冒頭第一話のインパクトに比べて、物語前半は登場人物たちの背景などの深堀りが続きますので、読む人にとっては物足りなく感じるかもしれません。しかし、読み飛ばして良いエピソードは1つも無いと断言します。
前半何気ないエピソードとして語られた中に数多くの伏線が隠され、読んでた時には気付けなかったそれらを終盤一気に回収します。これでもか!これでもか!と作者が如何にこの物語を練りに練って構成したか、感嘆が漏れる思いです。
そして構成力だけではない。
バネ屋節とも呼べる独特な言葉選びとリアルな会話回しに個性豊かなキャラ作り。
チートキャラ?派手さだけに特化した過剰な演出?長ったらしい説明臭いタイトル?テンプレばかりでみたことある展開?筆者の都合で動く人物たち?そんな下らないもの一切不要。
まるで自分もそこに居て、登場人物たちと一緒に呼吸してるかのように読者を錯覚させてしまうほどのリアリティを追求すれば良いだけだ、という見本。
人によっては登場人物たちと一緒に怒ったり笑ったり泣いてしまうでしょう。
それだけ没入感が凄いのです。
バネ屋さんは、20代~30代の人間模様を描いた傑作良作を数々発表してきましたが、この作品の完成度は間違いなく傑作です。
残り2話。
我々読者をこの物語の中へ、更にどこまで引き摺り込んでくれるのか、楽しみで仕方ありません。