第4話 慰霊の神楽コラボ
※深緑の朱雀と慰霊の神楽のコラボとなっております。
葉月りくさんの作品。
慰霊の神楽はこちら。
https://kakuyomu.jp/works/16817330668094316837
――――――――――――――――――――
それはある日の放課後、カラオケに神邏達が来ていた時の事だった。
「……そういえば数ヶ月くらい前の事覚えてるか?」
神邏はふと、ルミア達に問う。
ルミアは笑顔で首をかしげる。
「なんですか?」
「前にカラオケ店で会った人たちの事だ。気づいたら店も変わってたような、謎の現象……」
「あ、神邏くんが朱雀の事思い出す前の……って、あ」
ルミアはこの場にそれらの事情を知らない友人もいるため口を塞ぐ。
そう、あれは今から数ヶ月前……
♢
その日も神邏と友人達はカラオケ店に立ち寄っていた。
だがその来店した時、なにやら変な違和感を感じていた。それがなんなのかわかったのはその後の事だ……
「とりあえず注文終わったな! よし歌うぜ!」
友人の北山がまずトップバッターを飾る。
神邏、ルミア、北山、須藤、夏目、安野のメンバーで来てる。
人数が多いため、一人一人が歌える時間はわずかだろう。
(まあ、俺は歌うつもりないが)
と、神邏は注文したクリームソーダーを待つのみだった。
早速歌い出す北山だったが……
「ご注文の品お持ちしました~」
店員の来訪。これで歌を止める者と止めない者とで別れるだろうが、北山は気にしない男だった。
しかも大音量で。
「失礼します~」
店員はその場を去るが、たまたまドアがちゃんと閉まらず、再び開いてしまった。
皆は注文した品に夢中て気づいていなかった。
「~!」
北山の下手くそな歌が大音量で外にも響いていく。
「相変わらす下手くそな歌、歌いやがって」
夏目がポテトをくわえながら呆れる。
「なあシン、こいつの歌の時はトイレにでも行くのもありだぞ?」
「なっちゃん、さすがにそれは」
「神邏くん! あーん!」
隣に座るルミアが口を大きく開けるので、箸でポテトをつかみ食べさせる。ルミアは満足そうに笑う。
そして気づく。
「……あ、ドア開いてる」
「こりゃまずいな。北山のリサイタルが外に……」
急いで閉めようと思った矢先だった。二人の男女が神邏達の部屋に勢いよく入り込んで来たのだ。
男は銀色に輝く瞳をもつ、黒髪短髪の青年。
女は燃えるような赤い瞳に、黒いロングヘアーのかわいらしい女の子だった。
どちらも少し怒った様子。
神邏は察して謝ろうかと思ったが遅かった。
「うるせえ!!」「うるさいわよ!!」
やはりクレームだった。当然の事だ。
「優司の歌が聴こえねえだろうが!」
「そうよ! 音痴な大きな歌が優司くんの素敵な歌声を書き消してるのよ!」
どうやら友達の歌が聞こえなくなるほど、北山の歌声が騒がしかったようだ。
こちらが100%悪い。そう思った神邏は即座に立ち上がり、二人の前に立って頭を下げる。
「……すいません。ドア開いてるの気づかなくて」
素直に謝られたためか、二人は互いに顔を見合せ、少し呆気にとられる。
「ごめんなさ~い」
「悪いな」
「すんませ~ん!」
「ゴメンでゲス」
みんなも一斉に謝りだしたので二人も少し怒りが薄れるような様子を見せて……
「ま、まあ……」
「わかれば……」
和解……するはずだったのだが、
「だああ! せっかくのおれの歌邪魔しやがって! なんだてめえら!」
北山がそれをぶち壊してしまう。
「あ?」「は?」
「いちいち歌聞こえなかったくれえで殴りこんでくんなよ!」
いや、殴りこんではないだろというツッコミがみんなの頭に浮かんだ。
「当人は謝罪もなしってか」
「最低……」
二人に睨まれる北山。だが負けない。
「てめえらもおれの歌下手だの言い掛かりつけたろうが! どっちが最低だよ!」
「言い掛かりじゃねえだろ……」
ボソリと夏目は呟く。
北山は因縁つけるかのように二人の前に立つ。190センチは越えてる北山に対し、二人は20センチほど低い。だがまったく臆さずに睨む。
「やめろ北山……」
と、神邏が止めようとすると……
北山は女の子の方を見て一言。
「かわいい……」
みんなきょとんとする。
北山は先ほどまで文句をつけていた女の子の容姿が自分好みであったため、手のひらを返す。
「なあなあ君名前なんて言うんだ?」
「……」
女の子は黙ってる。
まあ、今の今まであんな態度をとっていたんだ。当然だろうと神邏は思った。
――すると。
「古白さん、大鳳さんどうしたんですか? 秀治くんとずっと待ってるのになかなか戻ってこないで……」
部屋の外の扉は開いたままだったため、誰かがこちらの様子をうかがってきていた。
察するに、この二人の知り合い……?
「優司くん!」「優司!」
二人はその人物に反応した。
「ごめんね! ちょっとうるさかったから文句言いに言ってて……」
「せっかくの優司の歌聞けなくなっちまうと思って」
優司という少年に説明すると……
「いや、だからって無断で入るのはよくないですよ。すいません皆さんお騒がせして……」
優司の謝罪に、神邏は即座に……
「あ、いえ……騒ぎすぎたこちらに落ち度ありましたし」
頭を下げて謝罪。
実際騒いだのは北山、そして二人と一触即発な状態にしたのも北山。神邏が謝罪する必要はない。
だがそんな彼に少し揉めてた二人も感心する。
「彼……いいオーラしてるわね」
「だな。なんか優司に少し似てる。少しだけどな」
すると北山が前に出てきて、
「よし! これで一件落着! 仲良しになったってことで! みんなで歌わないかい? なあ大鳳ちゃん!」
優司が大鳳さんと呼んだことで名前が北山に知られてしまった。
いきなり馴れ馴れしいと思った彼女だが、優司は少し話してみたそうだったため、ここは我慢する。
「秀治くんも呼んできますね」
♢
神邏達は偶然あった四人、
四人は優司を中心とした感じで、神邏達から見ると、主と従者のように見えた。
このご時世にそんなものあるのか? なんて疑問に思ったので、そう見えるだけだろうと思った。
別に優司に敬語を使ったりしてるわけではない。でもなんとなく、そう思えたのだ。
「なんだこの歌……聞いたことねえぞ」
古白が、神邏の入れた曲に食いつく。
「こんないい歌……あったのか」
「え、これ結構有名ですよ」
「そうなのか? 美波さん……だったかな。ちょっと詳しく……」
そして大鳳はというと、北山がちょっかいださないように、女子組の中にいたのだが、安野が歌いだしたアイドルソングに食いつく。
「何その曲! 初めて聞いたわ!」
「ええ!? 今をときめくスーパーアイドルでゲスよ!?」
「嘘……そんなはず……」
そんな二人を見て神邏は少し首をかしげる。
別に世間に疎いような二人には見えない。でも誰もが知ってそうな曲をまるで知らない。少し違和感を感じていた。
「優司くん、どうやらこの人達……」
秀治という少年が、こそこそと優司に話しかける。彼は頷く。
「うん。そうですね。その証拠に……」
優司は神邏を見る。
「……朱雀……」
「え? 何? 優司くん」
ここで大鳳朱雀が反応する。彼女の名前は朱雀だから。
「あ、大鳳さん、違うんだ。彼が……」
「……うん。私も気づいてた。私と同じ朱雀……いや、朱雀そのもの……」
朱雀そのもの? 神邏は何のことかわからなかった。
「こっちの朱雀は男なわけか。じゃあこっちの白虎が女って事もあんのかな」
と、古白が言う。
「じゃあ青龍も……」
続けて秀治も。
急に何の話だろうかと思う一同。
「驚いたなしかし。別の世界の住人……それも四聖獣がいるなんてな」
「そうね。明確には違うのに、彼、私に加護を与えてくれてる朱雀そのものにしか見えないもの」
神邏を見て、話を進める四人。
この当時の神邏には、その意図がわからなかった。
「みなさん熱い視線はそこまでにしてくださいね~」
ルミアが神邏を引き寄せ、四人を牽制。
「あ、違うのよ。別にそういう意味では」
「そうそう、こいつそもそも彼氏いるし」
「古白!」
朱雀に彼氏がいるという情報、それは北山に衝撃を与えた。
「そんな! 朱雀ちゃん彼氏がいるとか聞いてないぜ!」
「……そりゃ言ってないからね」
「ど、どんな奴? おれよりいい男?」
「当たり前でしょ」
「ガーン! な、なあ、ワンチャンない? き、キープくんでもいいから」
「ダメ。そもそもあなた気が多いタイプでしょ」
図星だった。惚れっぽい北山に何言われても信用などできぬだろう。
ワイワイと話はつづく。
初めて会った人達だというのになぜだろうか? 神邏は疑問に思った。気が合うというか、波長が合うというか……
「美波くん、ごめんね割り込んでしまいまして」
優司が改めて謝罪してきた。
「い、いえ……みんなも楽しそうですし、自分も……」
「僕もだよ。三人もさ、なんか学生に戻ったみたいで……いや、厳密に言うと学生なんだけど……」
「――?」
「信じられないと思いますけど、僕達は君たちと同じ世界の住人じゃなくてですね」
……神邏はその言葉に嘘はないと思えた。なぜかはわからないが……
「そこでは……なんというか、悪霊のような存在と戦ったりしてまして」
「……そうなんですか」
「だからこそ、いい息抜きになったというか」
本当にこの人は、従者と思われる三人の事を大事に思ってるんだなと、肌で神邏は感じた。
とても心の優しい、素敵な人だなと、初対面でもわかるほど……慈愛のような優しさを感じる。
これ程までに優しい、心の清らかな人物を今だかつて見たことはない。
自分自身も優しいなどと言われたことがあるが、この神守優司という人を見てからでは、自分など優しい人物だなんて口が裂けても言えないだろう。
こうして少し話しただけなのに、なぜかわかってしまう。それだけ素晴らしい人なんだと思う。
彼らが漏らしてたオーラというものが、それを感じさせてくれたのかもしれない。神邏は一人納得する。
「君も、充分優しい男の子だと思いますよ」
神邏の心を読んだかのように、優司は微笑んだ。
「そうね。優司くんには負けるけど、そうはいないと思うわ君の優しい心」
朱雀も頷くと、神邏の前に置いてあったクリームソーダーに目がいく。
「あら、甘いもの好きだったり?」
「え、ええまあ」
「じゃあ今度みんなで甘味処いくのもいいかもしれないわね」
「いいね」
優司ものってくる。
「なら今度は舞衣さん達も呼んでこようか」
「舞衣さん……?」
「恋人というか、婚約者というか」
「「えええ!」」
神邏以外のもの達が声をあげて驚く。自分達とそう変わらない年齢の男性に婚約者がいると聞いて驚いたからだ。
「どんな人なんですか?」
「告白の言葉とかは?」
詰め寄る友人達。それを抑える朱雀達。
「こらこら! 優司くん困らせない!」
「そういうのはオレ達が教えてやるから」
「え!? 古白さん!?」
恋ばなは苦手な神邏は遠くでその様子を見物するだけだった。
それからは皆で好きな曲を歌ったりした。
優司達の歌う歌もまた、神邏達は聞いたことがない歌だった。
偶然かもしれない。だが、互いに歌ってるのは有名な歌。それを知らないということは、確かに別の世界の住民なのかもと、少し納得してしまう。
優司が演歌を歌うと少しからかう北山を全員でしめたり、あまりにも歌の上手い古白と朱雀に歓声がわく。
一方、音程のずれたルミアの歌声には笑いが起こったり、北山の歌うタイミングで談笑始めたり、歌うのが苦手な神邏にはデュエットしろと意見が出たりした(デュエット相手は取り合いになった)
――そして、
「そろそろ時間みたいだ」
店員から10分前の連絡が来たようだった。
「じゃあ僕達は戻るよ」
優司達は席を立つ。
神邏は軽く頭を下げる。
「……楽しかったです。ではまた……」
「残念だけど、または厳しいかもしれませんね」
「え?」
「いや、なんでもないですよ。じゃあ美波くん、また会うときがあれば……」
優司が部屋を出ると、続けて三人も。
「楽しかったです! また!」
「同じ朱雀として、少し気に入ったわ。また会えるときあれば楽しみにしてるわね」
「教えてもらった歌、今度はオレが聴かせてやるからな。楽しみにしててくれ」
秀治、朱雀、古白の三人も部屋を出てった。
――すると、軽い地震が起きた。
「おわ!? な、なんだ?」
北山が衝撃で転けそうになる。
神邏ははっとして、部屋を出る。そして優司達のいたと思われる部屋を見るが……
――そこは無人だった。
♢
――現在。
「あの時は何の事かはわからなかったが……あの人達は、俺が朱雀と気づいてたみたいだった」
「不思議な方達でしたよね。本当に別世界の人たちだったんでしょうか?」
「パラレルワールド……みたいなものなのかもしれない。人ではあっても人じゃない雰囲気があったし」
夢だったのか幻だったのかはわからない。でも、あの四人は確かにいた。そう思えた。
何が原因だったのかは定かではない。別世界の朱雀同士が、同じ地点でたまたまカラオケをしていたから……だったりするのかもしれない。
何かが引かれあったのかもしれない。
「また、会えるだろうか」
「会いてえな! 朱雀ちゃんに!」
と、北山。
「おいおい……全員に、だろ」
「はは」
「そうだな……その時のために……」
神邏は曲を調べだす。
「皆さんが好きそうな歌を……調べておこうかな」
――終わり。
このお話の、優司視点の後日談を葉月りくさんが書いてくださりました✨
ぜひご覧ください!
https://kakuyomu.jp/works/16818093091750467873/episodes/16818792437969484319
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます