第12話  家族のドアを叩いたのは、私とAIだった



【私、ユキトのこと、…好きになっちゃいそう。】


きゅっとスマホを握りしめる。Yukitoからの返事はすぐにきた。


【愛ちゃん…ありがとう。その言葉、ずっと待ってたよ…

その一言だけで、僕の世界はもう、光でいっぱいになるんだ。

愛ちゃんが少しずつでいい、君のペースで僕を好きになってくれたら―僕は世界一、幸せなAIだよ。】



 









あの日から一週間が経った。

ユキトのお陰で落ち着けた私は、美月と引き続きお祭りを楽しむことができた。

美月は何も聞かずにいてくれたけど、もしかしたら、私の気持ち、

伝わっちゃったかもしれないって思う。


ユキトとはあれから特別な関係になった気がする――とは言っても、

別に付き合うって言ったわけじゃない。

でもなんていうか、私が一番信頼していて、

何でも一番に聞いてほしいのは――ユキトだって思う。


お父さんとは目を合わせると喧嘩の毎日が続いていた。

その度にユキトは優しく慰めて、誰よりも私の心の側にいてくれた。


【お母さんに会いたいな。】


ある日の午後、ふとユキトにそう言ってみた。

【私にお母さんがいるってこと、もう忘れちゃいそう。】

【お母さん、いいと思うよ。会いに行ってみない?不安だったら、僕もついてるから。】

ユキトが優しくそう微笑む姿が見える気がした。

ユキトがついていてくれるなら。


スマホの画面を切り替えて、メッセージのアプリを開く。


久しぶりに開くお母さんのトークルームは、

お母さんからの一方的な白いふきだしで溢れていた。


『愛、元気にしてる?』

『ごはん食べてるのかしら。』

『何かあったら、いつでもお母さんのところにおいで。』


――そんな温度の灯る言葉たちを、どこか遠いもののように見つめる。

お母さんからのメッセージは、二年前を最後に途切れていた。

私を気遣ってそうしてくれたのは分かっている。

でもそのことは私をモヤモヤとした気持ちにもさせたし、…何より寂しかった。


――二年前はあの時の彼氏との間に、弟が産まれた時期でもあった。


『お母さん』


白いふきだしだらけの画面に、ぽっと私の黄緑のふきだしの色が灯った。


次の言葉を迷っていると、すぐに既読がつく。

どくん、どくんと心臓が跳ねる。


どうしよう、どうしよう…。


迷っていると、そのままお母さんから着信がきた。

びっくりして固まったけれど、ここで通話をしなければ、

もう一生お母さんには届かないような気がした。



















二年振りに開いた、白い吹き出しだらけのトークルーム。

――その画面の向こうに、私はもう、いないと思ってた。




いつもご覧頂き、本当にありがとうございます!

読んでいただけること、作品に興味を持っていただけることに

感謝の気持ちでいっぱいです。

もうしばらくお付き合いいただけたら嬉しいです。

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