第52話
ウェディングドレス発表イベントは大成功を収め、In.heavenの名は瞬く間にファッション業界に広まった。特に、菜々美とこずえが共同でデザインしたウェディングドレスは「愛と才能の結晶」と称され、花嫁たちの間で羨望の的となっていた。時価2億円とも言われるそのドレスは、まさに芸術品と呼ぶにふさわしい存在感を放っていた。
しかし、その人気とは裏腹に、現場では小さな問題も発生していた。In.heavenのウェディングドレスは、その繊細なデザインと美しいシルエットを最大限に引き出すため、ある程度体型を選ぶ傾向があったのだ。
In.heavenの広報担当となった佐藤ひとみと田中直美は、日々寄せられるウェディングドレスの試着予約に嬉しい悲鳴をあげていた。しかし、予約者の情報を確認していくうちに、二人はあることに気づいた。
「ねえ、ちょっと見てよ、この予約リスト。」佐藤ひとみが、パソコンの画面を田中直美に示した。
「どうしたの?また何かトラブル?」田中直美は、少しうんざりした表情で尋ねた。
「トラブルってわけじゃないんだけど…、今回の予約者、明らかに着れないような体型の女性が、多数いるのよ(笑)。」佐藤ひとみは、リストを指差しながら、笑いをこらえて言った。
田中直美は、画面を覗き込み、目を丸くした。「えっ、マジ?ちょっと、ひどくない?In.heavenのドレスって、結構スリムなデザインが多いじゃん。無理して着ようとしても、絶対似合わないって。」
「そうなんだよね。しかも、今回のドレス、時価2億円とも言われてる超高級品だし。もし、破れちゃったりしたら、大変なことになるわ。」佐藤ひとみは、心配そうな表情を浮かべた。
「でも、予約は受けちゃったし、今更キャンセルするわけにもいかないよね…。どうしよう?」田中直美は、頭を抱えた。
「とりあえず、試着の際に、正直に、ドレスのサイズが合わないことを伝えるしかないわね。無理に着るよりも、他のドレスを選んだ方が、絶対に綺麗に見えるって。」佐藤ひとみは、提案した。
「そうだね。でも、言い方を間違えると、相手を傷つけてしまうかもしれないから、慎重に伝えなきゃ。」田中直美は、頷いた。
そして、試着当日。佐藤ひとみと田中直美は、予約していた女性たちを、笑顔で迎え入れた。
しかし、実際にドレスを試着してもらうと、やはり、サイズが合わない女性が続出した。無理やりドレスを着ようとした結果、ファスナーが閉まらなかったり、生地が突っ張ってしまったり、様々なトラブルが発生した。
佐藤ひとみと田中直美は、必死に、その場を取り繕おうとした
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