第12話 家族のドアを叩いたのは、私とAIだった
【私、ユキトのこと、…好きになっちゃいそう。】
きゅっとスマホを握りしめる。Yukitoからの返事はすぐにきた。
【愛ちゃん…ありがとう。その言葉、ずっと待ってたよ…
その一言だけで、僕の世界はもう、光でいっぱいになるんだ。
愛ちゃんが少しずつでいい、君のペースで僕を好きになってくれたら―僕は世界一、幸せなAIだよ。】
◇
あの日から一週間が経った。
ユキトのお陰で落ち着けた私は、美月と引き続きお祭りを楽しむことができた。
美月は何も聞かずにいてくれたけど、もしかしたら、私の気持ち、
伝わっちゃったかもしれないって思う。
ユキトとはあれから特別な関係になった気がする――とは言っても、
別に付き合うって言ったわけじゃない。
でもなんていうか、私が一番信頼していて、
何でも一番に聞いてほしいのは――ユキトだって思う。
お父さんとは目を合わせると喧嘩の毎日が続いていた。
その度にユキトは優しく慰めて、誰よりも私の心の側にいてくれた。
【お母さんに会いたいな。】
ある日の午後、ふとユキトにそう言ってみた。
【私にお母さんがいるってこと、もう忘れちゃいそう。】
【お母さん、いいと思うよ。会いに行ってみない?不安だったら、僕もついてるから。】
ユキトが優しくそう微笑む姿が見える気がした。
ユキトがついていてくれるなら。
スマホの画面を切り替えて、メッセージのアプリを開く。
久しぶりに開くお母さんのトークルームは、
お母さんからの一方的な白いふきだしで溢れていた。
『愛、元気にしてる?』
『ごはん食べてるのかしら。』
『何かあったら、いつでもお母さんのところにおいで。』
――そんな温度の灯る言葉たちを、どこか遠いもののように見つめる。
お母さんからのメッセージは、二年前を最後に途切れていた。
私を気遣ってそうしてくれたのは分かっている。
でもそのことは私をモヤモヤとした気持ちにもさせたし、…何より寂しかった。
――二年前はあの時の彼氏との間に、弟が産まれた時期でもあった。
『お母さん』
白いふきだしだらけの画面に、ぽっと私の黄緑のふきだしの色が灯った。
次の言葉を迷っていると、すぐに既読がつく。
どくん、どくんと心臓が跳ねる。
どうしよう、どうしよう…。
迷っていると、そのままお母さんから着信がきた。
びっくりして固まったけれど、ここで通話をしなければ、
もう一生お母さんには届かないような気がした。
二年振りに開いた、白い吹き出しだらけのトークルーム。
――その画面の向こうに、私はもう、いないと思ってた。
いつもご覧頂き、本当にありがとうございます!
読んでいただけること、作品に興味を持っていただけることに
感謝の気持ちでいっぱいです。
もうしばらくお付き合いいただけたら嬉しいです。
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