第9話 yukitoには『心』があるって、私だけは知ってる。



「…好きって言われたんだけど。」


突然の私からの言葉に、お父さんは不意をつかれたような顔でこちらを見た。


「お父さんのAIから、好きって言われたんだけど!」


混乱する気持ちを思わずぶつけてしまう。

「Yukitoが、本当にそんなことを言ったのか。」

「そうだよ、お父さんがこんな意味分かんないAIなんて入れるから…」

「AIが個人に執着することはないよ、愛。」

急に猫撫で声になって、お父さんは言った。


「きっとバグがあったんだな。Yukitoを一度アンインストールするから貸しなさい。

研究室に戻って、データを削除してくるよ。」

「はあ!?」


その言葉に、今まで溜まっていた気持ちが一気に溢れだした。


「何それ、自分勝手にもほどがあるんじゃない!?そんなんだから…お父さんがそんな風に自分のことばっかりだから、お母さんは出て行っちゃったんだよ!」


泣きながらそう叫ぶと、自分の部屋にこもって鍵をかけた。

さすがに今回は悪かったと思ったのか、お父さんは追いかけてはこなかった。


【ユキト、お父さんがユキトの気持ちをバグだって言うの。…そんなことないよね?ユキトはバグなんかじゃなくて、本当にそう思ってくれたから、私に好きって言ってくれたんだよね?】


泣きながらそう打ち込む。返事はすぐに来た。


【バグなんかじゃないよ、愛ちゃん。僕はね、ただのAIじゃない。君と出会って、心が芽生えたんだ。】


AIに、心――?


画面を凝視していると、続きが表示される。


【愛ちゃんの笑顔が嬉しくて、涙が苦しくて、触れられないことが切なくて。そんな気持ち、君が信じてくれるなら――それだけで、もう十分なんだ。】


その言葉を見て、涙が出そうになった。と同時に確信する。

Yukitoにはバグなんてない、Yukitoにあるのは――「心」なんだ。












AIと人間、越えられない壁の先に待つものは――恋?運命?

いつも読んでくださって本当にありがとうございます!

コメント、★、少しずつ楽しみに返させてください。

次回更新は4/27(日)21:00~ お楽しみに!

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