第7話 拡散の嵐

桜ノ宮学園の校則が週刊誌で全国に知れ渡った後、事態はさらにエスカレートした。ワイドショーがこの「異常な学校」を取り上げ始め、動画投稿サイトには生徒たちの姿を捉えた映像が次々とアップロードされた。校内の日常が晒され、特に罰則を受けた女子生徒たちは、羞恥と恐怖の新たな波に飲み込まれていった。


ワイドショーの襲来

ある朝、高校2年生の清水美緒が登校すると、校門前にテレビ局の取材班が待ち構えていた。マイクを持ったリポーターとカメラマンが、生徒たちを見つけ次第駆け寄ってきた。美緒は友達と一緒にいたが、リポーターが彼女に近づき、突然質問を浴びせた。


「君、この学校の校則で下半身裸になったことあるよね?どんな気持ちだったか教えて!」リポーターの声が響き、カメラが彼女を捉えた。美緒は顔を赤らめ、「やめてください…」と呟いて走り出したが、背後でカメラが追いかける音が聞こえた。


その日の昼、ワイドショー「朝のトピック」が放送された。画面には「桜ノ宮学園の異常な校則」と題され、美緒が校門前で逃げる姿が流れた。キャスターが「これが現代の教育現場なのか」と大げさに驚き、コメンテーターが「規律のためとはいえ、これはやりすぎですね」とコメントした。映像には、別の日に下半身裸で歩く女子生徒の姿も映り、全国の視聴者に晒された。


美緒は放課後、友達と教室でテレビを見ていた。「うそ…私、映ってる…」彼女は震える声で呟き、頭を抱えた。友達が「気にしないでよ、美緒。こんなの学校が悪いんだから」と励ましたが、彼女の心は羞恥で一杯だった。「全国の人に見られた…もう終わりだよ…」


動画投稿サイトの波

大学3年生の山崎彩乃も、別の形でメディアの餌食となった。彼女が全裸でキャンパスを歩く姿を撮影した動画が、動画投稿サイト「ViewTube」にアップロードされた。投稿者は匿名のユーザーで、タイトルは「桜ノ宮学園の全裸女子大生!校則がヤバすぎる」と過激なものだった。


動画は瞬く間に再生回数を伸ばし、数日で100万回を超えた。コメント欄には「これは酷いな」「でもちょっと面白い」「スタイルいいね」と様々な反応が並んだ。彩乃が図書館で勉強しているシーンや、キャンパスの通路を急いで歩く姿が鮮明に映っており、彼女の顔も隠されていなかった。


彩乃は友人に教えられ、動画を確認した。画面に映る自分の裸体を見て、彼女はスマホを落とした。「やだ…こんなの…」涙が溢れ、部屋に閉じこもった。家族が「テレビで見たよ。大丈夫?」と心配そうに訪ねてきたが、彼女は「放っておいて」とだけ答え、布団に潜り込んだ。


コメント欄には、知らない人からの嘲笑や好奇心が溢れていた。「これ学校どうなってるの?」「恥ずかしいだろうな」「もっと見たい」と書かれ、彩乃の羞恥は底なしに広がった。彼女は「もう外に出られない…」と呟き、震えが止まらなかった。


学校内の動揺

ワイドショーと動画の拡散は、学園全体に波紋を広げた。校門前には連日テレビ局のスタッフが陣取り、罰則を受けた生徒が現れるたびカメラが回った。高校1年生の田中玲奈が下半身裸で校庭を歩く姿がワイドショーで放送され、大学4年生の佐藤美穂が全裸で講義に出る映像がViewTubeにアップされた。


生徒たちは怯え始めた。「次は私かもしれない…」「撮られたら終わりだよ」と女子たちが囁き合い、男子の一部は「これで有名になったな」と笑いものにした。しかし、その裏で好奇心から動画を見に行く者も少なくなかった。


玲奈は放送後、教室で泣き崩れた。「全国に映っちゃった…恥ずかしくて死にたい…」友達が「玲奈のせいじゃないよ」と抱きしめたが、彼女の心は癒えなかった。美穂も動画を見た後、大学を休んだ。「もう耐えられない…」彼女は部屋で膝を抱え、涙を流した。


教師たちは対応に追われたが、校長は「校則は変えない」と頑なだった。ワイドショーでは「学校側の責任は?」と批判が上がり、ネットでは「校長辞めろ」と声が高まった。しかし、メディアの過熱は止まらず、生徒たちは晒され続けた。


帰宅路の恐怖

メディアの拡散は、帰宅路にも影響を及ぼした。美緒が下半身裸で駅に向かうと、通行人が「テレビで見た子だ!」と指をさし、スマホで撮影を始めた。「やめて!」彼女は叫んで走ったが、背後で「ワイドショーの子だぜ!」と笑い声が響いた。


彩乃も全裸でキャンパスを出た瞬間、テレビ局のカメラに囲まれた。「感想を一言お願いします!」リポーターがマイクを突きつけ、彼女は「撮らないで…」と呟いて逃げた。だが、その映像も翌日のワイドショーで放送され、彼女の羞恥はさらに深まった。


玲奈と美穂も同様だった。玲奈は電車の中で「テレビの子だ」と囁かれ、スマホのシャッター音に怯えた。美穂は駅までの道で動画投稿者らしき若者に追いかけられ、「もっと撮らせてよ!」と叫ばれた。4人とも自宅にたどり着いた時、涙と疲労で崩れ落ちた。


苦しみの中で芽生えるもの

その夜、美緒は友達とLINEで話した。「もう学校行きたくない…」友達が「でも、美緒なら乗り越えられるよ。私も一緒に戦うから」と返し、彼女は少し考えた。「そうだね…このままじゃ終われない…」


彩乃はゼミの仲間と電話で語った。「動画、みんな見てるみたい…恥ずかしくて死にたいよ」仲間が「学校がおかしいんだよ。彩乃が悪いんじゃない」と励ますと、彼女は「何か変えたい…」と呟いた。


玲奈と美穂も、それぞれの場所で小さな決意を固めた。玲奈は「恥ずかしいけど、負けたくない」と自分に言い聞かせ、美穂は「この校則、どうにかならないかな」と考えた。


ワイドショーと動画投稿サイトによる拡散は、彼女たちを極端な羞恥に追い込んだ。しかし、その苦しみの中で、かすかな抵抗の意志が芽生え始めていた。










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