2025.09.11(木)/藤野さんちの食卓事情

 もう割と長いこと一人暮らしをしている。圧倒的に自由ではあるけれど、もちろん家事をするのも自分ひとりだから、やらないことには始まらない。


 掃除に洗濯、買い出しに日々のあれこれ。人並みにはやっている。そんな私だが、未だに料理は嫌いだ。


 できればやりたくない。一人暮らし経験者、或いは現在進行形で一人暮らしの人は分かってくれるのではないだろうか。


 あ、もしもいま「分かる~、献立とか変えるの面倒だよね~」って思った人。素直に手を挙げて。


 残念ながら、私はそのレベルじゃない。アナタは立派だ。立派なヒューマンだ。誇っていい。


 作るのが嫌なんだよ、私。


 もうね、面倒臭いの。準備をするのが。


 食べるのが好きかと言われたらそんなこともなく、一週間連続でレトルトカレーを食べても平気な人間だ。いかに「食事」という人間らしい行為を放棄しているかが分かるだろう。


 とはいえ、面倒臭くても私も人間。


 人間は食わないと死ぬ。


 だから何か作って食わないといけない。


 ……この三段論法、ちゃんと機能しているだろうか。


 そんなわけで、仕方なく米を研いで炊飯器のスイッチを入れ、なんか適当なものを買うなり作るなりして、モソモソと食べ、食器を洗う。


 当然、一回の食事で炊いた米は食べきれないので、余った分はラップに包んで冷凍庫に入れる。冷凍保存。素晴らしき人類の発明である。


 料理男子とか聞くと、マジすげぇなと思う。YouTubeで料理の動画を見ると、見たこともない食材、一生触れることもなさそうな包丁や器具などが出てきて、気分はもう異世界転生である。同じ世界線の人類とは思えない。


 料理人やコックとしての技能ならまだしも、普段の生活できちんと料理している人は本当にすごいと思う。家族の為に料理を作る人は本当に偉大だ。尊敬の念に堪えない。


 そして、藤野家の食事事情というのは「いかに楽をして栄養補給をするか」に終始しているのである。


 が、人間というのはわがままなもので、ちゃんと調理されたものが食べたくもなるのだ。


 だがしかし、自分でやるのは嫌だ。面倒臭い。


 そんなわけでここ数年ほど、私はずっと「料理が好き、あるいは料理が苦じゃない女性と結婚したい」と言い続けている。


 結婚相手に求める条件は様々あると思うけど、一番はこれだ。


 料理が苦じゃない人が良い。その代わり片付けは任せろ。分業しよう、分業。掃除は嫌いじゃない。


 なんてことを言い続けているわけだが、悲しいかな、嫁さんどころか彼女ができる気配すらない。


 マッチングアプリをやっていた時期もあるが、どうやら藤野さんの恋愛市場価値はゼロらしく、何ひとつ成果は上がらなかった。


 泣いていいですか、自分。


 もちろん、恋愛や結婚が全てだなんて思っていない。しかし、ハンパに長い人間の寿命でずっと独りというのは退屈だし、素直に寂しい。


 共同生活になれば、当然煩わしさもあるだろう。だが、煩わしさがあるにしても、身近に自分以外の誰かが必要だと思う。少なくとも、私の場合は。

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生息地:いま 藤野悠人 @sugar_san010

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