瓶づめにしましょう

尾八原ジュージ

手紙 1

ときさんへ


 お元気ですか。単身赴任はいかがですか。赴任先へついていけなくてすみません。半年に二回も引っ越すなんて、神経質なわたしにはとてもがまんできなかったものですから。

 わたし、マンションの管理委員会にはいりました。スカウトされたのです。なぜってわたしは子どもがいなくて、専業主婦で、ひまな時間が多くて、それに幽霊が見えて、つかまえられるからです。

 古いマンションって、幽霊がよく出るものです。わたしの住んでるマンションは、一昨年まではオガミヤさんというひとがいて、幽霊を片っぱしから消してしまったんだそうでした。でも残念ながら糖尿病が悪化して、今は息子夫婦がいる街に引っ越して、そちらの病院にかよっているんだそうです。

 だから一昨年、去年、今年と幽霊がマンションの中に溜まって、大変だったそうです。何しろ幽霊たちは外廊下の電灯をちかちかさせたり、インターホンを誤作動させたり、壁にへんな形のシミをつけたり、いろんな迷惑をかけてきます。だから、わたしが幽霊をつかまえると、マンションの皆さんは大喜びしてくれました。わたしはそれをあんまり特別なことだと思っていなかったので、こんなに喜んでもらえてびっくりです。

 せっかくなので、がんばって幽霊をとろうと思います。斎さんもお体にお気をつけて。

 ではお元気で。


かの子より

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