【Part5:急造挑戦アドリブセッション/つまりはようこそ異能バトル】-1
◇
灰色に染まる街の空は、昼も夜も何も変わらない。
風もなく音もなく人もなく、静寂と光の煌めきだけがある茫漠空間。
無音広がる世界の中で、心臓の鼓動だけがリアリティだった。
「大型
それに反応するように、
《【宣言】
《【宣言】
《【宣言】攻性ロジックコードの使用権限を解放します》
《【宣言】攻性ロジックコードの一覧を表示:順次インストール中》
画面上に流れていくプログレスバー。
一体どんなアプリケーションを流し込まれているのか。
「
頷く。ところで彼女の前で自販機アプリを使った記憶は無いのだが何故そう言えるのだろう。日常的に使っているものだから当然そうだと思ったのだろうか。今はそこを考えている場合では無いので
「最新理論において──現実と情報は同一線上の存在なの。
構成情報と演算性能と出力機構。その三種が揃ったなら──心なき物質を現実化出来る。
つまり理論上は
現代文明の基本であるから、
「今インストールしているのは──その情報の物質化技術の拡張版。
現実空間でも簡単な物体なら具現化できるというのなら。
それより存在率が低い幻奏劇場では──どこまで具現化できると思う?」
昨日の
笛剣を振るって舞う以外にも、
「そう。存在率が低い領域での情報具現化は単なる物質化を越えて事象の実行までを可能とする。
火炎や電撃のような単純現象のみならず──空間転移や高速治癒のようなものまで。
非現実に適応した機能拡張の結果──現実改変の域にまで至った情報具現化プログラム」
プログレスバーが右端に届く。
ぴろりん、とダウンロード完了の音がする。
「それらを指してロジックコード。
いざという時は──これできみ自身を守ってほしい」
《コードリスト:ゴーストフレア355》
《コードリスト:アイスボール363》
………スクロール。
《コードリスト:ポイズンショック454》
《コードリスト:ハイパーブラスト474》
………スクロール。
《コードリスト:オーバードライブ849》
《コードリスト:マッドティパーティ855》
「……なんか思ったよりも沢山あるな?」
スクロールバーの長さから予想するにおそらく4桁は越えている。
予習をするには少しばかり多すぎる分量に困惑する
「大丈夫。
その場に応じてしっかりと必要なものを教えてくると信じてる」
「そこは保証をして欲しい!」
ともあれ。
戦う力を手に入れた
病院近くの公園だった。
子供用よりはスポーツクラブのためのものなのだろうか、置いてあるのは最低限の遊具だけで後はサッカーやバスケに使うグラウンドがスペースの多くを占めている。
つまりは開けた空間で、敵の襲来に気づく為にはもってこい。
「……」
深く、息を吸う。
戦闘経験のようなものはスポーツを幾つかやってきた程度。どこぞの戦場で生まれ育ったみたいな経歴も学校に攻めてきたテロリストを撃退したような実績もない。
そんな自分が幻想世界の怪物相手に囮の役を買って出るなど、普通あり得ない非日常。
つまりそれは、他で得られない特別だ。運命だ。
この運命で幼馴染を救えるのなら、
「──」
そしてその時が来た。
待っていたのは数秒か数分か数時間か、少なくとも永遠よりは短かった。
敵の到来を告げたのは、光でもなく、音でもなく、非現実的な第六感。
言葉にできない直感が、
「……はは、」
三度目の遭遇では、相手の姿が今まで以上によく見えた。
以前枯れたヒマワリのように見えていたのは、腐食した蛇の集合だった。
ぐじゅぐじゅと粘液を垂れ流しながら這いずってくる植物と爬虫類の融合体。
間違えるはずがない。昨日
ヒマワリの中心にある瞳が汚濁の涙を流しながら開いていく。
最初の遭遇ではその視線を受けただけで意識が遠退きかけたそれ。
おそらくこれと視線を合わせてしまったことが、
今度は呪いを惹きつける他人はいない。
《【警告】精神干渉を感知しました》
《【宣言】精神防壁を自動発動しました》
《【警告】精神防壁が機能している間に精神干渉対象から離れてください》
そうなる寸前、
「呪眼の
自動攻撃はインストールしたロジックコードが防いでくれる。
あとは
「まずはオーソドックスに火炎系から行ってみようか!」
《【発動】攻性コード:ゴーストフレア355【
《・──対象を遠隔発火させます──・》
指定座標に発生した火炎がヒマワリに見える
形の崩れた頭から塊状にぼたぼたと垂れる粘液が地面へと滴り落ちるが、しかしそれはほんの一瞬。
ぐじゅり、と気持ちの悪い音がして、
「再生した!?」
瞬間的に鎮火して、元通りの姿へと回帰する。
そしてそれに怯んでいる暇はない。
次の瞬間、
「うおぉ、っと!!」
思い出すのはサッカーのドリブル。体を捻って動かすことで攻撃を紙一重で回避する。
《【発動】攻性コード:エアスラッシュ468【
《・──圧縮大気で刃を生成し対象を切断します──・》
次に打つ手は切断だ。
宣言通りに風が吹き荒れる音がして、
しかしそれも一瞬だ。
これもまた次の瞬間には映像を逆再生したかのようにくっついて、元の形へ復元する。
「こっちも効かない……ありかよちくしょう!」
叫ぶ。だからと言って相手の動きは止まってくれない。
けれども攻撃を通す手段がない以上、こちらが不利の千日手。
向こうに負けの目はないが、こちらはワンミスデッドエンド。
不安を抱いた瞬間に、銀閃が目の前に閃いた。
「──
「ごめん。カメラアプリの処理に手間取っちゃった」
「?」
疑問符を飛ばすが、即座に答えを思いつく。
戦闘経験豊富な彼女のことだ。カメラで
「あとは
言うや否や、フィンガーモーションで展開される
その大きさは三メートルを越えて拡大、
《【発動】補助コード:エスケープ063【
《・──対象を指定座標へ転移させます──・》
そして彼女は
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