ぐるぐる回って、堕ちていく

  • ★★★ Excellent!!!

 一読して、その無慈悲さ、容赦のなさ、救いのなさに「これこそ暴力だ」と感じ入ります。わたしが「こう書いてみたい」と願う類いの過酷さ、残酷さなのですが、なかなか書けない。これを書ける人は無条件に「いいなあ」と感じてしまいます。
 そしてこの閉塞感。どこにも行き場がなく、ひたすら同じところをぐるぐる回り、そして堕ちていく。生き方を変えようと思っても、同じ失敗を繰り返す主人公は愚かですが、その愚かさはわたしたちみんなが持っているものです。それだけに主人公の独白は身に迫るものがあります。
 その果てに待ち構える終局、避けられぬ破綻。それは果たして罰なのか、それとも救いなのか? もしかしたらその両方かもしれず、あるいはどちらでもないのかもしれない。何にしても主人公の絶望のループはここで終わりですが、別の誰かはまだ悲惨なループのただ中にある。その残酷な構図にめまいがします。
 いずれにせよ、これは見事なノワールで、しみじみと味わいました。おすすめです。