2025.04.22(火)/文学が嫌いだった話
カクヨムで小説を投稿するようになって、気付けば三年以上が経過している。文学好きのネットユーザーと、文豪の文体あるあるネタや、よく描くテーマの話、どの作品が特に好きか、といった話題で盛り上がることもある。
そんな私だが、実は20歳くらいまで文学が嫌いだった。まったく触れてこなかったわけではないけれど。
読書は子供の頃から好きだった。生まれて初めて文字だけで構成された作品、つまり小説に触れたのは、小学校一年生の時である。
オーストラリアの女性作家、エミリー・ロッダ著のファンタジー小説『デルトラ・クエスト』シリーズが、小説の原体験だった。
最初に小説というものに触れた私は、「キャラクターの姿も、風景も、すべて自分の頭で考えて良い」という圧倒的な“自由”の感覚を持っていたように思う。
その他、十代半ばまでに読んで印象に残っている作品としては
・J.K.ローリングの『ハリー・ポッター』
・ダレン・シャンの『ダレン・シャン』、『デモナータ』
・ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』
・江戸川乱歩の少年探偵団シリーズのいくつか
・宮部みゆきの『ブレイブストーリー』、『龍は眠る』
このあたりだろうか。
しかし、実は私はそれほど読書家ではない。昔も今もそうだ。
そして今日の本題。私は文学が嫌いだった。ここで言う「文学」は、主に日本文学のことを指している。
高校卒業までに触れた文学作品と言えば芥川龍之介の『羅生門』『蜘蛛の糸』、太宰治の『走れメロス』、夏目漱石の『こころ』のほんの一部くらいだった。いずれも国語の授業でやったものばかりだ。
文学に触れてこなかった理由は様々ある。堅苦しいとか、読みづらいとか、そもそも印刷された字が小さすぎて読みづらかったとか。が、
そう、面白くない。つまらない。作中の何が問題で、何の話をしているんだかサッパリ分からない。小難しい言葉を
当時の私にとって、文学作品の認識はそういうものだった。今にしてみれば、単純に理解力が無かったのだと思う。
大学の文学部に進学した理由も「まだ学生をやっていたい。大学生ライフを送りたい。実家を出て一人暮らしがしたい。ついでに現代文が得意だったから」という理由だ。我ながら本当にひどい。
そんなわけで、文学に対して舐め腐った態度のクソ大学生をやっていた。
文学部に通って近現代の作品に触れることが多かったくせに、肝心の近現代の作品や文豪が嫌いなのである。古典なんて
作品考察のレポートも、いま思い出すとよく単位をもらえたな、と思うようなクオリティだった。四年で卒業できたのも、教授のお情けか、或いはこんなクソ学生は邪魔だからさっさと卒業してほしいと思われていたかのどっちかだと思う。
意外に思うかも知れないが、私は大学生の時に谷崎潤一郎を読んだことがない。坂口安吾もない。夏目漱石はいずれの作品も最初の10ページで挫折し、三島由紀夫は5ページで挫折した。中島敦は『山月記』をなんとか読了した程度で、
学問の研究機関である大学にいながら、この
さて、猛烈な勢いで自虐と恥の切り売りのオンパレードをしたためてきが、それだけでは終わらない。
こんな私ではあるが、最近は文学作品を好きとまではいかないまでも、面白がれるようになってきたのである。具体的なきっかけはない。ただ、いつの間にか夏目漱石や坂口安吾といった、文豪たちの作品を楽しく読めるようになってきたのだ。
早くから文学に目覚めた人もいるだろう。実際、私の周囲にはそういう人が何人もいる。
ただ、文学を楽しむという才能がなかった身から言わせてもらうと、文学作品を楽しめるようになるには、ある程度大人になる必要があると思う。
具体的には、社会経験を積むこと。気に入らない人間、不本意な環境、自助努力ではどうしようもない現実、自分なりの辛酸や挫折。少なくとも私は、それらを経験しないと文学作品の面白さを経験できなかった。
今になって、10代の時点で近代の文学作品や、古典作品を楽しめていた知り合いが羨ましくて仕方がない。
が、ある友人が常々言っている言葉がある。
「もっと早くに……とは言うけれど、“いま”が一番早いんだ」
というわけで、“これから先”の人生を思えば、いま、ここが一番早い。その時点で文学作品の面白さを知れたのだから、それで良いのかもしれない。
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