真実は誰かの武器になる

彼女が手渡されたのは、黒いえんぴつ。
贈った彼は、自分への手紙を書いて欲しいと言う。

〝どんなに文章が下手な人間でも素晴らしい文章が書けるようになる、魔法のえんぴつなんだ〟

言われたとおりに、手紙を書き始めた彼女に起きた事とは?

わずか879文字。
抽象化された状況で進行する会話劇です。

彼、彼女、えんぴつ、手紙。
この四つの要素だけで構成された物語です。
────もうスゴイ。

そして迎える結末もまた、劇的です。

わずか879文字。
必要十分な要素だけに絞り込まれた物語は、読む者各々の視点によって恐怖や疑念、痛快さが立ち現れることでしょう。

余白を想像することにより本作は、現代ファンタジー、ホラー、SFさまざな読み方を許容します。

読んで空想して愉しむ。
良い短編とは、まさに本作のような濃密な余白をもつ物語のことを指すのです。

短く豊かな読書体験。
そんな愉しい時間を迎えてみては、いかがでしょうか?

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