差別されている魔族の孤児達を引き取って育てたら、メンヘラになって闇堕ちした
アスピラント
序章 聖職者ルクスと13人の子供達
想いが重い
人間というのはつくづく極端だなと僕は思う。
大魔王が倒されてから150年、人々は恐怖から完全に解放されて平和を謳歌してきた。全ての災いの元凶たる魔王がいなくなった事で、人々は互いの手を取り合い、団結することで社会を復興させた。
まさに人間にとって最高の時代だ。
当たり前に愛する人と生きられることが出来て、将来なりたいものを目指す自由がある。
だが残された魔族は違った。
魔族によって長年虐げられた人間たちは、その怒りや悲しみを憎しみと排斥に変換して、負けた魔族に向けた。
その結果何が起きたか。
魔族にとって地獄に等しい世界が出来上がった。
◆◆◆
雲ひとつない青天、陽の光が美しい石畳の街を明るく照らしている。まさに天から祝福されたような様だったが、肝心の街の空気は全く異なっていた。
「まだ生きてるのか、この悪魔ども!」
「お前は絶滅しろ!」
広場に飛び交うのは悍ましい怒号。
石畳の地面は人で埋め尽くされており、中には売店まで展開されている。その中心には無骨な木製の台があり、上には人の頭を飲み込むほど巨大なギロチンが聳え立っていた。刃は冷たい鉄の輝きを放ち、陽の光を弾いて煌めいていた。
「魔族に慈悲は不要だ!」
人々の叫びがまた空気を貫き、広場を覆う。彼らの顔には怒りが刻まれており、憎悪に燃える目が台の上に囚われた存在を射抜いていた。
「やめて……お願い、まだ、死にたくない……」
囚われた魔族は、まだ幼さを残す少女だった。銀の髪は濡れて額に貼り付き、涙で潤む瞳は恐怖に見開かれている。手足は粗雑な縄で縛られ、台の上に押し付けられた体は小さく震えていた。それでも少女は、最後の力を振り絞って声を上げる。
「私は何もしていない! 人を傷つけたこともないのに、なぜ……」
だが、その声は人間たちの罵声にかき消される。
「黙れ!魔族は皆、同じだ!」
「お前たちがこの世界を滅ぼしかけたんだ!」
人々は手にした石を投げつけ、少女の白い頬に当たった石が血の筋を作る。どうしてこんな事になったのか、少女にはわからなかった。ただ一生懸命に生きているだけなのに、彼らは生きてる事自体が罪だと罵る。
どうして赤の他人にここまで悍ましい憎悪を何故向けられるのか、それが全く持ってわからない。
「では執行する」
ギロチンの刃がゆっくりと引き上げられる音が、不気味な静寂を広場に落とす。女性の足元は震え、拘束された体はか細く揺れていた。それでも、最後の抵抗を見せるように彼女は叫んだ。
「魔族も、人間と同じ命を持つ! どうしてこんな仕打ちを——」
「「ははははは!」」
「必死だな……!」
だがその声は、人間たちの冷笑にかき消される。執行者が刃の縄に手をかけた瞬間、一筋の風が広場を吹き抜けた。その風は冷たく、冬の訪れを告げるようだった。
ダン――
刃が落ちて沈黙は一瞬で破られた。そして血の匂いが混ざり合う中、魔族の首が落ちると人々が歓声を上げた。
「ざまぁみろ!! クソ魔族が!!」
「死んで当然なんだよ!!」
辺りは一瞬で狂乱する人々で溢れかえった。憎き魔族がまた1人この世から消えて、より住みやすい世界になったと叫ぶ者すらいた。
中にはまだ年端もいかない子供まで、きゃっきゃっ笑いながら遺体を指指している。角が生えている事以外、人と全く同じ姿をした魔族が哀れな死を迎えているのに、皆笑顔で喜んでいた。
いやただ1人だけ、全く喜ぶどころか人々に侮蔑の視線を向けていた人がいた。
「……全くもって度し難いな……」
その人物は黒いローブを着てフードを深く被った男だった。青い目に綺麗な金髪、顔立ちはかなり整っている。そんな青年は集団から少し離れた場所から公開処刑を見ていた。街まで買い物に来たら、一体何の騒ぎだと思って覗いたらこれである。
つくづく胸糞悪いが、自分に捕まった彼女を救う手段はなかった。腕っぷしも強くないし、コネもない。勇気を出して乱入しても死体が一個増えるだけだ。
いや正確に言えば――更に大勢死ぬ。
だから救いたくても救えない。
「歯痒いな……」
ポツリと呟いた後、男は帰路についた。
普段の街の雰囲気は好きなのだが、公開処刑があると全く違う世界になったのかと思ってしまうぐらい、雰囲気がガラリと変わる。
人々の魔族に対する差別意識は尋常じゃない。
かつての魔族と勇者達率いる人間とエルフや友好的な亜人連合による戦争によって、世界は瞬く間に戦火に包まれた。
大魔王という魔族の指導者はとにかく苛烈な性格をしており、あらゆる国々で兵士や騎士なんて関係なく殺戮した。犠牲者は数千万人を軽く超えているとされ、人類に癒えぬ傷を与えた。
この時の恐怖は勇者が大魔王を殺して150年経った今でも語り継げられており、小さな子供さえ魔族の恐ろしさを流暢に語れる程。そうなれば当然……魔族に対しては恐怖や憎しみの感情を向けるようになる。
「よいしょ……じゃあ行こうか」
男は停めていた馬車に乗り、さっさと街を出ていく。
そこでようやく彼はフードを取る。
「ふぅ……」
もう街が見えなくなってから男はやっと安心する。
ここまで来たらあとは楽勝だ。
「よっと!」
馬に早く進むよう促して、彼はそのまま数十分進む。
すると閑静な村が見えてくる。男が暮らすサルヴァ村という平和な村だ。ここは昔から世界を創造したとされる女神ディアナを信仰する人たちが暮らしており、皆が助け合って生きている。
ディアナ教の1番大事な教えは、困った人に救いを与える事。
救いを与えた者は最後に自らが救った者によって、より良い運命と結果を生み出すとされている。故にここでは差別や偏見の目を向ける人はおらず、世間からは隔絶されている。
「ただいまー……っと」
そして男が帰宅した先は――厳かな雰囲気漂う修道院を改築した孤児院だ。
彼は元々ディアナ教の神父の1人であり、この修道院にて日々説教をする事でディアナ教の信念を教えている。おかげで村の中ではちょっとした有名人だ。信心深くて優しくて、誰にも手を差し伸べる人――そう本当に誰にも手を差し伸べてしまうのだ。
彼はそのまま孤児院の地下へと向かい、扉を開けてただいまと言おうと口を開いた瞬間だった。
「ふぅ、皆……ただい――」
「おっかえりー!! ルクスー!」
「ぶへぇあ!! 下腹部が……ぁ」
真っ白な長い髪をした15歳ぐらいの少女が全力タックルをかまし、男――ルクスの下腹部に頭をめり込ませた。ルクスはそのまま力無くしゃがみこみ、悶絶しながらも買い物袋をちゃんとゆっくり置くと、震える手で少女の頭を撫でた。
「あ、ごめん……」
「い、いや……大丈夫さアリア……僕が鍛えてないのが悪い。だから気にしなくていい」
脂汗を垂れ流しながらもルクスはアリアという少女に、大丈夫大丈夫と何度も言い聞かせる。そんな彼女の頭には美しい白色をした2本の角が生えていた。
そう彼女は魔族の代表格として知られる、デモナスという種族の孤児である。真っ白な長い髪に濃ゆいアメジストの虹彩には、縦に切れ込みを入れたような瞳孔がしっかりとルクスを捉える。
「えへへ……ルクスは優しいなぁ〜」
「普通だよ、僕にとってはね」
ちょっと申し訳なさそうな顔をしながらも、アリアは猫撫で声で可愛らしく笑う。彼女は少々お転婆気質だが、基本的には素直で非常にいい子だ。
ルクスが育てている
「また
「またって! そんなにかけてないよレギス!」
やれやれとルクスは困ったように笑う。
アリアを咎めるのはまた別の魔族の少年――レギスだ。
アリアとは真逆の黒い髪に黒い角を生やしており、ここに来る前からアリアと親交のあった唯一の子供だ。
「ちょっとは落ち着きとか意識しろ、もう15だろ」
「むー! レギスは小言ばっか!」
「お前の為を思ってるんだ」
親友同士である彼らは時折喧嘩することもあり、そのためにルクスが止めに入っていたりする。また止めに行かないととルクスは立ち上がって間に入ろうとすると、すでに先に2人の間に入っていた者がいた。
「はーい、もうそこまでにしなさい! じゃなきゃご飯抜き!」
「!!」
ハイエルフの司祭――ユスティーナだ。
美しいシアン色の髪に、白と金の装飾が施されたローブを着た彼女は、ルクスのサポートをしながら子供達と共同生活をしており、魔族の子供達の母親代わりを務めてる。
「ほらほら2人とも喧嘩しないで、荷物運ぶ手伝いをしなさい」
「「う……ユスティーナさん、でも」」
「またお説教……サレタイ?」
「「て、手伝いますっ!!」」
「よろしいっ」
にっこりと不気味な笑みを浮かべるユスティーナに恐れをなしたレギスとアリアは、キビキビとルクスの荷物を運んでいく。2人が去っていくのを確認したユスティーナはルクスに手を差し伸べて立たせた。
「お疲れ様、街はどうだった」
「……公開処刑があってね……」
「そう……やっぱりどこも同じなのね」
目を伏せた彼女は、人間と同盟関係にあるエルフの中でも、特に魔族を忌み嫌うハイエルフというやんごとなき立場にいながら、魔族にも偏見を見せずに接する事が出来る希少な人物だ。
「前の街よりはマシさ、村から街まではだいぶ離れているし……ここまで来る人はいない。村人にも事情をわかってる人がいる分……安全だよ」
「でも油断はしない方がいい、今後も気をつけましょう」
まずはお疲れ様とルクスを労ったユスティーナはそのまま子供達がいる部屋に戻っていった。彼女の優しさにはいつも感謝してるし、とても返しきれない恩がある。
だからこそあまり負担になるようなことをさせたくない。だからこそ魔族にも寛容な街を何とか見つけたいものだが、大陸中探し回っても無さそうなぐらい、どこも凄まじい差別が横行している。
「……はぁ、気が滅入るな」
トボトボした足取りで自室に戻ったルクスは、そのままベッドにダイブする。処刑される前の悲惨な悲鳴が今もフラッシュバックして、精神的にもかなり辛かった。身体を激しく動かしたわけじゃないのに、何だか非常にしんどかった。
「一旦寝よ……」
まだ昼を過ぎて、丁度いい陽気が眠りを誘う。
ルクスはその眠気を潔く受け入れると、すぐにぐっすりと夢の世界へと旅立った。
「――お願い……やめてっ……!」
「ひゃははは……おい! 抵抗するな――」
誰かが泣き叫んでいる。
朧げになった視界には複数人の男と、年若い魔族の女が子供を守ろうと立ち塞がっている。ルクスはそれを見て、激しい嫌悪感を抱くと近くにいた男の肩に手を置く。
――やめてください、彼女は何もしてない……――
必死に訴えるが、男は振り返ると何を言っているんだと言って胸を小突く。男の目には黒いモヤがかかっていて、一体どんな表情をしているのか分からなかった。
「何もしてない?? バカかルクス、こいつらは敵だ」
「敵には何してもいい、天にいる神だってそれを望むだろう」
さも当然の行為だと言う彼らに対し、ルクスは頭が痛くなった。今すぐ殴り倒して彼女を救うべきだ。衝動に突き動かされるままルクスは叫ぶ。
「彼女もこの世界に生きる人だ! 敵じゃない――がぁ!?」
そう言った瞬間にルクスは男に殴り倒され、そのまま壮絶なリンチを受ける。
「お前頭おかしいだろ!! 庇う必要はねぇんだよ!」
「魔族は害虫だ、駆除すべきだ!」
憎しみが一斉にルクスに襲いかかり、激しい痛みが肉体をおかしくしていく。これでいい、無実の魔族が救われたらそれで良いのだと思ったルクスが、襲われていた魔族の少女に目を向けると――
「何でそれで許されると思ったの??」
「!!!」
倒れるルクスの前に、首が変な方向に曲がった魔族の少女がいた。彼女は服をはだけさせ、無惨に痛めつけられている。虚になった漆黒の目がルクスをじっと覗き込むと、しゃがれた声で囁いた。
「貴方は私を見殺しにした」
「……違う! 助けたかった! 本当だ!」
「でも救えなかった、だから貴方はずっと罪悪感を抱いてる」
少女の目と口から黒く染まった液体が流れ落ち、ルクスの顔を濡らす。息はどんどん荒くなり、緊張と恐怖で心臓が止まりそうになる。少女は段々と顔を近づけると、ニヤリと笑った。
「貴方じゃ……あの子達は救えない……」
必死に振り払おうとしたルクスは勢いよく跳ね起きて、力の限り叫んだ。
「――うわぁぁ!!!」
「きゃあ!?」
その瞬間に誰かが可愛らしい悲鳴をあげて、ドタドタと倒れ込む。いきなりの事でよく分からなくなっていたルクスは、自分がついさっきまで夢の世界にいたと認識する。
「はぁ……はぁ……夢か……はぁ!」
気づけば汗ぐっしょり。
窓には鮮やかな夕陽が顔を覗かせており、数時間以上は寝ていた事に気づく。ただ今のルクスには時間よりも、もっと気にすべき事があった。
「も、もう! いきなり起きないでよびっくりした!」
「あ……アリア。ごめん……びっくりさせて」
「本当よっ、って汗びっしょりだけど……大丈夫?」
プンスカと怒る彼女を見て、ルクスは何だかとても安心した。相変わらず可愛らしくて癒される、そんな彼女が起こしてくれた事に心底感謝してると、アリアはルクスの手を掴んでニコリと笑う。
「晩御飯出来たよ!」
◆◆◆
(嫌な夢を見ちゃった後だからなあ……顔とか大丈夫かな)
ルンルンと鼻歌を奏でながら手を引っ張るアリアを眺めながら、ルクスは自分の顔をペタペタ触る。とりあえず彼女が何も言ってこない辺りは大丈夫だと思うが、あまり心配はかけさせたくはない。
彼らが自分にどんな感情を抱いているか、痛いほど理解してるから。
「先生起こしてきたよユスティーナ!」
「ありがとう、アリア」
広いリビングにはすでに引き取った子供が食卓を囲んでいた。全部で13人にもなるかなりの大所帯だが、もれなく全員訳ありだ。ここで育てている理由も非常に複雑だったりするのだが、基本的には非常にいい子達だ。
「先生寝坊!」
「……そんなに疲れてたのか」
「大丈夫ー……?」
「ああ、僕は大丈夫だよ! 元気さ」
ダークエルフ、リッチー、オーガ、デモナス、ドラゴニュート、サキュバス、アラクネ、アンデッド、などなど様々な種族に分かれている。彼らは皆魔族の中でもかなり特殊な生まれで、込み入った事情持ちだ。
だからこそルクスはかなり普段から気を遣いつつ、保護者として大切に大切に育ててきたのだ。
「今日はシチューとパンか」
「アリアと作ったのよ。ね?」
「うん! ユスティーナが教えてくれたから上手く出来たと思う。だから褒めてっ」
「偉いぞ、アリア」
くしゃくしゃと頭を撫でるとアリアは照れ臭そうに笑う。
すると残りの12人から一気に嫉妬の視線が刺さる。ちょっとピリッとした空気に耐えきれなくなったルクスは、わざとらしく咳をした後に、両手を合わせる。
「さ、さぁ……食前の祈りをしよう」
「「「はい」」」
「世界の創造主である女神ディアナよ、今日も我々に恵みを与えてくださる事を感謝します……」
皆は目を瞑って両手を合わせ、ルクスが祈りを終わったタイミングを見計らう。早く食べたくてウズウズしてるのが丸わかりだ、微笑ましくなったルクスは少し笑った後に、祈りを終える。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
一斉にディナーにありつく皆を、ルクスは穏やかな気持ちで見守る。共に食事が出来る幸運を噛み締め、ルクスもまた同じように食事をしていると、アリアが口をモゴモゴ動かしながらルクスに問う。
「さっき魘されていたけど……大丈夫?」
「ん? ああ、まぁ大丈夫だよ。ちょっとだけ悪い夢を見たんだ」
「どんな……夢?」
アリアの問いかけにルクスは口を紡ぐ。
何と言ったらいいかわからなかったが、ひとまず濁すことにした。
「昔……ずっと昔だけど、魔族の子を救えなかった夢だよ」
「……」
「夢の中で、死んでしまった魔族の子が言うんだ――お前じゃ救えないって……」
「そんなことはないよ」
アリアは小さな手をルクスの手の上に重ねる。
「私たちはルクスのおかげで命があるんだよ!」
「そうだよ先生、貴方は命の恩人だ」
「……ボクも……感謝してるよ」
引き取った13人の魔族の子達が一斉に近寄っては、ルクスの身体にしがみつくようにして抱きつく。あまりにも暖かな言葉にルクスの目頭は熱くなった。
「そうよルクス、貴方は良くやってくれているわ」
「ユスティーナ……」
「清らかな心を持っているからこそ、私も手をかそうと思えたのよ」
ハイエルフの彼女も優しく微笑みかけてきたおかげで、ルクスの涙腺はついに決壊した。ポロポロと涙を流すと、子供達の力が強くなる。本当に……本当に彼らは優しい、とても自分を大事に思ってくれているのが伝わってくる。
だけどルクスは知っている。
子供達が抱くその感情がどんなものかを。
「だからさ、ルクスは気にしなくていいんだよ――私たち以外の奴らが何を言ってきても、どうでもいいんだから」
「アリア?」
抱きついていた手を離して真っ直ぐ目を見てきたアリアの目は――光が全くない漆黒の闇が広がっていた。
「――――ッ!」
「私が大事なのはここにいる13人の仲間と、ルクスとユスティーナだけ。それさえあれば世界なんてどうでもいい」
「ア、リア」
「私の世界はこの小さな修道院、そこ以外が地獄になっても別の世界だからどうでもいいの」
「そうだぞ、先生」
するとアリアの言葉に、レギスが同意を示す。
他の子供達も全く同じ意見なのか、いつにも増してドロリと澱んだ目をしながら頷く。
「……皆……」
ユスティーナは心配そうに子供達とルクスを見る。
この状況をあまりよく思っていないのは丸わかりだった。救われたが故に彼らがルクスに抱く感情は、愛情や崇拝、依存、支配欲などのドス黒いものが複雑に絡み合ったものになっている。
絶望的な外の世界、反対に幸福な内の世界。
どちらを選ぶかなんて言われたら、聞くまでもないだろう。
「さ! ご飯食べよ! そのあとは読み聞かせとかしてよルクス!」
「あ、ああ……」
「えへへ、ずっっっと一緒にいようね!」
そう言って子供達は皆普通の目に戻り、あどけない子供に戻る。ルクスはじっとりとした脂汗を軽く拭ってから思う。
(もし……僕の身に何かが起きたら――彼らはどうなってしまうのだろうか)
13人の子供達は普通の魔族じゃない。
そんな彼らがもし外の世界に対して、本気の敵意を持ってしまったらどうなってしまうかなんて、想像したくない。
(この子達の未来が明るいものになるよう、僕は絶対死んではいけない)
それが彼らのためであり、ひいては世界の為になる。
密かに緊張感を抱えたままルクスは食事に戻る。
とりあえず非力な自分が出来る事はアリア達を正しい道に行けるように導く事だ。
(……めちゃくちゃ胃が痛いけど)
これは魔族の迫害が色濃く残ってしまった世界に生きる、1人の人間と魔族の子供達が幸せになる為に生き抜く話だ。
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