第3話 幼馴染への想い(side:あかり)
生まれ育った町に帰って来てからおよそ二年近く–––。あの小さかったあずみちゃんが、もう幼稚園に通うというのだから驚きだ、
今まなみは二人目を妊娠していることもあり、時間が合えば私も時々ではあるがお迎えに行くという話になり私も快諾した。
––––まなみや和樹の傍に戻って来れて、とても嬉しいと思う反面…言葉に出来ない感情が今の私にはある。
(和樹の事がまだ好きだっていう気持ち…ちゃんと封をして心の奥底に仕舞い込んだはずなのにな––––)
元々まなみや和樹から距離を取るようにして、遠く離れた地域の大学を受験したのは二人の姿を見ているのが辛かったからだ。
和樹の事を好きだからこそ、そう思ってしまった事に気付いたのは大学に入ってからの事だけど…かと言ってその頃の私にはどうしようも無かった。
二人の結婚式でまなみと和樹とようやく仲直りが出来て、心から祝福した。その時に私の気付くのが遅すぎた恋心にしっかりと封をした–––。
あずみちゃんが産まれた時はとても嬉しかったけれど、少しだけはみ出たモヤモヤした気持ち–––心の中の蓋は更に厳重なものにした。
心の蓋が緩み始めたのは、この町に戻って来てからだ。年に1〜2回二人に会いに来ていた時は全然問題が無かったけれど…頻繁に会うようになると抑えが効かなくなりそうで怖い–––。
(和樹も時々私の事を見てる時があるのよね…嬉しいと思ってしまう反面、気持ちの歯止めが効かなくなってしまいそう–––)
そんな私の心のストッパーになってくれたのが、あずみちゃんの存在だった。私にとって可愛い姪っ子であるのは間違いない。
だけどそれ以上に何か–––この子とは不思議な繋がりがあるような気がしてならない。それこそ本当の親子として過ごした事があるような…そんな事あるわけないのに。
ただあずみちゃんと一緒に居る事で、溢れ出そうになる和樹への想いをなんとか留める事が出来ていた。勿論、彼女を悲しませたくないという気持ちもあるけれど–––。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ある日、まなみが二人目の子供の名前を一緒に考えて欲しいと言って来た時には正直驚いた。しかもあずみちゃんの時のように、三人の名前から一文字ずつ取りたいだなんて…。
まなみに嫉妬する気持ちも少なからずあったけど、この感情を悟られる訳にはいかない。そこで考えたのが自分と和樹の間に子供が出来たとしたら?という前提で名前を考えてみる事にした。勿論三人の文字は入れながら–––。
そうすると自分でも楽しくなって来てしまい、女の子だったら[
まだ性別が分からないので、私が考えた名前が付けられるかは分からないけど…名付けの話が終わってから、まなみに対しての罪悪感が湧いてしまった……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
新しい年度を迎えた四月––––。決めていた通り、あずみちゃんのお迎えに行く事になった。
仕事が休みの日になるので、週に一回程度。それでも和樹のご両親や私の両親も仕事をしていて、毎日は都合がつけずらかったらしく助かるそうだ。
初めて幼稚園にお迎えに行き、あずみちゃんと一緒に手を繋ぎながら帰ると…不思議な既視感に襲われた。
これが初めての事なのに、以前にもこうして一緒に帰った事があったような–––。そしてなんとあずみちゃんも同じような事を感じたらしい。
『まえにもこうやってあかりママと、いっしょだったきがするの。はじめてなのになんだかおかしーの』
結局どうしてそう思ったかは分からず、二人して『変だねー?』って言いながら家まで帰った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それから暫く経ったある日。その日もあずみちゃんのお迎えに私が行く予定だったのだが、たまたま和樹が午後から暇になったという事で電話が来た。
「じゃあ今日は一緒に行くか?」
『……うん』
和樹からの提案を断りきれず、二人で幼稚園へと向かう。そこで私は、とある人に暫く振りに再会したのである–––。
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