紙なんていらないね!

レッドハーブ

紙なんていらないね!

あるところに同棲しているカップルがいた。


男は最近買ったタブレットに夢中だ。


「すごいよな!これ一つで電話、音楽、映画、カメラ…なんでもできるんだ!」


男は興奮気味に彼女にはなす。


新しいおもちゃを手に入れた子どもとなんら変わらない。


「とくに電子書籍が最高さ!マンガ好きのオレにはとても重宝している!電子書籍は最高だ!紙とちがって、かさばらない!荷物にならない!傷まない!」


「よ、よかったね…」


「キミもタブレットを買いなよ!これがあれば紙なんていらないね!」


「う、うん…そのうち、ね」


「なんだよ、なんだよ。そんなんじゃ、時代に取り残されちゃうぜ?」


これだけなら、よくある会話だが…。男の言動や行動はエスカレートしていった…。

彼女が雑誌やマンガを読んでいるときにいつもこの話をしてくるようになった…。

しまいには茶化してくる始末…。


「「「紙なんていらないね! 時代はペーパーレスさ!」」」


さすがに彼女もずっと聞かされて、ウンザリしていた…。




ところがある日、事件が起きた…。


「うっ、お腹が……」


急なことだったので、男はなにも持たずにトイレに入った。


おさまったかと思いきやまた、またお腹が痛くなり…を何度も繰り返した。


カラン……


「し、しまったトイレットペーパーが……」


と、そこへ足音が……


「ちょうどよかった、すまないがトイレットペーパーをもってきてくれ!」


男は彼女にたのんだ。


「……………」


彼女はなにも答えない。


するとドアの下の隙間から男のタブレットが入ってきた。


「?」


男は首をかしげた。


ピコーン!


タブレットにメッセージが表記された。


《 紙なんていらないね! 時代はペーパーレスさ! 》


男はあわてて返信した。


《 オレが悪かった…。謝るからトイレットペーパーをもってきてくれ!たのむ! 》


彼女はドアのすき間からトイレットペーパーをわたしてあげた。

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