ストーカー心理の危うさと人間味、尻すぼみの結末が印象に残る現代的小説
- ★★★ Excellent!!!
『狂愛日記(抜粋)』は、一歩間違えば重い犯罪や悲劇に転がりかねない「ストーカー的視点」を、あえて軽妙な日記体で描き切った、かなり“攻めた”短編です。
主人公の執着や独善的な正義感、妄想の暴走――それがリアルで読者に不快感や緊張感を与える一方、語り口にどこかユーモアと客観視もあり、物語としての引き際(尻すぼみの終わり方)が逆に後味を良くしています。
この「尻すぼみで終わる」結末が、現実の“狂気”とフィクションの“安全圏”をうまく分けているようにも感じます。下手に暴走したまま終わるよりも、現代的な読者の“共感と警戒”を両立させる着地として好感が持てました。
ただし、題材そのものがストーカー行為や偏った愛情なので、人によっては(特に被害体験がある読者には)刺激が強く感じられるかもしれません。
とはいえ、エンタメとして「人間の闇や愚かしさをユーモラスに、かつ冷静に描く」姿勢は新鮮で、現代のネット社会や人間模様を考える上でも意義のある作品だと思います。
人を選ぶ題材ではありますが、文学や心理劇、ダークな人間描写が好きな方には十分おすすめできます。
“読むことで、他人の闇を安全に体験できる”作品――という意味で、一読の価値ありです。