第2話
その時、玄関から大きな音。ドタドタと足音がして、
部屋の扉が勢いよく開け放たれる。
ベットにふさぎ込んでいた私の体が、大きく跳ねた。
「はあ、はあ…。ミャコ!!」
髪の毛がボサボサのまま、何が起こったのかとビックリして
顔を上げると、息を切らした
そして、目が合った瞬間、桜ちゃんは私を抱きしめた。
「なっ!?ど、どどどどどどどどうしたの!?」
「…なんで俺の見送り、来てくれないんだよ。」
「……は?」
顔を真っ赤にしていた自分が恥ずかしくなるくらい、興ざめした。
なんだこいつ。
私が見送りに行かなかったことにふて腐れてんのか。
「いっつも俺のあと、ちょこまかついて来て
俺のこと大好きだ、ってあれほど言ってきたのに、
今更、俺のこと嫌いになった?」
「……は??」
温かくて優しい手。
けれど、昔より大きくゴツゴツした男性の手。
昔と一緒で、昔と違う、大好きな手。
その手が私の体を、さらにギュッと引き寄せる。
「ずっと俺の後、
着いて来てくれると思ってたのに。
俺の片想いだった?」
耳元で、寂しそうに低く唸る桜ちゃんの声で、
顔が一気にユデダコのように赤くなる。
「……はあ!?」
俺の、片想い、?
「ミャコ。
ミャコは俺のこと、ただの兄としか
思ってなかったかもしれないけど、
俺は会った時からお前のこと大好きだったよ。」
抱きしめる時に投げ捨ててしまったらしく、
床に転がる、少しよれた花束を拾い上げる。
桜の花と、ピンクのミヤコワスレが
綺麗に束ねられている。
「俺の、4月1日の誕生花は、桜。
花言葉は『私を忘れないで。』
俺のこと忘れないで、また追いかけてくれる?」
「わ、私の、ミヤコワスレが…お別れのお花…」
「あはは。実はね、
珊瑚のピンクの意味にもなるんだよ。
だから、ミャコのミヤコワスレも、
きっとピンクのミヤコワスレだよ。
花言葉は『また逢う日まで、しばしの別れ。』
ね、大丈夫。別れじゃないよ。
また逢えるから。」
私を置いて、先に行ってしまう彼にふて腐れていたけど、
私の花が、再会を意味する花になった。
桜ちゃんめっちゃキザな奴ー!と笑いながらも、
私はその花束を優しく抱きしめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます