好きなもの×好きなもので非常に刺さる作品であった
ラノベにおいて突然現れる美少女にたいする敗北を約束された不遇な属性を愛好する同志に対してこの作品は大いにおすすめできる。
幼なじみが最初から最後までメインヒロイン…こんなに嬉しいことはない。
またヒロインも天才激重感情毒舌デロ甘依存系ツンデレ美少女幼なじみという性癖の過積載…私は良いと思う!!
普通なら恋敵になる突然現れる系美少女も恋敵ではなく健気で小動物的なかわいさがあってほほえましい。
確かな筆力で描かれる異能バトルも見所であり中々楽しい。
今すぐ私の駄文なんて閉じて二人の丁寧な関係性の積み重ねと恋の行方を君の目で見届けてくれ!!
なお…注意点として序盤に色々設定が開示されるので少々取っ付きにくく感じるかもしれないが中盤から幼なじみヒロインのかわいさがが出てくるのですこしだけ頑張って読んでほしい。
設定が好きな読者であればそこも読みどころかもしれない。
異能バトル少女が主人公とヒロインの幼馴染カップルの恋を応援する変則的王道ボーイミーツガール。
「ゼロ年代ライトノベルを多く感じる作品」というのが、この作品のざっくりとした第一印象だった。かつて多く見られた、熟語にカタカナのルビをふった形式の独自用語、うさんくさい組織と父親、燻っていた少年の覚悟、異空間と怪物、研究所で育った怪物を狩る少女、ほかにもさまざまな細かい要素が私にかつてのラノベを想起させた。地の文や会話のテンポ・リズムも非常によく、快適に読み進めることができた。しかし、真に特筆すべきは、この作品が現代に生まれ出でてくれた、ということだ。
この作品は、照れも恥じらいもなく、ただひたすらまっすぐに青少年の青春を、自意識を描き出している。どこまでも鮮やかな真夏の青空の下、彼ら彼女らが笑いあい、また悩み苦しむ姿が目に浮かぶようだった。この作品の描写一つ一つはすべて作者が少年少女の「愛」や「可能性」を本気で心の底から信じていないとできないものばかりで、これは現代においては本当に稀有なことだ。作品に込められたこの大いなる浪漫こそが、この作品の魅力の核だと、私は思う。
この作品も、これからの新たな時代に刻まれた一作…いや、代表作となってほしい。この作品には、それだけの価値がある。
この話がどういう話か簡潔にまとめるとこうなる。
この作品は異能バトル作品である。近未来のディティールが細やかなSFバトルである。
日常を送る男子高生の前に、突如現れたバトル系美少女――これだけ聞けばああヒロインはこの子かと思うかもしれない。
だが、違う!
読めば一目瞭然だが、この作品のメインヒロインは尊大ながらも主人公に負い目を感じるツンデレ系幼馴染である!
態度は大きいが妙にしおらしく、主人公のことが好きすぎてたまに(たまに)暴走しがちな可愛い幼馴染なのである!!
じゃあタイトルにもなっているバトルが出来ちゃう系非実在美少女の役目はなんなのよ、普通主人公を冒険へと誘うメインヒロインじゃないの、と思うことだろう。
確かにちょっと常識からずれていつつも人助けが好きな彼女はとても無垢で可愛らしいが、メインヒロインではない。
では何か。
カプ厨である。
お互いに好意を抱きながらもどこか踏み込めず停滞している主人公と幼馴染を推す、カプ厨である。
ここまで読んで「もしや変な作品なのか?」と思う人もいるかもしれない。確かに一見風変りにも見える。
だが、この作品はそれ以上に直球ど真ん中のジュブナイルである。
世界の理不尽に翻弄された子供たちが、それでもと大きな声で己を叫ぶ、至極気持ちのいい王道ライトノベルである。
少女は恋に心乱され、少年は恋のために声を張り上げ、そしてそんな二人の背中を幻想的な少女が押す。
ラブコメディと異能バトルと青春ストーリーの、少し変則ながらもハイレベルなセッション。是非ご照覧いただきたい。