芋洗い
乗り越えた。
いやー、話せば分かるもんだ。
人間って。
兄は私以上に恥ずかしがり屋で、喋るのが苦手なんです。
そんな嘘で、まさか、乗り越えられるとは。
そんなに、私は恥ずかしがり屋で、喋るのが苦手だと思われていたのか?
やはり人間。日頃の行いがものを言うのだな。
「ね、ごわす」
「そうですね」
「しゃっ、喋った!」
通学路、帰り道。
ごわすが喋れるようになった。
ってーってってれー。
「ねえ、ごわす」
「なんでしょうあかね様」
「その、実は、おんぶされてるの、結構恥ずかしいんだけど」
「いけませんあかね様。お怪我をされているのですから」
「いや、さすがに、ね。人の目が、ね」
ごわすは、腰布(薬丸先生の白衣を三枚繋げたもの)一つしているだけの、ほぼターザンの格好をしていた。
「あかね様の見た目は、人の目を惹きますからね」
「お前だよ。どう考えても。背中越しに視線が突き刺さっているのが分かるよ」
「なんと。人の身になり、前しか見ることができなくなったとはいえ、このごわす。一生の不覚。我が身に刺さる視線をあかね様がおかばいなされていたとは、つゆ知らず。では、これでは、どうでしょうか」
ごわすの背中にいた私は、軽く持ち上げられ、厚い胸板の前に持ってこられ、赤子のように抱き抱えられる。
オヒメサマダッコダ。
思わず、心の声が裏返ってしまった。
「いかがでしょう、あかね様」
「うううん。まあ、悪くないんじゃないかな」
家に帰った私は、とりあえず体の土と砂を落としたいと思った。
すでにお風呂は予約してあり、湯が張っていた。
ごわすと一緒に入る。というなんとも破廉恥な計画が一瞬頭によぎってしまったが、そこは自重した。
ゴリラゴリラゴリラクソダサ紫ジャージを脱いだとき、ああ、洗濯をしなければと思った。
薬丸先生の白衣もだ。
一旦、お風呂場から私の部屋に移動する。
ごわすには、背中を向けさせ、こっちを絶対に見ないように、振り返らないように言い聞かせる。
ごわすから、腰布を外す。
やばいだろ。
この状況を母にでも、見つかってしまえば、なんてことを考えた。
「とっ、とりあえず、そこの押入れの中に隠れていて。いい? 私が帰ってくるまで、絶対に出ちゃだめだからね」
そうごわすによくよく言い聞かせて、ゴリダサムラジャーと、白衣腰布を洗濯機に入れ、私はお風呂に入り、その後、母が家に帰り。
お話は一番初めに回帰る。
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