第54話


菜々美は、縫い針と糸を手に、信じられないスピードで作業を進めていた。破れたドレスの生地を丁寧に縫い合わせながら、女性の体型に合わせて、大胆かつ繊細にデザインを修正していく。その手つきは、まるで魔法使いのようだった。


「高橋さん、そこのレースとビーズを!」


菜々美の指示に、高橋香織は、瞬時に反応した。必要な材料を的確に選び、菜々美に手渡す。そのアシストぶりは、まさに阿吽の呼吸だった。


わずか数分後、菜々美は、見事にドレスを修復し、さらに、その女性にジャストフィットするように、デザインを変化させた。


「はい、どうぞ。もう一度、着てみてください。」


菜々美は、女性に微笑みかけた。


女性は、恐る恐る、ドレスに袖を通した。すると、先程まで、パツパツだったはずのドレスが、まるで、自分のために作られたかのように、完璧にフィットしたのだ。


「え…?うそ…?まるで、魔法みたい!」


女性は、鏡に映る自分の姿を見て、目を丸くした。


「どうですか?気に入りましたか?」菜々美は、尋ねた。


女性は、感動のあまり、涙を流しながら、頷いた。「はい!本当に、ありがとうございます!こんなに素敵なドレスを着ることができて、夢みたいです!」


しかし、菜々美の試練は、これで終わりではなかった。


その後も、In.heavenのドレスを着ることを夢見て、体型を全く考慮せずに予約してきた女性たちが、次々と現れたのだ。そして、その度に、ドレスが破れるというアクシデントが発生した。


その結果、試着室は、まるで、F1のピット作業のような、慌ただしい状況となった。


菜々美は、次々と破れるドレスを、瞬く間に修復し、さらに、その女性に似合うように、デザインを変化させていく。その神業的な技術に、スタッフたちは、ただただ、感嘆するばかりだった。


しまいには、会長である、こずえシノハラまで、駆り出される事態となった。


「菜々美!ここのビーズ、もっと豪華にした方が良くないかしら?」


こずえは、菜々美に、デザインのアイデアを提案したり、縫い物の手伝いをしたりと、大忙しだった。


In.heavenの試着室は、連日、大盛況となり、菜々美とこずえ、そして、スタッフたちは、その対応に追われながらも、充実した日々を送っていた。


そして、In.heavenのウェディングドレスは、その美しさ

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