自分の生きる世界で誰かを大切にする勇気をくれる作品
- ★★★ Excellent!!!
悲しみの乾いたまっさらな下地の上に、柔らかくて牧歌的な生活の色彩が重ねられていく、そんな物語です。
この物語は、絶望の中で希望もなく生きてきた少女が、異世界へ転生し、世界の温かみを知るという、私たちのよく知る異世界転生物の形式をとっています。
少女が生きていた現実世界は「辛くて」「苦しくて」「悪意にあふれている」そんな場所でした。その現実世界から転生し、未発達な文明の異世界へ飛ばされます。そこで少しずつ人の優しさに触れていく...というストーリーですが、読み進めれば読み進めるほど、「自分の生きる世界はきっと暖かい」とそう思いました。
きっと生きて行く事は辛いことの連続で、飢える肉体がある以上傷ついたり苦しんだりすることは避けようがありません。
けれども、そんな不条理の中で、爪も牙もない柔らかな両手を持って、自分や誰かのために心を痛ませることができる、弱い心をもって生まれたことには、きっと意味がある。少女が人と触れ合う度に、何かを学び、理解していくそんな物語から、それを強く感じました。
この両手で、大切な誰かを存在事抱きしめてあげたい。そして抱きしめてほしい、と願わずにはいられません。
このレビューを書いている、この時点ではまだ作品は完結しておりません。ですが、一話ごとに、自分が手にしている当たり前の幸福に気が付くことができます。
読み終わるたびに、自分の生きているこの世界で、誰かを大切にしたいと思いました。そんな不思議な力を持つ作品です。ぜひたくさんの人に読んでほしい。