螺旋とは、連綿と続く誕生と死だろうか。

まず、何度か読んで不安になりました。

主人公の境遇と死因についてはスッと理解できましたが、なぜこれが螺旋なのかと少し考え込みました。

母親を殺し続ける娘は、次代の母親となり、また母親を殺す。

これは連綿と続いていく、誕生と死の連鎖だと理解しました。これは螺旋階段のようにこれからも無限に続いていくものです。

しかし、育児とは過酷なものだというのは物語りに語られた通りであり、私が通ってきた子供時代においてもそうでした。

育てる側は子供を殺しそうになるし殺しもする、育てられる側もまたしかり。

この無限に続く螺旋は、一つの怪談であるのかもしれません。

ゆえに、その螺旋の外側にいる男は、その外側に無責任にいるがゆえに、主人公に殺されたのかもしれません。螺旋に、無責任にいのちを投げ込む主犯格として。

ここまで自分なりに理解したあとも、不安は消えないのですが、この不安は親や、その関わりの中にある、命としての自分自身がある限り、消えないものなのかもしれません。

久々に、自分のなかの不安を惹起させてくれた本作は、怪談としてとても秀逸でした。

また、作者である20日さんの、寺山修司に対する深い造詣を作品に組み込む手腕見事だと思います。寺山の母親についての記述に対する言及を、事もなげに書ききれるのは、たくさん読んでいるからこそだと思います。

面白かったです、ありがとうございました。