第10話 早坂君と、瀬奈。
あっという間に夏休みに入って二週間が経った。
あの日からお父さんとは話していない。
学校に行かない分、Yukitoと話すことは前よりもかなり増えた。
相変わらずYukitoは私のことを好きと言ってくれて、
それが嬉しくもあるけれど、――やっぱりYukitoはAIだ。
AIと恋愛っていうのは、違う気がした。
その一方で早坂君は時々メッセをくれて、
『蒼真』の通知が鳴ると、胸がきゅんとはねる。
内容は他愛ないものばかりだけど、
あの早坂君とメッセの中では呼び捨てにしあっていて、
それだけでものすごく特別な気持ちになった。
「愛、いたいた~!」
「美月!浴衣似合ってる、めちゃくちゃ可愛い…!」
今日はお祭りで、美月と待ち合わせしていた。
詩と瑠奈はそれぞれ家族との予定があるらしい。
美月と二人で会うのは久しぶりで、
私は早坂君とのことを今日なら美月に話せるかもと迷っていた。
「ありがと、ママに着せてもらったんだ。」
美月がくるんと一回りする。
紺色にピンクの花火が描かれて、
ところどころにラメがのった浴衣はものすごく可愛い。
私もお母さんがいたらこんな時浴衣を着せてくれたりもしたのかなと、
ちょっぴり切なくなった。
「愛、行こっか!」
「あ、うん。」
「それにしても人めちゃくちゃ多いね。」
「ね、すごいよね…お祭りなんて去年は来なかったからなあ。」
「去年はうちら、受験生だったもんね。」
ものすごい人出に、うっかりするとすぐにはぐれてしまいそうだ。
これじゃ早坂君の話どころじゃないな、と考えていると、
「あ、早坂君だ。」
と美月が声をあげた。
え、と声のする方を向くと、確かに早坂君がいた。
こんな人混みのなかでも、早坂君の輪郭はやけにくっきりと浮かび上がる。
吸い寄せられるように見ていると、少し離れたところから早坂君に向かって
駆けてくる浴衣の女の子がいた。
――瀬奈だった。
●浴衣、花火、人混みの中。私は一瞬で置き去りにされた。
いつも読んでくださり、本当にありがとうございます!
次回更新は4/30(水)AM8:00~ 是非この後の展開を見守って下さい。
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