電脳セカイとノイズフラグメント
佳岡花音
電脳セカイとノイズフラグメント
1章メタバースの世界
学校生活Ⅰ
「ああ、学校ってなんでこんなに退屈なんだろう……」
昼休み、
「そうかなぁ。ボクには楽しいところに見えるけど」
クンペルのどこか
「クンペルは学生になったことないから、そう思うのよ」
私の
私に友達はいない。中学二年生になっても、いまだにクラスには
私の本当の居場所は、
「授業も全部メタバースでやればいいのに。通学なんて、本当、無駄。」
階段に座ったまま足をぶらぶらさせながら、私はクンペルにぼやいた。
「今年に入ってから、そのセリフ、もう何十回と聞いたよ。きっとさ、
「メタバースでも、ちゃんとコミュニケーションは取れるよ。むしろ、顔が見えない分、話しやすくなる子が増えると思うんだよね。外見で判断されることもないし、いじめだって減るんじゃないかなぁ」
AIのクンペルが何と言おうと、私はそう思う。私たちのような生きにくい若者の声を、大人は聞こうとしていないだけなのだ。そもそも容姿なんて、生まれた時から決まっていることが多いのに、世間は見た目ばかりを重視する。でも、メタバースなら自分の外見を好きなようにカスタムできるし、飽きたらすぐに作り直すこともできるのだ。
「ボクはそうは思わないけどなぁ。素顔を見せないで話すのは、やっぱり違うと思う。それに、アバターで見た目の差別がなくなっても、いじめはなくならないんじゃないかなぁ?」
クンペルはAIのはずなのに、私の言うことにいちいち言い返してくることが多い。他のAIなら、もっと共感や
「今って、ディスクワークをリモートでする時代でしょ?学校の授業にも、同じように最新の技術をどんどん取り入れていけばいいと思うの。VRで運動も出来るから、体育の授業だって出来るし、制服やお弁当もいらなくなるのよ?便利だと思わない?」
私はそう言って、食べかけのお弁当を持ち上げて見せた。イヤフォンからクンペルの小さなため息が漏れてきた。
「ほら、始まった。ミライはメタバースに依存しすぎだよ。ボクからすれば、現実世界で生きるって貴重な事だと思うけどなぁ。直接見て、触れて、感じられるって羨ましいことだよ。旅行の
「私はそんなの興味ない。別に苦労して世界遺産を見に行きたいとは思わないし、現実世界の自然なんかより、もっともっと幻想的な世界がメタバースには広がってるんだから。何時間だって海に
「それは君が……」
クンペルが何か言いかけようとしたけれど、私は手を大きく振り、言葉を
「はいはい。もう、クンペルのお説教は充分。昼休みも終わっちゃうし、教室に帰ろっと」
私はこの話題を切り上げて、食べかけのお弁当箱をしまい、教室に戻る準備をした。クンペルは耳元で「説教じゃないのに」と不満そうに
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