第7話 あの岩壁に向かって
中間テストが終わった次の日の朝、緊急で全校集会が行われた。
いつもなら周りに一人二人こそこそ話しているが異様に静まり返っていた。
校長が壇上に立った。
いつもより重々しく暗い顔をしながらゆっくりと話始めた。
「今日は皆さんにとても悲しい話をしなければいけません。
もう、知っている人もいると思いますが、3年A組の華石ひかりさんが事故で頭を強く打ちお亡くなりました。
亡くなった場所は足元が滑りやすく…」
え・・・・?
死んだ?
嘘だろ?
まだちゃんと謝れてないのに?
やっと、テストが終わって行こうと思ってたのに?
一瞬で血の気が引いた。
季節的に寒くないのにものすごく寒く感じた。
体がガタガタと震えが止まらなかった。
立っているのがやっとだった。
それ以降、その日は授業の記憶がなく、気が付くと家に帰って来ていた。
顔を上げると玄関ではお母さんが立ってた。
「おかえり、いつの間に帰って来てたの?
今日、学校で聞いたよね?3年生のひかりっていう女の子が亡くなったって…可哀そうね」
「…」
「でもなんであんなわざわざ危ない場所で遊んでたんだろうね?雨が降った後に足を滑らせて頭を岩にぶつけちゃったみたいよ。お願いだからそう言うあぶない場所で遊ばないでね」
「…うるさい」
「え、小さい声でよく聞こえなかっ…」
「うるさいって言ってるんだよ!
ぼくは約束したのにあの場所で一緒に三葉虫の化石を掘るって!」
「ちょ、ちょっと、落ち着いて・・・・そんなに大きな声上げてどうしたのよ?」
「うるさい!うるさい!うるさい!
普段は勉強しろとかばっかり言うくせに!
お母さんがひかりさんと遊ぶのを禁止しなければ!
こんな事にはならなかったんだ!
気に掛けるふりするな!」
「そんな口の利き方ないでしょ…ひかりさんって、落ち着いてちゃんと説明して」
「どうせ、ちゃんと話を聞く気なんてないでしょ!もう、いいよ!」
玄関のドアを開けてその場から逃げる様に走りだした。
もう、あの崖壁に行かなきゃ、気が収まらなかった。
とにかく走った、あの岩壁に向かって!
息が上がってた。
運動不足で膝がいたかった。
でもあの岩壁にいかないと!
視界が一瞬、暗くなった。
気が付くと地面に転んでいた。
膝から擦りむいて血が出ていた。
「チクショウ、チクショウ、チクショウ。
ぼくは三葉虫を掘って一人前にならなきゃいけないだ!
なんだよ、これくらい大丈夫だろ!」
立ち上がってまた走りだした、もう、周り目なんて気にしてなかった。
あの崖壁に着いた。
立ち入り禁止の標識が立っていたが蹴り倒して進んだ。
鞄からハンマーとタガネを出して手当たり次第、石を掘った。
けど、掘っても掘っても三葉虫の化石どころかアサリの化石すら出会わない。
なんだよ!
死んだって!
一緒に化石掘るって言ったのに!
せめて、アサリの化石とか掘らせろよ!
「もう、何なんだ本当に!どうなってるんだよお!」
ハンマーとタガネを放り投げて泣き崩れた。
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