第45話


高井まどかと高橋香織が、再びグラスを掲げ、乾杯しようとしたその時だった。


ふと、高井まどかが、バーの中を見渡すと、信じられない光景が目に飛び込んできた。


店の奥のソファー席に、見慣れた女性が座っている。


それは、紛れもなく、アトリエシノハラの社長、片岡菜々美だった!


菜々美は、にこやかに微笑みながら、高井まどかに手を振っている。


高井まどかは、驚きのあまり、グラスを落としそうになった。


「社長!!」


高井まどかは、思わず叫んだ。


隣で事態を把握した高橋香織は、爆笑し始めた。


「あはははは!やっぱり、来てた(笑)さすが、社長!行動が読めない!」


高井まどかは、顔面蒼白になった。


「社長!なぜここに!?もしかして、ずっと尾行してたんですか!?」


菜々美は、立ち上がり、二人に近づいてきた。


「あらあら、そんな言い方しなくてもいいじゃない。ちょっと、心配で見に来ただけよ(笑)」


菜々美は、涼しい顔で言った。


高井まどかは、抗議した。


「心配って……GPSで追跡して、勝手にカードを使ったことを叱りに来たんじゃないですか!」


菜々美は、肩をすくめた。


「まあ、それも、ちょっとは、あるけど(笑)でも、一番の目的は、あなたたちが、ちゃんと仲良くしているか、確認することだったのよ」


高橋香織は、笑いながら言った。


「ご心配ありがとうございます、社長。高井さんとは、すっかり仲良くなりましたよ」


菜々美は、満足そうに頷いた。


「それはよかったわ。じゃあ、私も、一緒に飲もうかしら」


高井まどかは、慌てて言った。


「だ、ダメです!社長は、明日、朝から会議があるじゃないですか!早く帰って、休んでください!」


菜々美は、拗ねたように言った。


「えー、つまんない。たまには、部下と一緒にお酒を飲みたいのに」


高橋香織は、菜々美に、耳打ちした。


「社長、ここは、高井さんに任せて、私たち二人で、別の店に行きませんか?(笑)」


菜々美は、ニヤリと笑った。


「あら、いいわね。そうしましょうか(笑)」


高井まどかは、絶望的な表情で言った。


「ちょ、ちょっと待ってください!お二人とも、どこへ行くんですか!?」


菜々美は、高井まどかの肩を叩き、言った。


「高井さん、あとは任せたわ。お勘定は、しっかり社長のカードでお願いね(笑)」


そう言うと、菜々美は、高橋香織の手を取り、バーを後にした。


高井まどかは、一人、バーに残され、ため息をついた。


「はあ……結局、こうなるのね……」


そして、高井まどかは、再びグラスを手に取り、呟いた。


「仕方ない。今夜は、とことん、飲んでやる!(笑)」

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