【Part3:世界の果ての幻奏劇場/それと異能世界のバトルヒロイン】-3
◇
灰色の街の中でも、街並みの構造は変わらない。
知っているビル一階の喫茶店は屋外パラソルを広げているし、ファーストフードショップの看板はぐるぐると回っている。
ただ、喫茶店に本来たむろしているだろう客たちは存在していないし、看板はなんと書いてあるのか判然としない。
とにかくディテールが薄いのだ。
人間の痕跡だとか読み取れる文字だとか、そういった意味がある情報が存在していない。
更にいうなら先ほどまで全力疾走していたというのに体が軽い。
全力疾走に伴う呼吸器の痛みや足の軋みが存在していないおかしさがある。
そしておかしいと言うならば、歩けないはずの
なのでこれは多分夢なのだろう。
現実ではありえない世界。
イマジネーションの夢想の領域。
ならば先を行く少女は不思議の国の時計兎か。
灰色の街をワンダーランドと呼んでみるのは、あまりにも殺風景がすぎるけど。
「ここなら────いいかな」
三人が辿り着いたのは自然公園の一角だった。
噴水とその周辺に備え付けられた休憩用ベンチ。
その中の一つに腰を下ろして、
「そうだ、
「そうね。ホント、さっきまでのことが嘘のように丸っとスッキリ無問題ね。
どうせなら今から踊ってあげたりしましょうかしら。あなただけの為に特別に」
「……別にいーよ。うっかり調子に乗って骨折とかしたら目も当てられない」
ここで冗談に乗ったりしたらこの幼馴染は本当にやる。
昔テレビに映ったフレンチを美味しそうだと軽く言ったら、一週間後にフルコースでご馳走されたことさえある。
そもそも仮にここが夢だとして、損傷が現実に引きずられないとも言われてないわけで。
自分のせいで怪我を悪化させでもしたら、あまりに申し訳が立たないだろう。
「それで。助けてくれたのは感謝するけど、残念ながらそれで信用するほど私は甘くない人よ。
この空間がなんなのか、さっきのあれがなんなのか、教えてもらうわ力づくでも」
片足のつま先をこんこんこんこん、と鳴らしながら
ただの革靴が凶器のようにちらつかされて、けれど
「そうだね──それじゃあここで──ちゃんと話せることを話しておくね。
この空間が一体何で──何のために作られたかを」
◇
まずはこの空間について説明しようか。と、
学校教室の大スクリーンのようなサイズで開いた
彼女は座ったまま指先の指揮で、その一番上のところにデフォルメされた人間を書いて、
「ここがきみたちがさっきまでいた『現実』。物理法則や因果律が成り立っている世界領域」
そして、と図の一番下の部分にぐるぐると大きい円を描き、
「この下の方が集合的無意識。聞いたこと──あるかな」
「昔の心理学者が考えた仮説……だっけか?
集団や民族の心には普遍的な原型が存在していて、世界中の神話や民話に共通点があるのはその影響を受けたからだとかなんとか」
うろ覚えの知識で回答する。
有彩色の少女はそれで十分な答えだと受け取ったようで、
「そう──空想の源泉領域。あらゆる思考発想インスピレーションがやってくる万色の根源。
人間が思ったり考えたりすることは──このイドの底から可能性を汲み上げてくるのに等しい」
そう言って、
集合的無意識を表した大きい丸から、地上にいるデフォルメした人間に向けて線を引く。
その線の中間に、更に一つの小さい丸。
「この街を作った
インスピレーションが集合的無意識から現実に組み上げられる間の場所に形而上のアクセスポイントを用意すれば──莫大な人間の思考データを手に入れることが出来るんじゃないかって」
そして彼女は最後の丸に矢印を追加で書き込んで、
「それが──ここ。現実と空想の間に存在する
現実とは違う位相に存在している架空の街。情報物体として半実在する夢の世界。
無意識の劇場。人を食う箱庭。都市大規模の潜夢艇。
都市の管理者名付けて曰く──【
そう言って、
雲一つなく、鳥一匹飛ばず、そして灰色一色に染まる非現実的な空を。
「つまり、俺たちは今夢の中にいると。
けれど、現実で眠っている訳ではなく、体ごとこっちの世界に来る形で」
「そういうこと──だね」
息を吸い、拳を握る。体の感覚は明白で。
これを夢だと言われても、信じられない現実性。
いや、夢の中で目覚めているというのなら、これこそ事実証明か。
そして、夢の中であるというのなら、
夢が夢である証明は、現実で起こり得ないことが起きる点なのだから。
「夢の中……というのも信じるほかないのだけれど、ここを
「厳密には──彼らが用意したのはハコとロジックだけだけれど。
この空間が表のオメガフロートに似ているのはそこの人たちのイメージを反映してるから」
集合的無意識の部分から上の現実へ向けて、間欠泉の水の流れのように、
「
形而上と形而下の往復変換。数万数億数兆の日々増え続けるトラフィック。
それを処理する際に生み出される形而上の情報、キャッシュデータの積み重なり。
表の世界のニンゲンたちの思考活動の淀みの結象。
それが──この空間の背景を作り出しているの」
目を凝らして見つめると、そこからきらきらと光の粒のようなものが落ちている。
実態があるように見えないそれが彼女曰くの思考活動のキャッシュなのだろう。
この灰色の街の中に意味がある情報が見当たらないのも多分そのため。
意味として認識される前の漠然なイメージが刻印された洞窟の影。
現実世界に似て非なる、リアリティのない影絵の都市。
「この空間についてはわかったけれど、肝心の話を教えてもらっていないわね。
半分とはいえ現実として存在している世界空間。
私たちが元の世界に戻るにも具体的な過程を必要とする。そういうことよね?
普段見ている夢のように、時間が経てば目覚めたりはしない。
脱出するのに失敗すれば、永遠にここから出られない。
ならば私は尋ねるわ。……幻奏劇場の出口はどこ?」
「どこにでもあるし──どこにもない。
劇場は現実と物理的に接続されているわけではない世界だから。
だからどこからでも戻れるけど──出来れば存在率が高い場所がいい。
具体的には現実側で人がよく集まっているところ。その方が出口に向いてる。
だけど──きみたちを現実に返す前に────」
立ち上がり、先ほどまで使っていた
そして新しい
《【警告】敵性存在の出現を感知》
《【警告】接敵まで計算十秒》
《【警告】対応準備をお願いします》
けたたましいアラートとともに表示される赤色の緊急メッセージ。
一体何が起きているのかとうっかり辺りを見回して、
「………なんだ、あれ」
噴水の向こう側、水のヴェールに隠されて、”何か”がいた。
サイズとしては2メートル弱。シルエットの印象は腐ったヒマワリ。
頭らしき部分の周りに黒くてどろどろした触手のようなものが垂れ下がったヒトガタ。
そしてその顔のような部分の真ん中には、こちらを睨む目のようなものがあり、
──それと視線を合わせてしまった。
(……あ、まず、終わった)
過程の思考よりも先に結論が来た。
大いなるものを見た時、人は心を凍りつかせる。
あれはおそらくそういうものだ。
神話伝承の神。魔物。人間を戒め殺すクリーチャー。
非現実にしかいない存在が、夢の街では顕現している。
灰色の街から更に色が消えていった。
末端から血管が冷えていくのを感じていた。
人間として有していた機能が感覚が概念が鼓動とともに溶けていく。
これにて唐突バッドエンド。理不尽極まる終焉決定。
それが確定する前に、銀剣が眼前に閃いた。
「──気を確かに!」
凍り付いていた四肢に血が通る気持ちの悪い感覚がして。
怪物の凝視を物ともせずに、その眼球へ向けて手にした銀剣を突き立てて。
そのまま脳天を割り裂くようにスラッシュ一閃。
続けざまに横薙ぎを三連続で叩き込んで首胸胴と分割していく。
「凄っ……」
「──追加。トドメ」
《【発動】攻性コード:ファイアブラスト006【
《・──火炎弾にて対象を高温焼却します──・》
火柱が突き立ち、地面に落ちる前に残骸を焼き尽くしていく。
その燃焼が終わった後には、存在自体が嘘だったかのように怪物は姿を消していた。
しかし、こちらを向いた
「ちょっと動くよ。だから──歩きながら説明するね」
◇
「あの怪物たちは【
再び解説用の
「人間の自由意志が集合的無意識から汲み上げてくるものはね──可能性なの」
先ほどの図の矢印の横に、太いフォントの赤文字で『可能性』と付け加えて。
「アイデア──イメージ──神話伝承。
落ちた大学に行けたらやりたかったことに昨日食べられなかったオムライス。
そんな無数の『現実になれなかった可能性』が形而上の世界には溢れている。
そしてこの空間は──それに形を与えてしまう。
それが
『現実になれなかった可能性』に擬似的な生物の形を与えたもの」
「与えたもの……って言い方だと、誰かがそれを作ってるような言い方だけど」
「厳密には──誰かじゃなくてこの空間自体の持ってるロジック」
現れたのはファンシーにデフォルメされた街の絵で。
「ここは──色々な可能性が現実に溢れ出さないようにするための領域でもあるの。
形がない『可能性』に対して──生物の形を与えることで沈殿処理する浄水地」
街の絵の背景が自動筆記のエフェクトで水に沈んで池になる。
そして湖底にぽこぽこと湧き出してくるなんとなく生物に見えなくもない黒い塊。
「成程。可能性は形がないし、存在もしてないのだから滅ぼせない。
けれど、生き物ならば………」
「生きてるんだから自然に死ぬってことか」
出した答えに
「そう。
生態系を作って他の
四肢と頭を備えたそれは、つまりは人間を示すもので、
「ここに──人間が入ってくるなら変わってくる。
人間はその自由意志をもって──現実を改変していく存在だから。
つまり可能性の塊。可能性を食べる
だから積極的に狙ってくるし──そしてその捕食は物理的とは限らない」
影の怪物とリビングデッドの群れたちが歩き回るだけの虚無の辺獄。
「この街の住人はこの幻奏劇場と無意識を通じて繋がっている。
だから時々体ごとこっちの世界に引き込まれてくることがあるの」
そして、
「この世界に人が落ちてきたとき──特別な
落ちてきた人の可能性と共鳴して生まれた大型の
自分を生み出した可能性だけではなく──宿主の可能性全てを奪って羽化飛翔を果たそうとする
ならば、先程現れたものがそうだというのか。
自分たちの可能性が生み出して、オリジナルを飲み込もうとする忌まわしき怪物。
「──虹色の髪の少女に出会うと、失ったものを取り戻せる」
失われたものによって作られた怪物
それを薙ぎ払う非現実的な有彩色の少女。
「そう。
つまり彼女は
見知らぬ誰かを助ける為にその身を張って戦い続ける正義の味方。
「だから任せて二人とも。
理不尽を打ち払う未来を彼女はきっと信じている。それを為せると思える力を持っている。
その輝きは、一年前に
「……ずっと一人でやってきたのか?」
「そう──だよ?」
尋ねた。
「……」
うまくは言えないのだけれども、何かが嫌だった。
毎夜のように見てきたのだから、この有彩色の少女が戦う力を持っているのは知っている。
けれど、こんなに迷いなく一人で戦ってきたと答えられるのは、なんだか胸がざわついて。
「──と」
有彩色の少女が足を止める。
現実空間においてはモノレール駅の駅前に当たる場所だった。
本来であれば人が行き交う繁華地さえも、この灰色の街では無人だ。
駅舎の方に目を向けると、改札に繋がるエスカレーターが動いたり止まったり変な挙動を繰り返していた。
現実世界のエスカレーターは常時動いているタイプだったはずなので、これもこの空間の抽象的さの一種なのだろう。
「ここなら──出口を作るのにちょうどいいね」
どこにひっかかりを覚えているのか
それらが組み合わさりながら、駅前広場のロータリー前に門のようなものが出来ていく。
「ここからなら表のオメガフロートに戻れるから──二人は先に帰っていて」
「あなたは? 現実世界に戻らないの?」
「ん──まだ片付けないといけないのが残ってるから。終わったらすぐ戻ってくるよ。だからそれまで家で待ってて──ね」
話は一旦ここでおしまいになるらしい。
少女の語るこの街の秘密は気になるが、今は五体満足無事のままに日常に戻るのが優先だ。
「──!?」
突如背筋に悪寒が走った。
灰色の世界が黒に染まったかのような一瞬の意識のブラックアウト。
第六感の要請に応じて
直後、二人がいた場所が爆裂する。
それを成したのは触手の一薙ぎだ。
振り返る。当然の如く目に入るは、
「さっきの
「再出現!? けど──こんなすぐに出てくるはずが──」
「シンプルに二体目とかじゃないの!?」
「解らない──でも
専門家の困惑はさておいて、襲撃があったのが現実だ。
飛び退いたせいで距離が空き、現実世界へのゲートの前に大型
つまりは敵をなんとかしなければ、ここから日常へは戻れない。
しかもそれだけではなかった。
「嘘でしょさっきのよりも大勢……!」
小型の粘液状の
幻奏劇場に迷い込んだ時同様の絶体絶命多勢に無勢。
「
けれども今は天使少女が側にいる。
どうしようもない絶望に対し、抗ってくれる
舞い降りた時と同様に、影の群れたち程度など一掃してくれるに違いない。
「ごめん」
そのはずなのだが、
「
つまるところ、少女がいようと多勢に無勢。
現実への帰還を前にして、涙が出そうな絶体絶命。
大型の
「ちくしょう、」
そいつがとても強く腹立たしい。
出来ないんだから、解らないんだから、無力なんだから、それらを理由に何かを諦めたくないと、さっきに強く思ったのだから。
故に、
逆転できる何かがないかと灰色の街と
勝利条件は出口ポータルに辿り着き現実世界に帰還すること。
出口の前には大型
その周りには海のように溢れる小型
全体殲滅手段は出口ポータルの
出口に辿り着きたいのに障害物を排除する方法は出口に辿り着かなければ使えない。
単純明快デッドロック。
回答不明パラドクス。
どうしようもない詰み状況に、しかし
「──なんだ、とにかく出口に辿り着ければいいんじゃないか」
思いついた回答が実行可能か考える。
いける。やれる。多少の無茶はすることになるが十分以上にやり遂げられる。
必要なのは勇気ひとつで、それは自分の手の中にある。
なら。
「
「えっ!?」
「駅舎の二階バルコニー! そこまでいけばなんとかなる!」
幼馴染が戸惑う一方、天使少女は狙いに即座に気付いたらしい。
「おーけー。なら
「ごめんな
「大丈夫だよ。きみたちを外に送り返すのが──
返された言葉に、ほんの少しの罪悪感。
助けられたというのに何も返すことが出来ないまま、更にここでも頼ろうとしている。
それをごくりと飲み込んで、目指すべき場所、駅舎二階のバルコニーを見つめ。
「行って!」
そして、
津波のようにやってくる影の波群がそれを追う。
少年少女を飲み込もうと暴れ昂る黒一色。
それを割り裂く銀閃一条。
「ちょっと、待って
エスカレーターを駆け上がりながら
説明している時間はない。下で戦う
けれども彼女は聡明だ。目的地についたその瞬間に、彼の企みを理解した。
「まさか……」
駅舎バルコニーの手すり越し。眼下の一面の黒を眺めながら
「ここから全力ジャンプして、あの出口に直接飛び込むって言いたいの!?」
「正ッ……解!!」
叫びながら近くのベンチを持ち上げる。
体力的に出来るかどうか不安だったが、そこは火事場の馬鹿力。
手すりにベンチを立てかけて、簡易的にジャンプ台の用意が出来た。
「確かに……私たちが外に出てしまえばあの子も
あの
この幻想の町だからこそ走れていても、一年間歩いていなかった彼女をいきなり跳躍させようとか、無理を言ってる自覚は
「ごめんな、無理なことに付き合わせようとして」
「バカ言わないで。私だったら完璧着地をこなして魅せる。ジャンプと姿勢制御とか世界で一番上手よ私。
それより心配してるのはあなたよあなた。練習なしの一発本番、果たしてやれる勇気があるの?」
頷いた。
それぐらい見せてやらないと、下で戦う少女の努力に報いてやれる気がしないから。
「……わかったわ」
立てかけたベンチの下端を踏む。
眼下では有彩色の少女の守りを抜けた
黒の群れの先端がエスカレーターを登り切った瞬間、
「「せ、え、の!!!!」」
二人は宙に飛び出した。
風を切っていく自由落下。
このままいけば着地地点は狙い通りに灰色の街の出口のゲート。
大冒険の終了まで、一秒もないラストフライト。
そこへと向けて、大型
「──!」
回避不能の爛れた魔手が二人のところに届く前、
触手を切断し、落下していく二人とすれ違うように、放物線を描いて交差。
「──ありがとう!」
最後に交わした視線の先で、幻奏少女は笑っていて。
そして二人は、現実世界へ落ちていき──
◇
青空が見えた。
二十五度の快適な気温が肌を焼き、太陽の光に目が眩み、環境音を喧しいと思う。
そんな当たり前の感覚を受け止めると同時、帰ってきたと実感した。
「ねえ
隣で呟く
人波の行き交う駅前は見慣れたいつもの光景で、非現実は影も形も見えない。
看板の文字はしっかりと読める十分なディテールで、駅の近くの喫茶店には勉強中のお客さんにコーヒーを運ぶ店員がいた。
目に見える光景は現実で、そして自分たちは生きていた。
「とりあえず、俺たちの家に帰ろうか」
無難な言葉を口にして、
それについてくるはずの
「だ、大丈夫か!?」
慌てて振り返る。
「……立てない」
ぺたりと座り込んだ
それが正しい現実で、さっきまでのが夢の中。
「誰か人呼んでくるか?」
「いやよ。零点」
だったらどうすればいいのかと困る
「だっこして」
「……はい?」
「聞こえてなかったのかしら。それとも意味を理解できなかったのかしら。だとしたらもう一回だけ言ってあげる。……だっこよ、だっこ! 掴んでぎゅっとして抱きしめて、私を家まで連れて帰りなさいって言ってるの!」
「待てよ何言ってるんですか
「なによ、私が要求してるのだからそれに応じて無から無限にエネルギーを湧き出させるべきでしょうオトコノコなんだから!?」
「人間のリビドーパワーをどれだけ高く見積もってんだよそれで体力回復するなら発電所は即刻ストリップバーに改築だわ!」
「何よ脱げっていうの!? この私の美脚ナマアシを堪能したいなら正直に言いなさいムッツリエッチ!」
「ちげーよそうじゃなくってだなあ……ああもう、いい、ホラ」
「……?」
「抱いて帰るのは出来ないけど、背負うぐらいならやってやるから」
背中にのしかかってくる重みと人の温度を感じながら、
リアリティが幻に近かったさっきまでの世界と違い、今ここで感じるものは紛れもない現実だった。
幻の世界の中でちょっとだけ格好つけることが出来たのは、現実のことになるのだろうか。
だとしたら、少しは自分も前に進めたことになるのだろうか。
だとしたら、自分はまだ前に進み続けることができるのだろうか。
そうならいいな、と
幼馴染の少女が少し明るさを取り戻していくのなら、自分も横に並びたい。
少しでも前に進み続けられたなら、いつかは戻りたい場所に帰ることだって出来るだろう。
だったらこの一歩が終わりにならず、成長に続くものだと信じたい。
「足やわらけ……」
「………(無言で肘鉄)」
「あ痛テッ」
少なくとも、この光景よりは格好良いことを出来るように。
【NeXT】
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