♪


「へへ♪

ナイスキックだぜ!

深紅拳の咆哮クリムゾンナックルブレス烈火!」


空を舞うオレを喰おうと大口開けたロックリザードの喉を目がけて炎の拳をぶっ放す。

食道を突き抜けて胃からその先まで行き渡る烈火が内側から焼き尽くす。

あまり硬くない関節部分から炎が吹き出すとその巨体が派手な音を立てて地面に倒れた。


残っていた普通にでかいロックリザードが慌てて逃げていく。


「やったわね!」

「アナの炎は激しいんですよ」


「へへ♪ まあな♪

よし! みんな!

出てきていいぞ!

解体と回収手伝ってくれ!」


コンテナが付いていないタイプの運搬用トレーラー3台の後ろに隠れていた仲間たちが次々飛び出してくる。


「アナ! すごいね!」

「ありがとうアナちゃん!」

「さすがわたしたちのイケメンガール!」


歓声を上げながら作業を開始する10代半ばの女の子たちが30人ほど。

隠れている間もしっかり応援してくれてる大切な仲間たち。

ハイタッチしたり、投げキッスしてくれたり、体を叩いたりして駆け抜けてく。

女の子たちがヘルメットをしてなけりゃほっぺにちゅ〜してもらえるのに残念だ。


彼女たちはオレたちと違って頭のてっぺんからつま先まで分厚いアストロスーツを着込んでいる。

腰には銃を携えて、太ももには圧縮酸素シリンダーが装着されている。

まあ宇宙服みたいなもの。


「へへ! バトルならオレにまかせろ!」

「最初はめんどくさそうにしてたくせに!」


「アナは相変わらずみんなに大人気ですよ?」

「みんなオレの女だからな!」

「またそんなこと言って!

ばっかじゃないの!」

「サクラコがバカって言ったあ。

くすん。

サクラコだってオフィリアだってオレの女だもん!

ぐすっ」


無意識に涙をためて眉尻を下げつつ拳を目尻に当てて主張する。


「か、勝手にあんたの女にするな!」

「わたしはアナの彼女でいいんですよ♪」

「わ、わたしは違うんですからね!」


「サクラコはアナを独り占めしたいんですよ?」

「そんなわけないでしょ!

ふん!」


「無理してるんですよ?」


「無理してない!

せっかくでかいの仕留めたけど全部は持ち帰れないわね」

「きのこ好きなトカゲが大繁殖でもしたんですよ?

こんなのおかしいくらいに初めてなんですよ」


「ほんとやたらと多かったわよ。

生息地からわざわざ食べにくるくらいだものね?」


「それだけきのこが食べたかったんだろ。

トレーラーに載せるだけ載せればそこそこいいお金になるだろ!」


「普通に食べれたらいいんですけどね?

そしたらうちの食料庫も少しはマシになるんですよ?」

「しょうがないよオフィ。

ロックっていうだけあって硬くて食べれたものじゃないんだから」


肉が硬すぎて普通は食べれないけど特殊な加工をすれば食用になるし、硬い外皮とかは素材としてそこそこ価値がある。


「オレは食えるけどな?」

「あんたは別!

こんな硬いもの食べれるなんてあんたの歯がバカみたいに硬すぎるのよ!」


「サクラコがまたバカって言ったあ。

オレ、バカじゃないも〜ん。

ふえ〜ん」


「ああ!? またこんなくらいで目に涙を溜めるんじゃないの!

まったくうちの稼ぎ頭のくせにほんと泣き虫なんだから!」


「だってぇ〜。

くすん。

それはともかく、おーい!

降りてこいよ!」


「そ、そんなに簡単に降りれないわ。

きゃあああああ!」


「へ?

うわあ!?」


樹の上で足を滑らせてるし!

慌てて落ちてきたヒトをお姫様抱っこでキャッチする。

丸いヘルメット、透明なフェイスシールドから覗く桃色の瞳に桃色の髪にはとても見覚えがあった。


「あなたたち相変わらずね?」


お姫様抱っこから降りる女の子。


「シルヴィア!

ロックリザードに襲われたからってあんなとこに逃げたら危ないだろ!

無事でよかったな!」

「助けてくれてありがとう。

礼は言わないわ」

「いま思いっきり言ってたよな?」


「……礼は言ってない。

ありがとうって言ったのよ」

「お前も相変わらず変なやつだな!

まあそこが可愛いとこだよな!

オレのシルヴィアは!」

「……バカ言わないで。

あなたの女じゃないわ、わたしは」


「シルヴィアがバカって言ったあ〜。

ぐすん」

「またすぐに涙を溜めるんだから。

あんたはほんとにバカねえ」

「今度はサクラコが〜」


「ふふふ。まあまあ落ち着いてくださいよ?

シルヴィア、また一人で資源採集にきたんですよ?」

「久しぶりねオフィリア。

ええ、そうよ。

うちのシェルターにはあなたたちみたいな化け物はいないから。

資源採集はわたし一人で十分よ」


シルヴィアも分厚いアストロスーツを着込んでいる。

腰には銃を携えて、太ももには圧縮酸素シリンダー。

背中にはでかくて運搬用の四角いバックパックが装着されている。

丈夫な軽い樹脂でできてる定番の採集装備だ。


「化け物ってあんたね!

わたしたちだってヒトよ!」

「どうかしら?

だってドラゴンじゃない」


オレたち三人はドラゴンと呼ばれる存在だ。

体からいろんなものが生えるんだから確かに化け物っちゃ化け物だよな。


「そんでシルヴィアは十分稼げたのか?」

「ええ。ほら」

「マッシュルームエリクサー!?」


物語に出てくる万能薬エリクサーと称されるほどの回復効果を持つきのこがシルヴィアの手の平に乗っていた。


「バックパックにいっぱいよ」

「ほ、ほほほ、ほんとに!?

なんであんたはいつもそんな希少な資源を見つけられるの!?」

「勘かしら?」


「あんたの方がよっぽど化け物だと思うのは気のせい!?」

「あは♪

シルヴィアはいつもすっごいな!

さすがオレのシルヴィア!」


はぎゅっと全身でくっついて両腕を回す。


「きゃっ! すぐに抱きつかないの。

あのねえ。

いつからアナの女になったのかしら?」



☆次回<<< オレは下着をつけない!

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